153「喋る魔物幹部登場」
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:すげえ! 過疎化ダンジョン凸り隊の全員のレベルがかなり上がってるな!
:魔物活性がもはやレベルアップの狩り場と化している!
:ちょっちゅね具志堅も上がった⋯⋯だと!?
:もしかして、配信していないときに喋る魔物倒したんじゃね?
:うん 僕もそう思うよ
いくら魔物活性でもS級のカルロスさんが
こんな2つもレベル上がるなんてまずないもの
:エレにゃん!
:なるほど やっぱり喋る魔物の経験値ってかなり高いんだな
:たぶんソロで喋る魔物を倒したんだろう
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視聴者やエレにゃんの見解も同じようだ。おそらく間違いないだろう。
戦乙女のみんなはどうなのか聞いていないけど、戦闘を見ている感じ、レベルアップしているように感じる。
「やっぱ、喋る魔物のいるダンジョンは『レベルアップ狩り場』として優秀だな」
今、喋る魔物が出てきたということはここからどんどん出てくるだろう。
「喋る魔物中心に狩っていくか!」
ここからは戦闘に参戦していくとしよう。
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——50階層『深淵』入口
現在、タケルたちは琉球ダンジョンの『深淵』の階層入口に入った。魔物活性の勢いは最初に比べて少し収まってきている。
しかし、50階層の『深淵』からはタケルや皆の予想どおり在来魔物の中に喋る魔物がチラホラと見える。ただし、まだバロンのような『まともな口調で喋る』上位の喋る魔物はいないようであった。
とはいえ、『深淵』まで来ると在来魔物が強く脅威であった。実際、
「きゃっ!!」
「渚!?」
戦乙女の渚や、
「うぐぅぅぅ⋯⋯」
「今、ポーションあげるわ」
過疎化ダンジョン凸り隊のりんねなど、在来喋魔物との交戦でさえ苦戦を強いられていた。とはいえ、全員がレベルが2〜4と上がっているため、まだタケルたちのほうが戦況は若干は押していた。⋯⋯しかし、
——60階層『深淵』
「⋯⋯ふぅ。さすがにキツくなってきたな」
過疎化ダンジョン凸り隊の越智からそんな弱音が出てきた。無理もない。60階層の『深淵』は在来魔物自体がBクラス以上の強さを誇るのがデフォルトで出現するエリアだ。
しかも、『深淵』の中腹あたりまで来ると在来魔物の強さも上がっており、目安でいえば『A級以上の探索者レベル』はないと厳しい。
過疎化ダンジョン凸り隊であれば、この階層で求められる探索者レベルの強さは基準を満たしてはいるが、戦乙女はいくらレベルが上がったとはいえ、かなり厳しくなっている。
ただ『不幸中の幸い』ではないが、現在は『魔物活性』の勢いが落ちているため、過疎化ダンジョン凸り隊のメンバーが戦乙女らをサポートしてくれているため、なんとか対応ができてはいた。
「あ、ありがとう⋯⋯ハァハァ⋯⋯ございます」
「気にするな! それよりも絶対に無理はするなよ。レベルアップはしているみたいだが、あんたたち『戦乙女』の強さはまだ『B級上位あるかないか』だ。だから絶対に無理はするんじゃねーぞ!」
「「「「「は、はい! ありがとうございますっ!!!!」」」」」
戦乙女のメンバーに激励と最善の注意を伝えるのは、過疎化ダンジョン凸り隊のリーダー越智大輔。
「う〜む⋯⋯なるほど。これぞクランの『理想的リーダー』というやつだな」
と、その越智の姿を見て一人感心するのはオメガこと⋯⋯タケル。
一方、視聴者のコメント欄では越智だけでなく『戦乙女』の評価も上がっていた。
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:さす越智
:さすオチ
:越智様かっこ良すぎぃぃぃぃ!!!!
:それにしても『戦乙女』って
元々C級くらいだったと思うけどそれにしては
活躍してるな!
:うんうん。喋る魔物にはまだ苦戦しているけど
それでも善戦してる!
:クランリーダーのあゆみんが特に活躍してるね
:もうこれB級上位くらいはあるんじゃね?
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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そんな各々が奮闘する中、そこに現れたのは、
『女帝マーレ様に仕える『四つ柱』の一人⋯⋯マグダラと申します。ここからはわたくしがお相手致しましょう』
自らを『四つ柱のマグダラ』と名乗るその喋る魔物は⋯⋯下半身が大蛇の体を模し、目元は『鱗柄のマスク』で覆われた髪の長い女性だった。
「な、なんだ、ありゃ⋯⋯」
対峙する越智が、その人外で異様な姿のマグダラを見て思わずそのような言葉を漏らし、
「はっさ!? あの女よ、下半身ハブやしぇ〜!」
と、カルロス具志堅も越智同様に驚いた様子をウチナーグチを交えて見せた。そんな中、
「四つ柱⋯⋯ねぇ」
皆の少し後ろで様子を眺めていたタケルが、初めて聞くその喋る魔物の『二つ名』という言葉に興味を示すと、皆の間をすり抜けながら前線へと身を乗り出していく。
「こっからは俺の仕事の領分ってことで」