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135「過疎化ダンジョン凸り隊(4)」


——————————————————


:やっぱり二人ともこの喋る魔物が相当強いとわかってて⋯⋯

:ああ⋯⋯。ハナっから倒すではなく救援までの

 時間稼ぎって⋯⋯覚悟してるっぽい

:え? それって⋯⋯やられるのも覚悟してるってこと?

:そういうことだろ

:だから、百合姫は残ったんだろ

:時間稼ぎなら一人でも多いほうがいい⋯⋯てことか

:え? じゃー二人は⋯⋯死ぬ覚悟ってこと!?

:ああ

:たぶんそうだろな

:いやだよ、そんなの!

:どうにかなんないのかよ?!

:うるせー! どうにもならないから

 二人がこうして喋る魔物の前に立ってんだろが!

:そ、そんな⋯⋯

:大丈夫⋯⋯だよね?

:大丈夫、大丈夫じゃないじゃないんだよ!

:やるんだよ! やるしかないってことなんだよ!

:な、なあ? 救援を呼んでここに来るまでって

 どのくらい耐えなきゃいけないんだ?

:中層最深部の29階層だから⋯⋯最低でも1時間くらいは⋯⋯

:い、1時間?! マジかよ⋯⋯

:でもやるしかないだろ

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯


——————————————————


 そして、その二人の覚悟を視聴者もまたちゃんと察していた。


 そんな一触即発の中、突然⋯⋯、


『ワタシノ名ハ『シサク100ゴウカイ』⋯⋯』

「「⋯⋯っ!?」」


 喋る魔物が口を開いた。


——————————————————


:お、おい! なんか喋る魔物が話しかけたぞ!

:ワタシノナハシサクヒャクゴウカイ⋯⋯?

:「私の名はシサクヒャクゴウカイ」て言ったのか?

:「試作100号改」⋯⋯てこと?

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯


——————————————————


 突然の喋る魔物の言葉に視聴者も反応する。


「シサクヒャクゴウカイ⋯⋯! え? それって名前ってことなのか!?」

「どうやらそうかも⋯⋯。Dビジョンで視聴者は『試作100号改』じゃないかって言って⋯⋯」

『オマエハオメガカ?』

「「⋯⋯え?」」


——————————————————


:お、おい⋯⋯いま何つった?

:「オマエハオメガカ」て聞こえたけど⋯⋯

:「お前はオメガか」てこと?

:え? オメガって⋯⋯あの?

:いや絶対オメガ様のことだろ!

:で、でも、喋る魔物が、何でオメガ様のことを?

:あ、喋る魔物バロン倒したから狙われてる⋯⋯てことじゃ?

:間違いないでしょ!

:マジか⋯⋯

:まさかのオメガ様ご指名⋯⋯

:【悲報】オメガ様、喋る魔物たちにウォンテッドされる

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯


——————————————————


 喋る魔物『試作100号改』の言葉に視聴者が動揺する中、二人も試作10号改の言葉に困惑する。


「な、なんで、喋る魔物から『オメガ』て名前が?」

「前に喋る魔物バロンを倒したから標的にされているんじゃないか⋯⋯て視聴者は言ってるわ」

『オマエハオメガカ?』


 再度、試作100号改が質問をする。


「ち、違う。俺もこいつもオメガじゃない!」


 越智が試作100号改の質問に答える。


『チガウノカ?』

「ああ、違う!」

「違うわ!」


 二人は再度否定。


『ソウカ。チガウノカ⋯⋯』

「「⋯⋯」」


 二人はここで「もしかして⋯⋯見逃してくれる?」と淡い期待を抱く⋯⋯が、


『ワカッタ。デモオマエラ人間ハ⋯⋯殺ス』

「「やっぱ、ダメだったー!」」


 ドン⋯⋯!


 二人の淡い期待を打ち砕くように、試作100号改が再び自身の長い腕を伸ばして襲いかかってきた。


「くっ!」

「速いっ?!」


 越智と及川は試作100号改の速さに驚愕するも左右に飛んで何とか躱した⋯⋯と思われたが、


 ブシュ⋯⋯!


「「うぐっ?!」」


 完全には避けられていなかったのか、越智は左腕を、及川は右腕を少し斬られた。


——————————————————


:え! 斬られた?!

:うまく避けれたように見えたけど⋯⋯当たってたのか!?

:速すぎだろ、試作100号改

:それにしても、この『試作100号改』て名前⋯⋯

 やっぱり誰かが作った人工的な魔物⋯⋯なのか?

:んなこたぁ今はどーでもいいんだよ!

:大丈夫! かすり傷だ!!

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯

⋯⋯


——————————————————


 視聴者が見守る中、二人と喋る魔物『試作100号改』の戦闘はさらに激しさを増していく。


「うおらぁぁぁ!!!!」


 再び、試作100号改へ迫る越智。しかし、そのすべての剣戟は⋯⋯軽くあしらわれていた。


「えっ!! この喋る魔物⋯⋯試作100号改って、あんたの剣筋完全に見切ってるじゃない?!」

「う、うるせぇ! まだだ!!」


 越智が及川の言葉があまりにクリティカルに入ったのか、悪態を吐きつつ、さらに意固地になって試作100号改に攻め入っていく。しかし、


『⋯⋯完全ニ、ミキッタ』

「何⋯⋯? ぐぼぉっ!!!!」

「越智っ!?」


 試作100号改が下から迫ると、越智の『斬首剣大蛇』を斬り上げる。


 剣を持つ両腕が上がった完全な無防備状態の越智。そんなガラ空きとなった腹部に試作100号改の強烈な蹴りが入ると越智は10メートル先の大岩に体を激しく叩きつけられた。


「うおぉぉぉぉ!!!!」


 大岩に叩きつけられた越智を見た及川は、試作100号改が越智に止めを刺すのを食い止めるため目の前に立ちはだかると、


「食らえ! 千手打突(せんじゅだとつ)⋯⋯っ!!」


 及川は自身のダンジョン産アイテム武器『薙刀ブレード』に魔力を込めると『スキル:薙刀闘将(なぎなたとうしょう)』の技の一つ『千手打突(せんじゅだとつ)』を繰り出した。


 ガガガガガガガガガガガガ⋯⋯!!!!


 試作100号改は咄嗟に腕をクロスして及川の『千手打突』を防御するものの、その剣戟の勢いに体が後方へザザザ⋯⋯と押し戻される。


『グゥ⋯⋯ナカナカノ打突⋯⋯』

「! ふふん、そりゃどうも」


 喋る魔物『試作100号改』からまさかのお褒めの言葉に少し驚く及川だったが、そこは表情に出さず、あくまでスマートに、むしろ余裕さえ感じさせる笑顔を持って、試作100号改に返事を返した。


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