156「空間の歪みの魔道具」
「四つ柱が何だか知んないけど、そろそろ⋯⋯ご退場願いましょうかね?」
そう言って、タケルがマグダラの方へとゆっくりと歩を進めていく。
そんなタケルを見て現場の皆は、
「どうやら勝負ありのようですね」
「やらやー(そうだなー)。やしが(だけど)オメガが強いのはわかるが今の『聖光』という謎の能力も含めて、あにゃー(彼)は本当に何者かねー」
「まったくです」
「まったくです」
とタケルの勝利を確信しており、また、
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:オメガ様からすげー光が出てマグダラの分身が消えたけど
あれってさー、いわゆる魔法なんだよな
:まーな。なんせスキルマニアのちょっちゅね具志堅が
「スキルじゃない魔法だ」て言ってたからな
:ちなみにあれって光属性の魔法だよな?
:ああ。マグダラが「闇属性上級魔法」って言ってたからな
そして、そのカウンター魔法が『光属性』であることは
漫画とアニメの世界ではもはや常識
:残念。ここは現代さ〜
:おい! ニセちょっちゅね具志堅が紛れ込んでるぞww
:しかもオメガは『光属性特級魔法』って言ってたさー
:『光属性』が魔法の『属性名』、『特級魔法』が『等級名』を表しているっぽいさー
:『等級名』の字面で考えるとおそらくマグダラの
『闇属性上級魔法』よりオメガの『光属性神級魔法』は上位の等級と思われるさー
:ちょっちゅね具志堅が増えてるwwww
:ちょっww ちょっちゅね具志堅さん増えすぎぃぃぃwww
:しかし悔しいかな、このニセちょっちゅね具志堅集団の
言ってることはかなり鋭い指摘なんだよなぁww
:おう。そのせっかくの鋭い指摘がニセちょっちゅね具志堅で
すべて台無しだけどなwwww
:それな
:それな
:ぐう聖
:とりま、勝負はついたようだにゃ
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視聴者もタケルの勝利は確定とでも言うような雰囲気となっていた。あと、なぜか『ニセちょっちゅね具志堅』が出現し増殖していた。
そんな『オメガ勝利』のムードの中⋯⋯しかしマグダラは焦るような様子もなく、むしろ冷静な状態でタケルと対峙する。
『⋯⋯なるほど。もはやこれまでといったところでしょうか』
「まーそういうことだ。この後、最深部100階層まで行ってダンジョン踏破する予定だからな。それに喋る魔物でもお前みたいな幹部みたいなのがいると、仲間のレベルアップには邪魔だからな」
『うふふ⋯⋯なるほど。これまでわたくしに対してここまで見下すような発言する人はいなかったので正直驚いてるわ』
「そうか。よかったな、最後に良い経験ができて⋯⋯」
『ええ、本当です。少し名残惜しいですが⋯⋯』
「心配すんな。せめて痛い思いはさせねーよ」
『あら? お優しいのですね?』
「まー最後くらいは、な」
『そうですか。でもわたくし⋯⋯あきらめの悪い女なんですの』
「! あきらめの悪い女なんて⋯⋯そんな需要ないぜ?」
『わたくしの魅力が伝わる人は、需要以上の愛情を注いでくれるわ』
「ほう?」
『ということで、最後に少しだけ抗わさせていただきますわ』
「いいぜ? 餞だ。正面から受けてやるよ」
『いやん、惚れそう。では⋯⋯』
「!」
そう言うと、マグダラが何かを取り出した。それは球体の形状をしている。
『改めて、少し名残惜しいですがまたお会いましょう⋯⋯『空間の歪み』!』
「なっ?!」
そう言って、マグダラが懐から出した『球状の物体』のボタンを押して叫ぶと、その球体から『霧状の何か』が彼女の右横に集中して噴出。すると、そこに『空間の割れ目』が出現した。
「く、空間の⋯⋯歪み!? な、なんで、喋る魔物のお前が⋯⋯」
『ごめんなさい。その質問はノーコメントとさせていただきますわ。では、またお会いましょう⋯⋯オメガ』
そう言うと、マグダラがその『空間の割れ目』に入っていき、そして、
「えっ!? マ、マグダラが⋯⋯消えた!!」
「そ、そんな!」
「な、なんだ、今のあの球状の物体は?!」
「魔道具? いやでも、こんな効果の魔道具なんて見たことも聞いたこともないさ〜」
周囲がマグダラの消失に驚いたり、マグダラが取り出した『球状の物体』について考察したりとざわつく中、一人タケルは、
「『空間の歪み』の魔道具化にすでに成功しているっていうのかよ⋯⋯。これちょっとヤバくね?」
と、喋る魔物⋯⋯女帝マーレが率いる連中が『空間の歪み』を魔道具化していることに驚愕するとともに、その影響力の大きさに懸念していた。
「⋯⋯おそらく櫻子たんも気づいているだろう。だがすぐに電話がこないということは⋯⋯それだけ今のマグダラが持っていた『空間の歪みの魔道具』に大きなショックなのかもな」
その後、とりあえず一旦冷静になったタケルは皆に改めて、『魔物活性を止めること』と『琉球ダンジョン踏破を進めること』を宣言すると、周囲も我に帰り、再び歩み出す。
それから2時間後——タケルたちは琉球ダンジョンを踏破した。