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130「琉球ダンジョンの調査(1)」



「あれ? ちょっと待って?」


 亜由美さんが突然何かに気づいたような一言を告げた。


「どうしたんですか、亜由美さん?」

「あのさ、さっきダンジョンで魔物を倒したときの経験値は全員に均等に割り振られるって話をしてたけど⋯⋯」

「? それが⋯⋯何か?」

「えっとね、よくよく考えたら私たち戦乙女(ヴァルキュリー)とオメガさんって⋯⋯まだクラン登録してないですよね?」

「「「「「あ⋯⋯」」」」」


 そう、俺たちは『櫻子たん直属のクラン』となったが、しかし、まだクラン登録はしていないという、いまさら感満載の事実に全員が呆気にとられた。


「た、たしかに⋯⋯。じゃあ、明日にでもこっちのギルドでクラン登録してきましょう」


 とりあえず、クラン登録については明日⋯⋯ということで、俺はこの話を一旦終わらせた。


「ところで、ちょっちゅねさん」

「なんねー?」

「琉球ダンジョンって今は探索者(シーカー)が少ないって言ってましたけど、具体的には毎日どのくらいの探索者(シーカー)が活動してるんですか?」

「正直、1組もいないさー」

「「「「「えっ!? 1組も!」」」」」

「たしかに今日上層最深部の9階層まで行っても誰もいなかったけど⋯⋯あれってたまたまじゃないんですか?」

「やんどー。あれが日常さー」


 なんてこった。そんなに人がいないのか⋯⋯。


「まーでも無理ないよね。だって、上層の階層ボスが喋る魔物だったんだし⋯⋯」

「そうですね。喋る魔物となれば誰も近づかないのも必然ですね」


 と渚さんと琴乃さんが納得する。たしかに、上層で喋る魔物が出るダンジョンなんて初めてだったし⋯⋯。実際、さっきの喋る魔物『シサク10号』は倒せはしたがレベルでいったら30以上の⋯⋯下層の魔物くらいの強さはあったし。

「いや、そのことやしがよ(そのことだけど)⋯⋯さっきも言った通り、喋る魔物がこれまで上層に現れるなんてことはなかったさー。琉球ダンジョンはたしかに喋る魔物の出没例が多いけど、それはあくまで50階層以降から見られるものだったから⋯⋯これまでとは全然状況が違うさー」


 ちなみに、ちょっちゅねさんの話だと、これまで探索者(シーカー)が琉球ダンジョンに近寄らなくなったのはこの『50階層以降から喋る魔物が出現する』という噂が広まったかららしい。


「元々の噂が『50階層以降』だったのに、今日行ったらまさか9階層に⋯⋯しかも上層階層ボスのかわりに出現するなんて⋯⋯噂以上にやばい状況さー」

「これって、10階層の中層以降の階層ボスはすべて『喋る魔物』てことなんですか?!」


 亜由美さんが不安げな表情で質問する。


「⋯⋯わからんさー。でも、その可能性はあると思うさー。いや、もしかしたら普通に階層ボス関係なく、各階層で出てくるかもしれんねー。なんせ、それくらいの異常事態だからねー」

「そ、そんな⋯⋯」


 と、場がシーンとする中、


「望むところじゃないか、君たち!」


 と、快活な声でそんな言葉を投げかけたのはもちろん⋯⋯俺氏。


「喋る魔物はすべてまかせろ! そんで戦乙女(ヴァルキュリー)はさっさと強くなれい! あと、ちょっちゅねさんもおまけに強くなればいいさー!」

「「「「「オメガ(さん)(君)(様)っ!!!!」」」」」

「なんか、皆の話だと『やばいよやばいよー』みたいな感じになっているが、俺からしたら『フィーバータイムキター!』だからな?」

「オメガ⋯⋯君は⋯⋯」

「ていうか、ちょっちゅねさんは琉球ダンジョンを踏破したんだろ? それだったら喋る魔物とも戦ったことあるんじゃないか?」

「あ、あるさー。でも、今日みたいな⋯⋯あのちっちゃい喋る魔物⋯⋯えーと⋯⋯」

「⋯⋯シサク10号?」

「そうそう! シサク10号とかそれに似たロボットぽい喋る魔物だけさー」

「え? そうなの?『喋る魔物バロン』みたいな奴はいなかったのか?」

「そうだねー」


 へー、そうなんだ。


 正直、バロンくらいの喋る魔物じゃないとそこまで『経験値』は美味しくないのかも⋯⋯。


 マジかー。バロンくらいの経験値持った喋る魔物がいないならそこまで戦乙女(ヴァルキュリー)のレベルアップは捗らないかもなー。


「でも、そういうことであれば、ちょっちゅねさんなら今日の喋る魔物『シサク10号』みたいな奴だったら余裕ってことだよな?」

「ま、まあ、そうだね〜⋯⋯」

「だったら、琉球ダンジョン恐るるに足らず! 俺とちょっちゅねさんで先頭に立ってバンバン倒していきましょう!」

「わかったさー!」

「あと、戦乙女(ヴァルキュリー)の皆さんは⋯⋯そうだな〜、レベルが『60』近くなったら戦闘に参加してください」

「「「「は、はい⋯⋯!」」」」


 あ、なんか、俺が勝手に段取りを決めてしまった⋯⋯いきおいで。


 ま、まぁ、戦乙女(ヴァルキュリー)の皆さんもちょっちゅねさんも特に嫌な顔はしていないみたいだし、大丈夫大丈夫。


「で、あれば、あとはギルドに行って戦乙女(ヴァルキュリー)の皆さんとクラン登録すればOK⋯⋯だと思うんだが、クラン名どうしましょうか?」


 ということで、戦乙女(ヴァルキュリー)の皆さんとクラン名の話をしようと思ったら、


「え? 別に何でもいいですよ?」


 とは亜由美さん。


「え? いいんですか?」

「ええ。だって⋯⋯()登録ですよね?」

「え? 仮⋯⋯?」

「だって、櫻子様がいないところで勝手にクラン名をつけるのはどうかな〜と。ていうか、櫻子様がいないところで勝手にクラン名決めて登録するなんて⋯⋯怖くないですか?」

「⋯⋯あ」


 た、たしかに⋯⋯。


「ありがとうございます。大変重要なことを失念しておりました。教えてくれてありがとうございます。このご恩は一生忘れません」

「いや、大袈裟だなっ!?」


 と、横から有紀さんが俺にツッコむ。しかし、


「いやいやいや、あの『櫻子』たんですよ? 彼女の預かり知らぬところで勝手なことやったらどうなるか、どんな制裁を加えられるか⋯⋯」

「! た、たし⋯⋯か⋯⋯に」

「でしょ?! なので、亜由美さんのアドバイスは本当に私の命を救ったと言えるんです!」

「お、おう⋯⋯」


 俺の必死な言葉に少し引いてはいるものの有紀さんは納得してくれたようだ。


 さすが、櫻子たんの怖さを知る数少ないナカーマ。


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