167「理恵たんの変化(2)」
「私は自分の探索者の才能を活かして誰もまだ見ていない101階層以降のダンジョンに挑みたい! そして、それにはもっと強くなる必要がある! そして、その可能性が目の前に現れた。それが⋯⋯異世界産覚醒ポーションだったの!」
「!」
理恵たんが俺の目をまっすぐに見つめながら、力強くその言葉を口にした。
「だから、私は躊躇なく異世界産覚醒ポーションを⋯⋯飲んだ。そして、それを飲んだ私は⋯⋯『大きな力』を手に入れることができたわ」
「! 大きな⋯⋯力⋯⋯? それって『身体能力の大幅向上』や『スキル技』のこと?」
「もちろん、それもある。でも⋯⋯それだけじゃなかったの」
「え?」
「⋯⋯『新しいスキル』が発現したの」
「え? 新しい⋯⋯スキル! 既存のスキルに関連するスキル技じゃなくて?!」
「ええ。《《しかも》》⋯⋯2つも」
「え? ええええええええええええっ!!!!」
スキルが増えた! 2つも!?
何⋯⋯それ?
俺が理恵たんの話を聞いてプチ混乱していると、
「タケル君が混乱するのも無理ない。だが、これは紛れも無い《《事実》》だ」
「マ、マジっすか⋯⋯」
如月さんが落ち着いた声色で「事実である」と俺に伝える。
「これは私も驚きの結果だったよ。まさかスキルが増えるなんてね⋯⋯しかも2つも! それで、その後いろいろと分析したんだが、どうやらこれは『異世界産覚醒ポーション』にだけ起こる現象のようなんだ」
「え? そうなんですか!」
「ああ」
如月さんの話によると、ここで作った『新覚醒ポーション』では『スキルが増える』ということはなかったらしい。
「あれ? でも、それで⋯⋯その⋯⋯理恵たんは⋯⋯」
「ん? ああ⋯⋯『副作用』のことか?」
「は、はい! 一見、特に何も変わっていないように見えるんですけど⋯⋯でもやっぱり副作用は発現したんですよね⋯⋯?」
「⋯⋯もちろん。しかも強力な身体能力上昇やスキル技獲得⋯⋯今回はさらに『スキル』自体が2つも増えたからね。それ相応の副作用がお嬢に発現した」
「! それって⋯⋯一体どういう副作用⋯⋯なんですか?」
俺が如月さんに恐る恐る聞くと、
「⋯⋯タケル君」
「! 理恵たん?」
「直接⋯⋯見せてあげる」
「え?」
そういうと理恵たんが突然俺の腕を掴んだ。そして、
「如月さん」
「あいよ。第2実験室のスタンバイOKだよ!」
と、如月さんに声をかけると如月さんも理解したようですぐに返事を返した。
第2⋯⋯実験室?
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——雨宮バリューテクノロジー 開発室『第2実験室』
「とりあえず、お嬢が着替えるので少し待っててくれ」
と、第2実験室に入って早々、如月さんがそう言って理恵たんと一緒に更衣室へと入っていった。
「着替え⋯⋯? どゆこと?」
「あー⋯⋯まぁ、たぶんそのほうがわかりやすいからってことだろうな〜」
「ん? わかりやすい? ていうか、佐川は知ってるのか?」
「ああ。ていうか、タケルが琉球ダンジョンに行っている間、ここで雨宮の覚醒ポーションの効果を確かめるってことで模擬戦してたからな」
「模擬戦? ていうか佐川って俺と同じF級だよな?」
「ああ」
「そんなんでD級の理恵たんの相手なんてできたのか?」
「ああ、できた。俺も驚きだったけど、まぁ覚醒ポーションのおかげってとこだ。なんせ元の身体能力が4倍も上がって、スキル技もあったからな」
「へ〜」
たしかに、佐川が覚醒ポーションを飲んだ後のダンジョンでのあの戦いぶりを見る限り、理恵たんとやり合えたと聞いても納得がいく。
「⋯⋯でも、覚醒ポーションを飲んで能力を発現した雨宮には⋯⋯歯が立たなかったわ」
「え?」
それなりに強くなったと感じていた佐川が、覚醒ポーションを飲んだ後の理恵たんには歯が立たなかったと聞いて呆然としていると、
「お待たせ、タケル君⋯⋯」
「あ、理恵た⋯⋯ええええfじゃおふあうふいふfじこっ!?」
理恵たんに声をかけられて振り向くと、そこには⋯⋯⋯⋯水着姿の理恵たんが立っていた。
どどどどどど⋯⋯どゆことぉぉぉ!!!!!