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161「新宿御苑ギルド『ギルマス部屋』にて(2)」



——雨宮バリューテクノロジー 開発室


「やーやーご両人! ようこそ、私の城へ!」


 開口一番、如月さんのテンション高めの挨拶が響き渡った。


 現在、俺と櫻子たんは雨宮バリューテクノロジーの本社地下にある『開発室』に来ている。というのも、さっき櫻子たんが如月さんに『覚醒(トランス)ポーションの副作用』の件で電話をしたところ、如月さんから「そのことも踏まえて二人に見せたいものがある」と言われ、その結果現在に至っている。


『如月 柑奈』⋯⋯雨宮バリューテクノロジーの開発室室長にして『天才科学者』と世界に名を轟かせている彼女はいつもテンションが高い。やっぱ天才って呼ばれる人は変わっているなぁと思う。


「いやすまないね。呼び出したりなんかして」

「別に構わん。今日は一日予定を空けておるからの」

「まぁ、俺は別にこれっといって⋯⋯。学生なんで時間だけはあるので」

「そういってくれるとありがたい」


 普段、奇行が目立つ如月さんだがこういった気遣いのできるところを見ると、案外真面目な人かもしれない。⋯⋯などと油断していると、


「今度、タケル君には是非『実験体』⋯⋯おっと間違えた、協力者として色々とお手伝いしてもらいたいんだけど⋯⋯どう?」

「謹んで、お断りさせていただきます」


 と、目の焦点があっていない満面の笑みでズイッと近寄ると、肩を掴んでそんなことを言ってくる。⋯⋯ていうか、え? この人探索者(シーカー)? 彼女の急接近を許してしまったんだけど?


「そういう『お約束』はもうよい。早う、本題を話せ」


 すると、櫻子たんからいつもの(・・・・)タイミングでツッコミが入った。


 この3人で話をするとき、今みたいにだいたい如月さんが俺にちょっかいを出してきて櫻子たんが止めるといったルーティンが出来上がっていた。⋯⋯えっと、別に望んでないし、何ならそんなルーティンいらないだけど?


「うむ。今日呼び出したのは電話で少し話した『覚醒(トランス)ポーションの副作用』の件もだが、実はそれ以外にもいろいろと『新しい発見』があったんでね⋯⋯」

「⋯⋯え?」

「何っ?! 新しい発見じゃと!」

「うん。それで今日は二人に直接見てもらおうということでここに来てもらったんだ」


 と言うと、如月さんは自身の机にあった『ある物』を持って見せてくれた。


「これは⋯⋯?」

「これが、今回作った『新覚醒(トランス)ポーション』だ」


 如月さんの手には澄み切った空のような蒼の液体が入った小瓶があった。たしかに俺が元々知っている色で見た目では特に変わりはない模様。


「『新』⋯⋯てことは、以前の覚醒(トランス)ポーションとは違うん⋯⋯ですよね?」

「その通り。こも『新覚醒(トランス)ポーション』だと副作用がなんと90%抑えられるわ」

「「えっ!? きゅ、90%⋯⋯!」」


 驚きの数字に俺と櫻子たんはしばしポカーン。ていうか、それってほぼ副作用出ないってことじゃん! 如月さん凄すぎだろ!?


「こ、これなら、この新覚醒(トランス)ポーションなら安心して人に勧められるじゃん! 完璧!」


 と、俺が諸手を挙げて喜びを表すと、


「フフ⋯⋯そこまで喜んでいるタケル君にこういうことを言うのは少し酷⋯⋯なのだけれども」

「え⋯⋯『酷』? 何がですか?」

「実は、新覚醒(トランス)ポーションは副作用こそ大幅に低減できたが、しかし、一つ大きな問題が出ちゃってね⋯⋯」

「大きな問題?」

「⋯⋯新覚醒(トランス)ポーションでは副作用が出ない場合、『身体能力の大幅向上』はあっても『スキル技』が出現することはない」

「「え⋯⋯っ?!」」

「分析したところ、新覚醒(トランス)ポーションで『スキル技』が出現するには『副作用が発生する必要がある』ということがわかったんだ」

「「な⋯⋯!?」」


 俺と櫻子たんは如月さんの言葉に呆然とする。それが確かなら『副作用は避けて通れない』ということになる。


「つまり、副作用のリスクはどうしても取らないといけないということか。う〜む⋯⋯」


 そして、櫻子たんもまた苦虫を潰したような顔でボヤく⋯⋯そんなとき、


「とまあ、とりあえず分析結果でわかったことがここまで。そして、その結果を受けて私はこう考えた⋯⋯『だったら副作用の内容自体(・・・・)の軽減を図れないか』とね」

「え? 副作用の内容の⋯⋯軽減⋯⋯?」

「そ、それは、どういう⋯⋯」

「副作用自体の効果を薄めることはできないかってことだ」

「副作用の効果を薄める?⋯⋯それってつまり、副作用の効果が軽いものにするってことですか?」

「そうだ。そして、それは⋯⋯成功した」

「「えええええっ!?」」


 如月さんが「成功した」とはっきりと告げた。マ、マジか⋯⋯!


「そ、そんな、ことが⋯⋯」

「本当か!? デカした、如月っ!!」


 如月さんの発言にめちゃくちゃ喜ぶ俺たち。しかし、


「あ、ごめんだけど喜ぶのは少し待ってくれるかな? 実は、それはそれで今度は別の問題が出ちゃったんだよね〜」

「え?」

「別の⋯⋯問題?」

「うん。実は『スキル技』と『副作用』の相互関係という話になるんだけど⋯⋯」


 このあと如月さんから語られた『別の問題』は、少々やっかいな内容(・・・・・・・・・)だった。


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