126「いざ中へ」
——琉球ダンジョン1階層『上層』
「さ、さとうきび⋯⋯畑っ!?」
琉球ダンジョンに入ると、いきなりさとうきび畑が広がっていた。ざわわ⋯⋯。
「こっち来る前に車で資料を見たと思うが、琉球ダンジョンの『上層』はさとうきび畑やんどー」
「た、たしかに、資料に書いてはいたけど、でも、こうしてダンジョンでさとうきび畑を目の当たりにすると⋯⋯改めてダンジョンの不思議さを実感するなぁ」
「わかるー! ダンジョンってホント不思議だよねー!」
と俺の感想に乗っかる渚さん。たしかにダンジョンって異世界でも似た感じだったけど面白いよな。
「お? 早速、魔物がお目見えどー」
「「「「「で、でっか⋯⋯!?」」」」」
ちょっちゅね具志堅さんがそう言って指差したところに『でっかいヤドカリ』が5匹ほどいて、こっちに気づいてシャカシャカシャカと近寄ってきた。
「これは、『ロックヤドカリ』て魔物さー。だいたい3匹以上の群れでいるさー。ちなみに、あの貝殻の部分はこのダンジョンに生息する貝の貝殻なんだけど、その貝殻が岩石みたいに固いからこの魔物は『ロックヤドカリ』て呼ばれてるさー」
「「「「「な、なるほど⋯⋯」」」」」
「とはいっても、あくまで上層レベルの探索者だったらの話だからレベル差があればこうし⋯⋯てっ!!」
バキャン!
「素手でも固い貝殻部分は破壊することができるさー」
「「「「⋯⋯すご」」」」
戦乙女の皆が、ちょっちゅね具志堅さんが素手で硬そうな貝殻ごと魔物を破壊するのを見てドン引きしている。さもありなん。
とはいえ、たしかに見た感じこれくらいの固さなら素手でもいけそうだ⋯⋯などと思っていると、
「オメガ。それじゃあ、二人でどれだけ倒せるか勝負してみるねー?」
「⋯⋯フッ、いいだろう。臨むところだ!」
ちょうど、この『ロックヤドカリ』が仲間を呼んだのか、見える範囲でだいたい20匹ほど集まっていた。
「亜由美さんたちは、とりあえず素手じゃなくて武器やスキルで倒していってください」
「わかったわ」
「それじゃあ、よーい⋯⋯スタートさー!」
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「はあ、はあ、はあ⋯⋯さすがにやるなーオメガ」
「いえいえ、勝ちはしましたけど1匹差ですし⋯⋯ただ運が良かっただけですよ」
あの後『ロックヤドカリ狩り』を行った結果、俺はちょっちゅね具志堅さんに1匹差で勝った。ていうか『ロックヤドカリ狩り』て早口言葉っぽいね!
「いやいや、オメガ⋯⋯お前全然息切れしてないやしぇ!」
「え? あ⋯⋯まぁそうですね」
「ははは⋯⋯。やっぱオメガの強さはちょっと桁違いみたいねー」
「⋯⋯ど、どうも」
ちなみに、戦乙女たちは横で肩で息を切らしながら全員が大の字になって寝転がっていた。苦戦したわけではないが、あの後さらに増えて最終的には40匹前後まで増えたので、C級ランカーである彼女らもさすがに体力が消耗したようだ。
ちなみに、本来ならこのロックヤドカリがここまで増えることはない。せいぜい5〜6匹前後らしい。だが、今回ちょっちゅね具志堅さんがワザと数匹逃しては仲間を呼ばせて⋯⋯を繰り返していたのでここまで増殖したのだった。
まー、個人的に楽しかったので俺的には問題ないけどね。
ただ、まぁ、俺以外の皆がバテているようだったので、
「ちょっと休憩してからいきますか?」
と聞いてみると、
「「「「「⋯⋯是非!」」」」」
と即答された。
まー急いでいるわけではないので、とりあえず一旦休憩となった。
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その後、休憩した後、ちょっちゅね具志堅さんが皆に話始める。
「えっと⋯⋯今日来沖したオメガをいきなり琉球ダンジョンに連れてきて魔物と戦闘になったけど、予定では琉球ダンジョンの中を軽く見てもらってすぐにホテルに戻る予定だったわけさー。ワンもちょっと楽しくなってしまって魔物と戦闘してしまったけど、とりあえず今日はこれでホテルに戻るねー?」
と聞いてきた。なるほど、今日は戦闘する予定ではなかったのか。でも、
「いえ、せっかく体も暖まってきたところなんで、もう少し中を覗きたいです」
「お、そうか。君たちはどう?」
「「「「だ、大丈夫です⋯⋯!」」」」
うーん、正直『戦乙女』たちは疲れているようだが⋯⋯まぁ、レベルアップ目的だしいっか。
「よーし、じゃあ今日はとりあえず⋯⋯上層階層ボスのところまで行くさー!」
「「「「「⋯⋯え?」」」」」
いや、おい! いきなり初日の⋯⋯しかも本来見学だけのはずがなんで階層ボス攻略になんだよっ!? 戦乙女のみなさんドン引きしてるし! いや、ま、別にいいけどね!