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110「スキルスクロール」



「えーと、これは魔石で、あとは剣と⋯⋯これは?」


 俺は早速ゴブリンナイトが落としたドロップアイテムのところにいき、それらを手に取った。理恵たんには「上層階層ボスのドロップなんて初めて⋯⋯」などと言ったが、実際はオメガのときにすでに経験済みだ。


 だが、今は『ダンジョン探索初デビュー結城タケル』なので、初めての『(てい)』で接しようと思っていた⋯⋯のだが、しかし、目の前に本当に見たことのない『巻物のようなアイテム』があったので、思わず素のリアクションが出る。


「あ、ラッキーですね! これ、ゴブリンナイトの『身体狂化』の『スキルスクロール』ですよ!」

「スキルスクロール?」

「はい。あれ? 知らないんですか?『双剣』スキルもスキルスクロールから取ったんじゃないんですか?」


 しまった! 現代(ここ)のスキル取得方法って『スキルスクロール』に魔力を流して取得するんだった。


「あ、ああ、そうだった。ごめん、ちょっとした勘違いしてた⋯⋯ははは」


 やば⋯⋯。鋭い理恵たんなら俺のこの発言やリアクションに違和感を感じ⋯⋯、


「なんだ、勘違いですか。ふふ、それじゃあしょうがないですね」


 あれ? そうでもない? よ、よかった⋯⋯ラッキー!


「はぁ⋯⋯相変わらず勘が鈍いというか、ズレてるというか、図太いというか⋯⋯」

「ん? 佐川?」

「何でもねーよ」


 なんだ、こいつ? なんか知らんけど随分上から来るじゃん? もう1回、覚醒(トランス)ポーションお見舞いしたろか?


——————————————————


——雨宮 理恵


(ふぅ⋯⋯タケル君の表情を見るとうまく誤魔化せたとでも思っているようですが⋯⋯すごいバレバレですね。もういっそ怖いくらいです。これ、いずれオメガちゃんねるでボロが出るのも時間の問題⋯⋯、いや、もしかしたら、この『英雄旅団』で配信始めたらこっちで『オメガの身バレ』が発覚するかもですね⋯⋯ふぅ、頭痛いです)


——佐川 卓


(はぁぁぁ〜。こいつ絶対ボロ出すの時間の問題だろ? なんでスキル持っているお前が『スキルスクロール』を知らないんだよ! あと、ゴブリンナイトとの戦闘で序盤はそうでもなかったのに、戦闘中いきなり身体能力がえげつないくらい上がってたし! でも、それを俺や雨宮が気づいていないとでも思っているみたいだし⋯⋯。いや気づくわ! さすがにあれだけの圧倒的な身体能力上昇は誰だって気づくわ! あれって、たぶんオメガのときの身体能力なんだろうけど、羽交い締めされたときマジで1ミリも身動き取れなかったな⋯⋯。あれって一体どれほどの身体能力なんだろ?)


——————————————————



********************



「ところで理恵たん⋯⋯魔石とかアイテムってどれくらいで売れるの?」

「え? 売ったことないんですか?」

「うん。養成ダンジョンで取った魔石とかアイテムはずっと家に置いたままなんだよねー」

「珍しいですね。普通ならすぐに売って探索用の武器とか防具とかアイテムを買うのが多いんですけど⋯⋯」

「え?! あ⋯⋯え、えーと⋯⋯ほら! 大した金額にならないかな〜と思って! ならまとめて一気に売ったほうがいいかな〜て⋯⋯」


 やばっ!? たしかに普通はすぐに売って装備を整えるもんか。俺も異世界(あっち)ではそうだった気がする。疑われてないかな〜⋯⋯?


「ああ、そうなんですね。なるほど、それもいいかもですね。さすがです!」

「あ、ありがとう⋯⋯ははは」


 セ、セーフ!


「そうですねぇ⋯⋯。例えばですけど、この落ちているゴブリンナイトの魔石だと相場は『15,000円』くらいですね」

「ええ?! 15,000円⋯⋯! そんなにすんの!!」

「はい。上層とはいえ階層ボスですからね。それくらいはしますよ」

「へ、へ〜⋯⋯じゃ、じゃあ、例えば、さらに下の中層とか下層の階層ボスとかだと、それ以上ってこと⋯⋯かな?」

「ええ、もちろん。ちなみに単騎で下層入口の30階層で1日中活動できるだけの実力があれば1日10万くらいは稼げると思いますよ」

「マ、マママ、マジっすかぁぁぁ!!!!」

「⋯⋯クス。はい。だって、下層の魔物の魔石はちょうどこのゴブリンナイトの魔石の値段と同じくらいですから」

「ふ、ふ〜ん⋯⋯」


 おいおいおい、おい!


 マジかー! マジかマギカー!


 初配信のときだけでも中層の魔物の魔石が50個くらいあるんですけどー! あと、下層の魔物の魔石も同じくらいあるんですけどー! どんだけー!


「ち、ちなみにさ〜、理恵たんはD級探索者(シーカー)なんだよね?」

「はい」

「いつもはどこでダンジョン探索してるの?」

「そうですね。だいたいは下層の中間あたり⋯⋯40〜42階層あたりですね」

「へ、へぇ〜」


 30階層で1日活動すれば10万円くらい稼げるわけだから、少なくとも理恵たんは現時点で40階層を1日潜れば、最低でも1日10万円は余裕で超えるってことか。探索者(シーカー)ってやっぱ凄い稼げるんだなぁ。


「よ、40ぅぅ!!! え⋯⋯雨宮ってたしか単騎(ソロ)だよな?」


 横から佐川が入ってきた。


「ええ」


 ん? なんか理恵たんが顔を赤くしているぞ。⋯⋯なんで?


「理恵たん、どうしたの?」

「あ、いえ⋯⋯女の子のくせに下層でしかも単騎(ソロ)で探索活動してるなんて⋯⋯なんか女の子っぽくないですよね⋯⋯」

「いや、そんなこと⋯⋯」

「そんなことねーよ!」

「佐川⋯⋯!?」


 ぬ? 佐川に先を越された⋯⋯。


「雨宮は⋯⋯その⋯⋯すげーよ! それに女の子っぽくないとかも全然ねーよ! 女の子っぽいし、それでいて強いだなんて最高じゃねーか!」

「なっ!? お、お前⋯⋯何を言って⋯⋯!」

「え?⋯⋯あ! あ、いや、その別に、俺は⋯⋯」

「⋯⋯」


 二人がお互いの言葉や態度に顔を赤らめてモジモジしている。あのぅお二人さん⋯⋯隙あらばラブコメの波動放つのやめてもらっていいっすかねぇ。


 ていうか、佐川と理恵たんってマジでそういう仲(・・・・・)なの〜?


 俺、異世界帰りの元英雄だから主人公と思ったんだけど違うの〜?


 いまだ俺には『ラブコメの波動』とか『ハーレムの波動』とか皆無なんですけど〜?


 などと、勝手に自分を『主人公』と配役するタケル。


 大丈夫だ、タケル。君のその推測は間違っていない!


 ただ、残念! 君のラブコメはもう少し()だ!


 頑張れ、俺たちの主人公⋯⋯結城タケル!


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