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177「世界を煽るストロングスタイルオメガ様(1)」



——それは突然だった



『あ〜⋯⋯え〜とぉ⋯⋯どうも〜、オメガですぅ〜』



 いつもと変わらない日常に突如それが放り込まれると⋯⋯⋯⋯世界はオメガを中心に動き出した。



********************



 私の名前は結城亜美。


 タケル兄ぃの妹で双子の姉の方だ。ややこしや。


 そんな私は今日も今日とて学校から帰るとすぐにスポーツウェアに着替え、日課の『10kmランニング』へと出かける。


 それから1時間ほどして帰ってきた私は、次もこれまた日課の『1時間筋トレ』に精を出す。ちなみにこの2つの日課は中学に入ってすぐに始めたので現在4年目に突入している(えっへん!)。


 そんだけ自主トレしているのなら何か部活動をやっていると思うかもしれないが、しかし部活には入っていない。


 では、なんで「そんなガチめなトレーニングを日課としているのか」というと、実は私には夢があってそのために鍛えている。その夢とは『探索者(シーカー)』になること。


 しかし、体を鍛えているのは探索者(シーカー)としてすぐに活動できるためということと、もう一つの理由がある。それは⋯⋯『親の説得』。


 10代の女子がダンジョン探索をする探索者(シーカー)になるにはどうしても『親の許し』が必要となる。だから私はそんな母を説得するため『毎日体を鍛えている』ことをさりげなくアピールしている。⋯⋯それもこれも探索者(シーカー)になるため。


 それだけじゃない。こうして中学から体を鍛えていたおかげで中学のときから運動競技では負け知らずだ。そしてそれは高校に入った今も変わっていない。その結果通知表の『体育』は中学から今まですべて『オール5』だ(えっへん!)。


 中学からずっと10kmランニングや筋トレをやっていること、それと学校の成績。この二つがあればお母さんを説得できると私は確信している。


 それに、今は特に運動なんてしてこなかったタケル兄ぃまでもが探索者(シーカー)になっているのだ。ずっとこれまでトレーニングしてきた私ならきっとお母さんは探索者(シーカー)になることを許してくれるはず⋯⋯いや、絶対に許してくれる! だって私、それだけ頑張ってるもん!



********************



 筋トレを終えた私はこれまたいつものように汗を流すため風呂場へ直行。シャワーで一通り汗を流したあと湯船に浸かる私を、いつものちょうど良い湯加減が疲労した体にゆっくりと染み渡り心も体も癒していく。あまりの気持ち良さに思わず「ほぅ」と一息つく私。


 そんなリラックスな状況の中、


「はぁ〜⋯⋯あとはお母さんにいつ言うかだよねぇ〜」


 と、これまたある意味いつもの日課のごときセリフを今日も吐く私。


 というのも元々私は数少ない『高校生探索者(シーカー)』の一人に憧れていたし、そのつもりで中学からずっと体を鍛えていた。そう、時はすでに満ちているのだ。


 さらに、タケル兄ぃも『高校生探索者(シーカー)』になったのでもはや迷う理由などないはず⋯⋯なのだけれど「お母さんを説得できる自信がない」という不安でずっと動けないでいるのが現状だ。


「私ってどうしてこう肝心なところで毎回勇気を出せないんだろう⋯⋯。これじゃあ、お母さんに『探索者(シーカー)になりたい』なんて言ってもお母さんは許してくれないだろうな⋯⋯」


 あれだけ努力したにも関わらずそれでも日和ってしまう私。


 そんな意気地のない自分が⋯⋯⋯⋯嫌いだ。



********************



「お母さ〜ん、タケル兄ぃは〜?」


 お風呂から上がった私はいつものこの時間にはダイニングにいるタケル兄ぃがいないことに気づくと、お母さんにそのことを質問する。


「タケルならまだ帰ってないわよ〜」

「⋯⋯ふ〜ん」


 時間は18時50分——我が家では19時が夕飯時間なので、この時間には必ず全員がダイニングにいて食器を準備するのだが今日は妹の由美しかいなかった。


 ま〜今のタケル兄ぃは探索者(シーカー)だからおそらくダンジョン探索にでも行っているのだろう。。しかも最近では同級生とクランを結成していて⋯⋯クラン名はたしか『英雄旅団』。ちょっと厨二っぽいけど⋯⋯。


 でもそのクラン仲間にはあの高校生探索者(シーカー)でC級でも有名な『クールビューティー理恵様』がいる。うちの学校にいることは知っていたし、タケル兄ぃの同級生ってことくらいは知っていたけど、まさかそんな有名Dストリーマーがクラン仲間だなんて! いいなー! そしてズルい! 私にも紹介して欲しい!⋯⋯⋯⋯今度、タケル兄ぃに紹介してもらえるよう頼んでみよっと。


 あとなぜだか、あのタケル兄ぃをいじめていた佐川先輩もそのクラン仲間とも言っていた。たしかに最近は佐川先輩とタケル兄ぃは仲が良いみたいって友達も言っていたけど、でも私からしたらタケル兄ぃに酷いことをした張本人という印象しかない。だから今でも大っ嫌いだしこれからも変わることはないだろう。


 まー佐川先輩のことはどうでもいっか。



********************



 そろそろ19時になるが結局タケル兄ぃは帰ってきそうにないので「ご飯食べよう」となった。


 いつものようにご飯を食べる前にリモコンを手にした私。実は月曜の19時は私の好きなお笑い芸人さんの番組がやっていて皆も好きなのでいつもこの時間はその番組を観ているのだ。


 なので、いつものようにテレビのリモコンを手にした私はスイッチオンして、いつも観ている番組が映るだろうと思っていたのだが、今日はそうではなかった。



『あ〜⋯⋯え〜とぉ⋯⋯どうも〜、オメガですぅ〜。突然ですが俺から大事な報告があるので10分ほど電波をジャックさせていただきました〜、よろしくです〜』



 そこに映っていたのは、最近『琉球ダンジョン』を踏破したという、探索者(シーカー)業界でも一目置かれている⋯⋯あのオメガだった!


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