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157「マグダラの報告」



——琉球ダンジョン最深部『100階層』


『ふぅ⋯⋯まさか、あれほどの強さだったとは⋯⋯』


 オメガの想定外の強さを知ったマグダラが、大きなため息とともに愚痴を漏らす。


 現在、マグダラがいるのは琉球ダンジョン最深部である『100階層』。彼女は『空間の(ひず)み』を生み出し外部へ瞬間移動できる魔道具⋯⋯『歪曲転移装置ディストーション・ジャンプ』でここに移動してきた。


『オメガという人間、実際に対峙するとあの方(・・・)が言っていたよりも遥かに強かった⋯⋯。この世界に戻って強くなったということでしょう?』


 マグダラはあの方(・・・)から事前にオメガについての異世界での情報を聞いていた⋯⋯『過小』に。しかし、そのことは当人のマグダラは知らない。


『とにかく、あの方に一度状況説明をしなければ⋯⋯』


 そう言って、彼女は『あの方』に連絡を取る。


「⋯⋯マグダラか。どうした?」

『は、はい! さきほど琉球ダンジョンの60階層にてオメガと探索者(シーカー)らに接触。討伐を試みましたが失敗に終わってしまいました⋯⋯申し訳ありません』


 と、マグダラはあの方に心からの謝罪を示す。


「気にするな。生きて戻ってこられたのであれば十分だ」

『っ!? あ⋯⋯ありがとう、ござい⋯⋯ます!』


 マグダラがあの方の言葉に思わず赤面しながらお礼の言葉を述べる。彼女はてっきり激しく叱責されると思っていたため、その言葉は彼女の中で大きく響き高揚させた。


「私に連絡を寄越したのは状況報告⋯⋯ということかな?」

『は、はい⋯⋯! あのオメガという者ですが、奴は想定以上の強さでしたわ!』

「⋯⋯ふむ。それは私が君に教えたオメガの情報が大きく誤っていたと⋯⋯責めているのかね?」

『え? い、いいえ! そ、そんな⋯⋯! 滅相も無い!!』


 マグダラは状況説明のつもりで意図なく話したつもりだったが、あの方が『詰問』と捉えたことに驚きつつ、必死になって否定する。


「ふふ、冗談だよ」

『は、はい⋯⋯』


 マグダラは「勘弁してよ⋯⋯」という面持ちで一度大きく息を吐いた。


「しかし⋯⋯そうか。結城タケルは強かったか」

『はい。正直我々『()(はしら)』全員でかからないと倒せない相手⋯⋯くらいには強いかと思われます』

「ふむ、そうか」


 すると、あの方が終始無言になる。


 あの方が急に無言になるのは何かを思案しているときの『癖』であることをマグダラは知っていたので、あの方が口を開くのをじっと待つ。


「とりあえず調査対象の実力確認ができたので概ね計画は完遂した。よって、ただちに拠点に戻るように」

『かしこまりました』


 そうして、マグダラは連絡を終えると、


『ふぅ⋯⋯。とりあえず撤退命令が下ったので私も急ぎ撤退しましょう。それにしてもあのオメガ⋯⋯結城タケルはあの方から聞いてた話以上に強かったわね。これはあの方からしても想定外の強さだったのでしょうか。それともあえて(・・・)その情報を隠して⋯⋯』


 と、複雑な想いを吐露するマグダラだったが、


『い、いえ! あの方に限ってワザと情報を隠していたなどあるわけがありません。だって、あの方は我々喋る魔物の幹部である『()(はしら)』は特別で尊いものだと言ってたんですもの!』


 と、すぐにその疑惑を否定する。


『ええ、そうです。こんなことであの方を疑うようなことをしては『()(はしら)』の一人として恥ずべき思考ですわ⋯⋯』


 そう言って、マグダラは再び『空間の(ひず)みの魔道具』である『歪曲転移装置ディストーション・ジャンプ』を使用してその場を後にした。



********************



「⋯⋯なるほど。やはり結城タケルはこの世界に戻ってきてもあの強さは健在でしたか」


 そう言って、マグダラの報告を受けた『あの方』⋯⋯異世界の魔王軍幹部『右大臣ヴァルテラ』が拠点である『某国地下施設』のVIPルームにて心境の読めない表情で右手に持ったワイングラスを揺らしている。


「やっかいですね。元の世界に戻って力が弱体化していればよかったのですが⋯⋯。やはり、これは本腰を入れて討伐計画を立てないといけませんね」


 と、少し眉間に皺を寄せ苦い顔を浮かべる。


「まーそれでもこの世界の人間ども⋯⋯ああ『探索者(シーカー)』でしたか。あれらの実力はそうでもないですが私の『喋る魔物コレクション』にとっては素晴らしい素体ですからね。私はそっちの『素体集め』を行いますかね」


 そう言って、今度はさも楽しそうな表情を作ってコロコロと嗤うヴァルテラ。


「あと『偽りの主様』にもそろそろ動いてもらいましょうか。⋯⋯それにしてもこれまで冷酷冷徹な彼女が魔王ベガの死でただの復讐者に成り下がり、今では私の思惑どおり(・・・・・)に動いてくれる。疑うこともなく。ククク⋯⋯」


 そう言って、ワインを一度クイッと飲み込むヴァルテラのその表情は愉悦を帯びた笑みが広がっている。


「偽りの主⋯⋯女帝マーレには『()(はしら)』とともに、例の『時空間転移魔法陣』のある『池袋ダンジョン10階最下層』を一気に攻めてもらいましょう。いくら結城タケルといえど、『()(はしら)』全員と女帝マーレ相手ではさすがに勝つのは無理でしょう。なんせ、その戦力は女帝マーレと昔の私(・・・)くらいの戦力にはなりますからね」


 と、クイッと残りのワインを飲み干すヴァルテラ。


「⋯⋯では、第2ラウンドといきましょうか? 結城タケル」


<あいさつ>


 おはこんばんちわ mitsuzo です。


 この回が2024年最後の更新話となりますので、最後に少しだけごあいさつを。


 2024年はこの「異世界帰りの英雄は〜そこそこ無双する」で、初めて「現代ファンタジー」で「カクヨム:最高3位」「小説家になろう:最高1位」を獲得できました。


 ぶっちゃけ、「嘘っ?!」と何度見したかわかりませんww


 それもこれも読者のみなさんあってのものですので、改めてお礼を述べたいと思います。


 「異世界帰りの英雄は〜そこそこ無双する」を読んでくれてありがとうございます。現在投稿頻度は「一週間に2回」と毎日投稿はできなくなってしまいましたが、今後も書き続けていきますので、長い目で見ていただければ幸いです。


 2024年はありがとうございました。来年もまたよろしくお願いいたします。


 良いお年を〜♪ (´∀`)


 2024年12月29日(日)

 mitsuzo


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