182「オメガインパクト狂想曲(1)」
『というわけで、条件を満たした探索者さんのご応募お待ちしております。ちなみに早い者順ですよ〜。以上、オメガの電波ジャックはこれにて終了となります。ご視聴ありがとうございました〜』
「なんだ〜こいつはぁぁ!!!!」
バキャァァァっ!!!!
そこは、日本国内でトップ10に入る有名探索者クラン『我王』の本部の会議室。そして、その会議室でクランのリーダーを務める我王 無多がオメガの電波ジャックを観てテレビを破壊したところ。
「ちょっと落ち着きなさいよ、我王! 何回テレビぶっ壊したら気が済むのよ!」
そんなキレてる我王に注意するのはNo.2でA級下位ランカーの『橋本 玲奈』。
「うるせー! これが落ち着いていられるかぁ!! オメガの野郎、調子乗りすぎだろ!」
「いやま、そうだけどぉ⋯⋯。でも実際、琉球ダンジョンで喋る魔物の幹部っぽい四つ柱のマグダラって奴と余裕でやり合ってた実力は本物だかんねー」
「うっせー! うっせー! うっせー! 俺だってあの程度の喋る魔物なんざ敵じゃねー!」
「いやいやいや⋯⋯。あれはさすがにあんたでも荷が重い相手だと思うよぉ〜。私が観る限りあのマグダラはS級ランカー相当だよ? そんな相手にA級上位ランカーのあんた一人じゃ無理でしょ? まぁ、私と二人ならいけるかもだけど」
「んなこたねー! お前なんざいなくても単騎で勝てるわ!」
「はいはい、わかった、わかった」
(子供か!)
「ちくしょう⋯⋯オメガの野郎ぶっ潰してやる! 10日後の試合エントリーするぞ、玲奈!」
「ええぇぇ⋯⋯わたしも〜(がっくし)」
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「オ、オメガさん⋯⋯こんなこと言って大丈夫なのぉぉ〜!?」
そんな悲鳴を上げるのは『戦乙女』のリーダー七瀬 亜由美。
「亜由美、あんた知ってた?」
「知るわけないでしょ! 知ってたらこんな悲鳴上げないわよ!」
彼女らは現在オメガと同様櫻子直属の配下として活動しているが今日の話は聞いていなかった。そんな七瀬の心配をよそに、
「さすがオメガ様! こんなこと言えるのはオメガ様だけです!」
「オメガ様⋯⋯しゅき」
などとオメガ様ガチつよ勢の軽い方の渚と、重い方の壬生 琴乃は感動していた。
そんな中、ある意味一番冷静である元気印ムードメーカーの有紀が、
「ところで⋯⋯どうするの? 参加するの?」
と、淡々と七瀬に質問をすると、
「い、いやいやいや、無理でしょ! そりゃ今はB級上位ランカーになったけどオメガさんに挑戦とかないないないない!」
七瀬は即答で否定する。しかし、
「でもさ〜、私なんだが嫌な予感がすんのよね〜」
「え? な、何が⋯⋯?」
「ほら、私たちって櫻子様の直属の探索者じゃない?」
「う、うん」
「だから私たちに出る・出ないを決める⋯⋯『権利』はないんじゃないかな〜って」
「ちょっ?! や、やめてよ! そんなフラグ立てないでよ! いくらなんでも今回のは完全にオメガさんの個人行動なんだから私たちは関係ないわよ。⋯⋯え? ないわよね?」
そんな七瀬が大層不安げな言葉を呟きながらおろおろしていると、
「あゆみん」
「琴乃⋯⋯?」
「覚えてる? 琉球ダンジョンに行く前、櫻子様が私たちに言ったこと⋯⋯」
「え? え、え〜と⋯⋯」
「うん、忘れているようだね(にっこり)。大丈夫。私が覚えているから教えてあげる」
そう言うと、琴乃が当時の櫻子の言葉を七瀬に伝えた。
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<琉球ダンジョンに行く直前——櫻子様よりいただいた大事なお言葉>
「お主らは琉球ダンジョンに行って強くなってきてもらう。そして、その指導はオメガに一任してある」
「お主らには悪いが、ワシの直属の探索者クランじゃから最低でも『4人全員A級ランカー』は必須じゃ。異論は認めん」
「尚、琉球ダンジョンでその目標が達成できなかった場合、その後も引き続きレベルアップは続行。できれば最短で『1人A級ランカー』になってもらう。な〜に、その時はオメガがきっと《《何とかしてくれる》》から、大船に乗った気持ちでおれ。かっかっか!」
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「思い⋯⋯だした!」
「そのネタ、好きなの?」
「思い出したわ、琴乃! で? それが何?」
「え? まだわからない? はぁぁぁぁぁ⋯⋯あゆみんってそういう天然なところあるよね。まー可愛い部分だからいいけど」
「な、何よ、それ⋯⋯!」
「まあまあまあ⋯⋯。で、当時仰られた櫻子様の言葉で一番大事な部分が最後の⋯⋯『1人A級ランカー』と『オメガがきっと何とかしてくれる』ってとこ」
「う、うん⋯⋯」
「ここまで言って気づかない?」
「え、え〜と、う〜ん⋯⋯⋯⋯ん?」
「気づいた?」
「あ⋯⋯あああああああああ!!!!」
「気づいたようね」
「さ、櫻子様のその言葉がそのままの真意であるなら私たちのレベルアップ計画はまだ終わっていないし、その後のレベルアップのオメガが何とかしてくれるっていうのが、電波ジャックで言ってたオメガへの挑戦を受けることだっていうの!」
「たぶん」
「ま、まっさかー⋯⋯! やめてよ、琴乃ぉ!」
そんな《《呑気な言葉》》を言っている時だった。
リリリリリリリリリリ⋯⋯。
「電話? あ、はい、もしもしぃ〜? え? 櫻子様!? どうしたんで⋯⋯⋯⋯え? オメガの電波ジャック? はい、観ました、観ました。え? 参加? いやいやいや、そんなの無理です⋯⋯⋯⋯え? 私たちに否定する権利は⋯⋯ない?」
この時点で、戦乙女4人の参加は確定となったとさ。
めでたし、めでた⋯⋯し?