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180「世界を煽るストロングスタイルオメガ様(4)」



『つまり、何が言いたいのかといいますと⋯⋯⋯⋯現在の探索者(シーカー)では《《弱すぎて》》喋る魔物の侵略を止めることは不可能だということです』


(タケル兄ぃ、何言ってんのっ!?)



********************



 私の名前は結城由美。


 タケル兄ぃの妹で双子の妹の方だ。ややこしや。


 そんな私は学校から帰ると姉の亜美がランニングに行ったのを確認したあと、いつものようにタケル兄ぃの部屋に入っていき設置してある隠しカメ⋯⋯こほん、監視カメ⋯⋯こほん、『見守りカメラ』を回収。


 その後部屋に戻った私は本日の『タケル兄ぃVLOG』の動画編集に取り掛かる。ちなみに『タケル兄ぃVLOG』は《《私だけの》》動画コレクションなのでネットに上げるなどせず一人で堪能している。トーゼンだ。


 そんな本日の日課(ルーティンワーク)を終えると、


 ぐぅぅ〜。


 と、これまたいつもと同じタイミングでお腹の虫が鳴る。


「⋯⋯お腹減った」


 ということで、部屋から出て一階へ降りた私。うちではいつも19時が夕食と決まっていて、特別用事が無い限りできるだけ家族揃って夕食をとるというルールがある。そして、私はその夕食時間の5分前になると部屋から降りてくる、というのが家族の共通認識だ。


 そんな私は今日もまたいつものように下に降りると、


「由美〜、お皿出して〜」

「は〜い。あれ? 二人は?」

「亜美はまだお風呂で、タケルは今日はダンジョン探索で遅くなるって連絡があったわ。だから用意するお皿は3人分でいいわよ〜」

「は〜い」


 ふ〜ん、タケル兄ぃはダンジョン探索⋯⋯か。果たして《《どっちの》》ダンジョン探索なのだろう?


 私はタケル兄ぃが《《二つの顔》》を持っていることを知っている。一つは『結城タケル』という高校生探索者(シーカー)でデビューしたばかりのF級探索者(シーカー)の顔。そして、もう一つは『オメガ』という名の突如現れた『謎の凄腕探索者(シーカー)』という顔だ。


 え? なぜ、私が知っているのかって? そりゃもちろん『タケル兄ぃVLOG』で得た情報よ。トーゼンでしょ? 毎日タケル兄ぃ観ている私が知らないわけないじゃない?


 というわけで、私が一人「今日はどっちの顔でダンジョン探索しているのかな、ウフフ⋯⋯」と悦に浸っていると、


「お母さ〜ん、タケル兄ぃは〜?」

「タケルならまだ帰ってないわよ〜」

「⋯⋯ふ〜ん」


 姉の亜美がお風呂から上がってきた。そんな彼女は家でも学校でも明るく活発で皆を引っ張るリーダー的存在。しかも中学からずっとマラソンや筋トレを続けているので筋肉質でスラッとしたかっこいい体型をしている。


 私は身長153cmと、いわゆる『幼児体型』⋯⋯にも関わらず、なぜか胸だけ栄養が行き《《過ぎて》》しまったおかげで《《薄い本》》でいうところの『ロリ巨乳』のような体型になってしまった。


 本当は私もこんなアンバランスな体型じゃなく、亜美のようにスラッとした筋肉質の体型に憧れているので絶対に言葉には出さないが、内心亜美の体を見て「うらやましい」と思ってしまう。


 ただ、亜美的には『胸』が無いことにコンプレックスを感じているらしく、時折私の胸にジト目な視線を向けてくる。こちら的には「そんなジト目されても⋯⋯」と困ってしまうのだけれども。



********************



 3人分の皿を準備しそこに料理が添えられると、ちょうど19時を迎えたので皆で食卓を囲んで「いただきます」をして夕食が始まる。すると、いつものようにそのタイミングで亜美がテレビを点ける。ちなみに今日は亜美が好きなお笑い芸人さんがMCを務める番組の日だ。⋯⋯と思っていると、


「⋯⋯え?」


 亜美がテレビを点けたそこにはお笑い芸人ではなく、ダンジョン探索者(シーカー)の『オメガ』が⋯⋯つまり、うちらのお兄ちゃんが映っていたのだ。


「え? なにこれ?!」


 亜美がテレビを観ながらそう呟く。そりゃそうだ。だって、本来ならこの時間は亜美の好きなお笑い芸人さんの番組が始まるはずだったからだ。


 しかし、私的にはそういうことではなくオメガであるタケル兄ぃが映っていることに衝撃を受けた。


「⋯⋯電波⋯⋯ジャック」


 そう、これはつまり『電波ジャック』。最近だと『オメガ様ガチつよ勢』を名乗ったあの世界探索者(シーカー)ギルド協会イギリス総本部の『三賢人(スリーワイズマン)』のリーダーで、探索者(シーカー)世界ランキング第6位『ナンバー6』のエレーナ・ツヴァイコフが行ったのが有名だが、そんなメディアの常識を逸脱した電波ジャックを目の前のオメガ⋯⋯いやさうちのタケル兄ぃが絶賛行っていたのだ。


(え? タケル兄ぃ何してんのっ?!)


 今、家族の中でタケル兄ぃがオメガであることを知っているのは私だけ。そして、タケル兄ぃが家族にカミングアウトしていない現状で、私がそのことを亜美やお母さんに言うことはできない⋯⋯ていうか、私から言うのは違うかなと思っている。


 だからこそ、現在の状況にもの凄い不安を抱いていても、それを家族と共有できないもどかしさに私は一人わさわさしていた。


 そんな中、画面の向こう側でタケル兄ぃがオメガとして第一声を放つ。


『あ〜⋯⋯え〜とぉ⋯⋯どうも〜、オメガですぅ〜。突然ですが俺から大事な報告があるので10分ほど電波をジャックさせていただきました〜、よろしくです〜』


 いや初手、テンションゆるいな、おいっ!


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