181「世界を煽るストロングスタイルオメガ様(5)」
その後、タケル兄ぃはテレビを通して驚くべき話を語り始めた。話の内容はおおよそこんな感じだ。
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・最近踏破した琉球ダンジョンで喋る魔物が出現したことで、これまで『都市伝説扱い』されてきたものが確実に存在したということ
・『四つ柱のマグダラ』という喋る魔物の幹部ということは喋る魔物が組織されているということ
・『四つ柱』ということは、字面通りであればマグダラ以外に少なくともあと3人、マグダラと同程度あるいはそれ以上の喋る魔物が存在するということ
・近いうちに喋る魔物がダンジョンから地上へ侵略を始めるということ
・喋る魔物は一番弱い者でも『C級上位ランカー程度』の実力があるということ
・タケル兄ぃが最初に戦った喋る魔物バロンで、A級ランカーに近いレベルであるということ
・そして、『四つ柱のマグダラ』はS級ランカーレベルであるということ
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ここまでの内容だけでもかなりの情報量であり、且つ、およそ信じられない内容だったけど、話はそれだけでは終わらなかった。
『つまり、何が言いたいのかといいますと⋯⋯⋯⋯現在の探索者では《《弱すぎて》》喋る魔物の侵略を止めることは不可能だということです』
「「な⋯⋯っ!?」」
私と亜美がオメガの言葉に絶句する。
「こ、これ、喧嘩売ってるよねぇ?」
「う、うん」
いやマジでタケル兄ぃ、何でぇぇぇ!? 何でテレビを通してそんな喧嘩売るようなこと言うのよぉぉぉ!!!!
タケル兄ぃがオメガであることを知らない亜美でさえ同じことを思ったようだ。そりゃそうだ。しかも実際はうちらのお兄ちゃんがそれを言ったのだ。それを知る私からしたら亜美以上に混乱するのも当然だ。
オメガの言葉に動揺する私たち。しかし、テレビではオメガが淡々と話を続けている。
『正直こんなことを言うのは嫌ですが、しかし事実でありますし、喋る魔物の侵略も猶予が無いと思ってこうして話しています』
『しかし、俺の言葉に当然不服としている探索者はいるでしょう。いや、大半はそうだと思います。ですので、ぜひ自分と手合わせしていただきたいと思っていまして⋯⋯』
「えっ!?」
「て、手合わせ⋯⋯?」
え? 何? 何? どゆこと? 何言ってるの、タケル兄ぃぃぃぃっ!!!!
『ただ時間はないので1日⋯⋯ワンデイでできるだけ手合わせができたらと思っています。対戦方式は1VS1方式。先に<参った>と言わせるか、戦闘不能状態にさせれば勝ち⋯⋯みたいな感じです。あ、参加人数は100名までとさせていただきます』
「ワンデイ⋯⋯1日通して戦うってこと?」
「ひゃ、100人を相手に⋯⋯1人で?」
ちょ、ちょっと話が急展開すぎて草なんですがっ!?
ていうか、どうしてこうなった!
『と⋯⋯い・う・わ・け・で・!』
すると突然、タケル兄ぃの声がテンション高く跳ね上がる。
『えー⋯⋯要はですねぇ〜、生意気言ってる俺に挑戦してみませんかって話です(てへぺろ)』
「「は? はあああああああああっ?!」」
いや、てへぺろじゃないから! 使うところおかしいからぁぁぁ!?
『ということで、開催は10日後、場所は東京ドーム⋯⋯日本時間で午前7時から行います。奮ってご参加くださいませ!』
私たちはタケル兄ぃの訳のわからない展開にいまだ混乱しているが、タケル兄ぃはどんどん話を進めていく。これ絶対私たち以外もポカーンだよ!
『あ、ちなみに参加者100名の選考についてですが、条件をつけさせていただきます。条件は<現在B級ランカー以上の探索者であること>です。まーこれでもかなりの数になると思いますが、さらにここでもう一つ条件を付け加えます』
『というのもですねぇ、実は今回選ばれた100名の探索者にはもれなく《《あるアイテム》》をプレゼントしたいと思いまして〜』
『それは<覚醒ポーション>というもので、これを飲むとなんとビックリ! 身体能力が最低3倍は引き上がるという優れモノだ!』
『しかも、覚醒ポーションの種類によっては、なんとスキルが身につくかもしれないというサプライズも!』
『まー《《ちょこ〜っと》》副作用はあるけど、でも、そんなんで、ひよって飲まない探索者とかいる? いねえよなぁ!?』
いや、東◯リベ◯ジャーズっ!?
ていうか、何よ、その『覚醒ポーション』って! それ飲んだら身体能力が最低でも3倍、種類によっては『スキルが身につく』って⋯⋯そんな常識ハズレのアイテム聞いたことないしっ!
あと、『副作用』って何っ?! しかも《《ちょこ〜っと》》なんて言い方、怪しさしかないよ、タケル兄ぃ!!
『というわけで、<B級ランカー以上の探索者であること>と⋯⋯<副作用があるかもしれない覚醒ポーションを飲んでも構わない>という2つの条件を満たした探索者さんのご応募お待ちしております。ちなみに早い者順ですよ〜。以上、オメガの電波ジャックはこれにて終了となります。ご視聴ありがとうございました〜』
——放送後、世界は大混乱した