150「合流〜そこはカオスと化した〜(2)」
【祝】150話〜♪
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:おい、オメガ! さっきの配信の前に一体何が起こっていたのじゃ!
ていうか、配信していないところで何をやらかしたのじゃ! 説明するのじゃ!
:あああああ、本物のオメガ様だぁぁぁ!!
わたしくソフィア・ナイトレイというしがない探索者やっておりますー!
画面越しでコメントだけとはいえ、きちんと挨拶できたこと恐悦至極にございますー!
:ソ、ソフィア様! 地が漏れてます!! 落ち着いてくださいませ!!!
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と、及川の言ってたとおり櫻子たんの脅迫コメントが入っていた。あと、探索者の世界ランカーの凄い人たちが最初のときよりだいぶ雰囲気が変わっていた。また、それ以外にも、
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:え? りんなちゃんの腕ってさっきの試作100号改に斬り飛ばされたって⋯⋯マ?
:それをオメガ様が越智さんや百合姫と同じようにエリクサー使ったって⋯⋯マ?
:これまでの話をまとめると、伝説上のポーション⋯⋯『オーパーツ』的な
あの『エリクサー』をオメガ様は少なくとも2本持ってたってことになるんだけど
一体何本持ってるのん?
:これまでずっと配信していたってことは、少なくとも現状
全世界に『エリクサー』の存在が明るみになったってことになるのだが?
:なるほど。つまり今日のオメガ様の配信は『神配信』ってことでおk?
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と、野次馬の視聴者も含めてまるで収まりがつかない、収束がまるで見えないカオスな状況と化していた。
「え、えっとですね⋯⋯実は⋯⋯」
と俺はブチ切れ模様の櫻子たんにここに来る前にりんなちゃんにエリクサーを使ったあたりの話をした。
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:お主⋯⋯何度やらかせば気が済むのじゃ?
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あう! なんか怒られるじゃなく普通に呆れられてしまった。
こっちのほうが逆にキツイ。
「い、いや、でも⋯⋯だって、エリクサーくらいあるって思うじゃん?!」
と俺は何とか櫻子たんに「不可抗力です」という話をしようとした。しかし、
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:ダンジョン入る前に調べずにいたお主に弁解の余地はないのじゃ
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い、一刀両断! そして、ぐう聖〜!
「ごめんなさい」
とりあえず、全力土下座で謝った。
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その後、俺の全力土下座やエリクサーの件で一通り視聴者が騒ぎ散らかした後、コメント欄から櫻子たんが「ちょっと電話するのじゃ」といって電話に切り替わった。
『オメガよ。お主がしでかしたのはもう仕方のないことじゃ。じゃから、これについてはもうよい』
「え? マジ? あざーっす!」
と、とりあえず櫻子たんから許しをもらえた。よかったー。それにしてもなんで電話でも『オメガ』って言ってるんだ? ああ、そっか⋯⋯いま横に有名探索者がいるんだっけ?
『ていうか、すでに新宿御苑ギルドのほうに世界のギルド本部や政府からも連絡がバンバン入ってきてる状況じゃ。もはや言い訳することなどできんのじゃ。⋯⋯はぁ』
「ごめんなさい」
うわぁ、向こうではそんなことになってるのか⋯⋯。マジで今回のはかなりやっちまったようだ。
『で、これからなのじゃが⋯⋯戦乙女たちのレベルアップの件はそのまま進めてくれ』
「え? いいの?」
『うむ。配信もそのままでよい。こうなったらもうそのままこのメンツで琉球ダンジョンに巣食っている喋る魔物を討伐してくるのじゃ。こっからは日本の探索者にとてつもない奴がいるという宣伝の一環として動いてもらう』
「あーなるほど」
そっか。日本って優秀な探索者が少ないってことで世界から舐められてるって言われているからな〜。
「わかった。じゃあ、これからこの琉球ダンジョンの最深部まで行ってみるよ。自重も捨てるよ」
『うむ、自重は捨てるな? あと『魔法』についてはごまかすのじゃぞ。さすがに魔法の存在が明るみに出るのはマズイからの。そして自重は絶対にやめるな?』
「あ⋯⋯はい」
あ、『自重』の件大事だから2回言われたな。危うく『自重』ポイちょするとこだった。危ない、危ない。
『それと⋯⋯ん? なんじゃ? 何をしておる! 今、オメガと話の途中⋯⋯⋯⋯何? オメガと話したい?』
「ん? 櫻子たん?」
どうやら、電話の向こうで櫻子たんは誰かとやり取りをしているようだった。たぶん、さっきの二人と話しているのかな⋯⋯などと思っていると、
「は、ははは、初めまして、オメガ様! 改めてご挨拶を! わたくしイギリス総本部にいるソフィア・ナイトレイといいます」
と、さっきのキャラ変したソフィアさんという方が電話に出てきた。
「あ、どうも。オメガです」
『はわわわ〜。⋯⋯こほん。失礼しました。とにかく、私にとってオメガ様とこうして直接電話でやり取りしてもらえたのはすごく嬉しいです。本当にありがとうございます。むふふ⋯⋯』
「⋯⋯あ、うん」
なんか、この世界ランカーNo.2の人ってちょっと変だけど偉ぶらないこの感じはすごいな。⋯⋯変な人だけど。
『では、琉球ダンジョンの喋る魔物討伐⋯⋯配信で楽しみに拝見させていただきます。頑張ってくださいませ』
「はい、ありがとうございます」
その後、また櫻子ちゃんに変わる。
『では、自重は捨てない程度でよろしく頼むのじゃ』
「わかったよ。それじゃ、行ってく⋯⋯⋯⋯ん?」
ここで、俺はある『違和感』を感じた。