140「はい、オメガです」
スカ⋯⋯!
『⋯⋯エ?』
さっきまで足蹴にして動きを止めていたはずの越智の姿が消えたことに、戸惑いの声を出す試作100号改。
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:え? 越智さんが⋯⋯消えた?
;うわぁぁ⋯⋯え? あれ? 越智さん消えた⋯⋯
:何だ! 何が起こってる?!
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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そして、その戸惑いは配信を観ている視聴者も同じだった。すると、
『っ!?』
その時——何かの存在を感じた試作100号改がその方向に視線を伸ばす。すると、目の前に一人の『男』が立っていることに気づく。
『何ダ、オマエ?』
試作100号改がその男に声をかけると、そのタイミングで凸り隊の配信用ドローンもその『男』を捉えた。
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:え? え?
:お、おい? あれって⋯⋯
:ま、まさか⋯⋯っ!!!!
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「俺か? 俺はオメガだ」
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:ええええええええええええええええっ!!!!!(困惑)
:ええええええええええええええええっ!!!!!(驚愕)
:オメガ様、キタァァァァァァ!!!!!!!
:うおおおおおお! マジかよ⋯⋯マジかよぉぉぉぉ!!!!!
:オメガ様ぁぁぁーーーーーーっ!!!!!!
:あああああああ⋯⋯神は見捨てなかったぁぁ!!!!!
:ぬうおおおおおおおお!!!!!
:流れ変わったなぁぁぁぁぁ!!!!
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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先程まで絶望的状況だったコメント欄が一転——オメガの出現により歓喜のコメントへと反転。しかし、現在この場が配信されていることを知らないタケルは試作100号改とのやり取りを続ける。
『オマエガオメガ?』
「はい、オメガです」
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:「はい、オメガです」wwww
:「はい、オメガです」じゃねーよ!wwww(うれし涙目震え)
:あいかわらずのオメガ節であるwwww
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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『ソウカ、ワカッタ』
「おう。わかったか?」
『デハ⋯⋯コロス』
そう呟くや否や、試作100号改がタケルに鋭利な両腕を伸ばし襲いかかる。しかし、その試作100号改の突進に特に避けようとしないオメガを観て、
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:ああ!? オメガ様、試作100号改の動きに反応できていない!!!!
:うわぁぁぁぁ!!!!
:オメガ様避けてぇぇ!!!
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と、視聴者が心配の声を上げた。だが、
バキャンっ!!!!
「エ⋯⋯? ア、アギャアアアアアアアアアアア⋯⋯っ!!!!」
越智や及川、またりんねを苦しめたその試作100号改の刃物のような両腕は、タケルに素手で掴まれると単純な握力で粉々に粉砕。
まさか自分の腕が砕かれると思っていなかった試作100号改は一瞬状況把握に遅れたが、すぐに痛みが込み上げてきたことで状況を把握すると絶叫をあげた。
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;えっ?! 試作100号改の両腕を掴んだと思ったら⋯⋯砕いたぞっ!!!!
:嘘っ!! あれって、凄い硬い材質じゃないの!?
:ああ。だって、さっき越智さんの『斬首剣大蛇』と
ぶつかっていたときカンカンカンって硬い音出してた⋯⋯はず
:それをオメガ様は単純な物理の握力だけで砕いた⋯⋯と?
:いやいやいやいやいやいやwwww え? マジ?
:ていうか、そもそもあの刃物のような両腕を掴むて⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
⋯⋯
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そんなオメガのまさかの対処に驚きのコメントが爆速で流れていく。
「お? 痛みを感じるのか? そいつはよかった⋯⋯」
タケルが試作100号改が痛みを感じることを知って、ニッと嗤う。
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:ひぇ
:ひぇ
:守りたいその笑顔
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『グギギ⋯⋯ソ、ソンナ、バカナ⋯⋯』
自身の両腕が砕かれるなど想定していなかった試作100号改は、目の前のオメガ(タケル)に驚きと痛みで震え動けないでいた。
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:お、おい⋯⋯この試作100号改が初めて明らかな感情を出したぞ!
:ほーん? なんか無機質で機械っぽかったけど感情あるんだな
:へい、ピッチャーびびってる
:まー無理もないwwww
:そら(自慢の武器ともいえる両腕が人間ごときの腕力で砕かれたんだもの)そうよ
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「おっと⋯⋯そうだった、そうだった」
フッ。
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:え! 消えた!!
:オメガ様が消えたぞ!
:は? 何が起こった?
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『キ、消エ⋯⋯?!』
目の前から越智を抱えて一瞬で姿を消したタケルに驚く試作100号改と配信視聴者の皆さん。すると、
「ほい、これ飲んで。あと、彼女にも何とか飲ませてあげて」
試作100号改のすぐ背後からタケルの声が聞こえたので、試作100号改もドローンも慌ててタケルを捉える。
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:ええっ?! 試作100号改のうしろぉぉぉぉー!!!!!
:い、いつのまに⋯⋯
:まったく見えなかったのだが?
:シ◯ラー、うしろぉー!
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『イ、イツノ間ニ、アソコマデ⋯⋯!』
タケルが一瞬でそこまで移動したことに驚く試作100号改と視聴者。もはや、試作100号改と視聴者が謎のシンクロな反応を見せるといった謎現象さえ起きていた。
そんなタケル当人は、相変わらず試作100号改のリアクションを特に気にせず越智に話しかける。
「あ、あんたはオメガっ!? な、なんで、ここに⋯⋯!」
「それはこっちのセリフでもある。ていうか、とりあえずこれ飲んで」
そういって、『緑に光る液体』が入った小瓶を越智に渡し飲むよう促す。越智は「ポーションみたいなものかな?」ということで「とりあえず応急処置を⋯⋯てことか」と納得し、その小瓶を受け取り飲み干した。すると、
フワァァァ⋯⋯。
「な⋯⋯な⋯⋯なな⋯⋯っ?!」