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171「理恵たんの実力(2)」



「あ、でも⋯⋯」

「? なんだい、タケル君?」


 ここで俺は如月さんに声をかけた。


「ここで戦って大丈夫なんですか?」

「ん? ああ、大丈夫大丈夫。ここは魔道具開発でも利用している実験室だから耐久は問題ない⋯⋯⋯⋯と言いたいところなんだけど、タケル君と今のお嬢にはそんな軽口は言えないかな」

「そうじゃの。とはいえ、ワシも『結界』を張るからある程度は耐えられる。じゃから、まぁ、そうじゃな⋯⋯まずは『スキル技』は封印して『身体能力』だけで手合わせするのじゃ。それを観て『スキル技』発動の有無は判断しよう」

「わかりました!」

「⋯⋯」


 櫻子たんの言葉に元気よく返事を返す理恵たんだったが、しかし俺はつい黙り込んでしまう。


 というのも、櫻子たんが『結界』を張ってくれるという話をしたがそれはおそらく『魔法の結界』のことだと思う。ただそれだと理恵たんや佐川に魔法を見せることになるのだが⋯⋯大丈夫なのだろうか?


 そもそも佐川と理恵たんは俺が『オメガ』ってことを知っているだけで、俺や櫻子たんが魔法を使えるってことは知って⋯⋯いるのか?


 そんなことを考えていると、


「タケル君⋯⋯もしかしてボクと佐川が『魔法』のことを知っているのか、って考えてる?」

「っ?! り、理恵たん!」

「やっぱり⋯⋯。フフ、大丈夫だよ。ボクと佐川もタケル君が『魔法』を使えるってことは⋯⋯櫻子様から聞いてる」

「さ、櫻子たんから⋯⋯!」


 俺はそういって櫻子たんに顔を向ける。


「うむ。この二人はお主とだけでなく、如月柑奈とも親しい。さらには雨宮バリューテクノロジーの者ということも含めて⋯⋯全てを話した」

「す、全て⋯⋯?!」

「お主もワシも⋯⋯異世界から来たという話じゃ」

「えっ!? は、話したのぉぉ!」

「もちろんじゃ。現状、事は⋯⋯一刻を争うからの」

「!」

「お主もそれがわかっておるじゃろ?」

「⋯⋯」


 なるほど。そういうことか。


「⋯⋯佐川も理恵たんも巻き込むってことか?」

「うむ。実際お主やワシの話、そして『喋る魔物』や『女帝マーレ』の話もすべてした。その上で二人は了承してくれた」

「タケル君!」

「! 理恵たん⋯⋯」

「ボクも佐川もすべて知ってる、その上でちゃんと納得して今ここにいるの!」

「そうだぜ、タケル! 俺もその覚悟でここにいるぞ! 怖いけど!」

「二人とも⋯⋯」


 理恵たんがまっすぐな瞳で強く言葉にする、佐川が⋯⋯若干まだ怯えもあるようだ。まあ、それはそれで「佐川らしいな」と思い、俺は少し笑った。


「わかったよ。ありがとう、二人とも」

「でも、後でいいから⋯⋯タケル君の口から話を聞かせて欲しいな」

「お、俺も、タケルから話が聞きたいぞ!」

「クス⋯⋯ああ、わかった。二人には俺から改めて話をするよ」


 そんなこんなで、二人が『全て』を知っているとわかった俺は少し気持ちが楽になった。



********************



「それじゃあ、改めてルール説明じゃが⋯⋯まぁ、まずはスキルや魔法、あと武器も含めて無しの状態での手合わせからスタートじゃ。よいな、二人とも?」

「ああ」

「うん、わかったよ!」


 櫻子たんが審判のような立ち位置で俺と理恵たんの間に入り説明する。


「うむ、それでは⋯⋯⋯⋯試合開始!」


 ザッ⋯⋯!


「!」


 試合開始の合図がした瞬間⋯⋯理恵たんがさっきまで立っていた位置からさらに後ろに下がった。


「タケル君⋯⋯」

「?」

「⋯⋯全力でいかせていただきます」

「っ!?」


 理恵たんがその瞬間⋯⋯消えた。


 いや、消えたのではなく、残像が残るほどのものすごいスピードで俺との間合いを一気に詰めてきた。


「は、速い⋯⋯!」

「はぁぁぁっ!!!!」


 ガキィィィン!


 理恵たんのフェイントを入れた右側面からの蹴りに反応して片腕で防御する俺。


「重い! こんなのD級の重さじゃない!?」などと驚愕していると、


「正直、今の一撃はかなり力を入れたボクの自慢の蹴りだったんだけど、まさか片腕だけでこうも簡単に防がれるなんて⋯⋯」

「⋯⋯」

「フフ⋯⋯」

「理恵たん?」


 一瞬、謎の笑みを浮かべた理恵たん。しかしその直後、


「はああああああっ!!!!」

「お、おわっ?!」


 ドドドドドド⋯⋯っ!!!!


 理恵たんがその場で息もつかせぬ拳のラッシュを叩きつけてきた。俺はその拳を至近距離で(さば)いていくが⋯⋯、


「ぐぅっ?! 数が⋯⋯多過ぎる!」


 俺はそのラッシュを嫌い、思わず後方へと飛び距離を取る。


 正直、理恵たんはこのままさらに追ってくると予想していたので距離を取ったと同時に身構えていたのだが、しかし⋯⋯理恵たんが追ってくることはなかった。


「あれ? さらに詰めてくると思っていたんだけど⋯⋯」

「タケル君!」


 そこで理恵たんが声をかけてきた。


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