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173「ちゃんとわからせるよ」



「と、とにかく⋯⋯! タケル君には本気を出して戦ってほしい! 私を圧倒してほしい!」

「⋯⋯理恵たん」

「全力を出しても尚⋯⋯まだ届かない存在だと⋯⋯わからせてよ、タケル君!」


 理恵たんが俺に「全力を出して欲しい」と真剣な眼差しで訴える。


「わかった。ちゃんと⋯⋯《《わからせるよ》》」


 俺はそういうと一度「ふぅ〜」と大きく深呼吸する。そして、



 ドン⋯⋯! ビリビリビリビリビリビリビリビリ⋯⋯!!!!



「きゃっ!?」


 一瞬、そこそこ本気の魔力放出をすると室内がビリビリと震え、周囲のいろんな物を軽く吹き飛ばす。そんな中、理恵たんは飛ばされる事はなかったものの後方へと体が押し出されていた。


「こ、これは魔力なのっ?! なんて、すごい放出量! どれだけの魔力を保有しているっていうのよ!」


 理恵たんが魔力放出を見てそう呟くのが聞こえた。しかし、俺はこの世界の人たちのように体内魔力を使っているのではなく、周囲の魔素(マナ)を取り込んで魔力に変えている。


 しかもその取り込んだ魔力を保有する量もどれくらいが限界なのかということもまだわかっていない。なんせ、まだ『魔力が満タンになる』という経験をしたことがないからね。


「す、すごい⋯⋯」


 理恵たんが俺の魔力放出に呆然としている中、俺は理恵たんの《《リクエスト》》に応える為⋯⋯動いた。


「えっ! タ、タケル君が⋯⋯何人も⋯⋯!?」


 俺は前に見たあの喋る魔物の幹部、『()(はしら)のマグダラ』の技を見よう見真似で展開した。とはいえ、マグダラのような『実体は1つであとは幻影』というものではなく、単に超スピードで動いて残像のように見せるだけの単純な⋯⋯『身体能力ゴリ押し技』だけどな!


「ほい、ほい、ほい⋯⋯」

「⋯⋯くっ!?」


 俺はそんな何体もの自分の残像を出しながら、理恵たんの体に触れていく。


 直接攻撃するのではなくこうして理恵たんの体にタッチすることで「これが実戦だったらここがやられているよ」とまさに《《分からせた》》。


「⋯⋯さ、『三面六臂』っ!!」


 すると、理恵たんが『スキル:阿修羅』のスキル技『三面六臂』を展開。元々8倍上昇している身体能力がさらに3倍に引き上がる。しかし、


「甘いよ、理恵たん」

「な⋯⋯!? それでも⋯⋯全然対処でき⋯⋯ない」


 結局、理恵たんは俺のタッチにまったく対応できないまま、


「それまで!」


 如月さんの宣言により、模擬戦は終了した。



********************



「どうじゃ、雨宮の?」

「櫻子様⋯⋯。はい、まったく別次元の強さでした⋯⋯」

「そうじゃろ、そうじゃろぉ〜」


 理恵たんに変なマウント気味な質問をして、どやぁな櫻子たん。


「それでタケル君、お嬢と戦った感想は?」

「強い⋯⋯ですね」

「どのくらい?」

「少なくとも、琉球ダンジョンで出会ったちょっちゅね具志堅⋯⋯あ、えーと、『カルロス具志堅』さんに近い強さはあるかと⋯⋯」

「そうだろ、そうだろぉ〜」


 と、今度は櫻子たんに変わって如月さんがどやぁとなる。親バカ⋯⋯あ、いや⋯⋯姉バカかな? などと思っていると、


「い、いやいやいやいやっ!? ちょ、ちょっと! そんな笑えない冗談はやめてよ、タケル君っ!!」


 と、ここで理恵たんがいきなり大声で俺の言葉に物言いをつけてきた。


「冗談?」

「ボ、ボクが、あのS級ランカーのカルロス具志堅さんに近い強さだなんて⋯⋯やめてよ! 流石にそれは言い過ぎ⋯⋯」

「そんなことないよ?」

「⋯⋯え?」

「今の理恵たんの強さはかなりのものだと思うよ? 少なくとも俺が今まで見てきた探索者(シーカー)の中では、ちょっちゅね具志堅⋯⋯あいや、カルロス具志堅⋯⋯ああああ、もうめんどくさい! ちょっちゅね具志堅さんの次くらいの強さだったよ」

「そっ⋯⋯! そ、そんな、ボク⋯⋯が⋯⋯?」

「ああ。そうだよね、櫻子たん?」

「うむ」


 と、俺が話を振ると《《秒》》で即答する櫻子たん。


「雨宮の娘がこれほどの強さだったとは⋯⋯正直驚きじゃわい」

「さ、櫻子様⋯⋯っ?!」

「私も驚いたよ、お嬢。これまではお嬢の能力分析で付き合えるのは佐川君だけしかいなかったから、お嬢の実力をきちんと測れないでいたからね。ほら、これって、他の探索者(シーカー)を呼ぶわけにはいかないからさ⋯⋯」

「なるほど」


 たしかに、覚醒(トランス)ポーションの話って、ここにいるメンツくらいしかわからない話だもんなぁ。


「正直、実力不足の俺には、ただただ荷が重い役目だったわ⋯⋯」


 と、横で佐川が自分の実力不足にめっちゃヘコんでいるようで物凄い暗い表情で呟いた。とりあえず「ドンマイ」とフォローする。


「しかし⋯⋯そうか。お嬢の実力はカルロス具志堅に近い実力があると⋯⋯。それって、つまりお嬢はS級ランカーレベルって認識でいいんだよね?」

「ああ、それで合ってると思う」

「うむ、問題ないじゃろ」


 と、俺、如月さん、櫻子たんで話をしていると、横から理恵たんが「い、いやいやいや⋯⋯ちょ、ちょっと待ってよ?! そ、そんな、ボクがS級ランカーだなんて⋯⋯!」などとあたふたしていたが、俺たちはそんな理恵たんを無視して話を続ける。


「そこで、前に俺が二人に話した《《あの件》》なんだけどさ⋯⋯。理恵たんのこれだけの実力と、佐川の今の実力があればイケると思うんだ。だからやってみようと思うんだけど⋯⋯いいかな?」

「ま、まさかっ!? あれ、本気だったのかい!」

「もちろん。だって、このまま何もしなければ、今の探索者(シーカー)の実力じゃ、喋る魔物に絶対に勝てないからな」

「まーよくて雑兵の喋る魔物までじゃろうな。お主だってわかっておるじゃろ、如月?」

「いや、そりゃまぁ⋯⋯。だけど、タケル君の提案した《《あれ》》に、高ランクの探索者(シーカー)が《《釣れる》》かなぁ〜?」

「それは俺もわからないけど、でも少なくとも、もし《《釣る》》ことができれば、俺と理恵たん、佐川の3人で十分イケると⋯⋯思う」


 そんな俺の言葉に如月さんは「う〜ん⋯⋯」と、櫻子たんは「悪くないと思うぞ?」などと、各々でリアクションする中、


「え? 何の話?」

「《《釣る》》?」


 と、理恵たんと佐川が話に参加してきた。


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