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第八話:異空間こそ相応しい!?

異空間という言葉はよく知られているが、これを広辞苑で調べてみるとなかったりする。ちょっと意表を突かれた。


異空間の[異]とは、[普通とは違って怪しいこと、妙なこと。(広辞苑より)]

という意味であり、空間とは、英語で言うとspaceの部分にあたる。


つまり、この異空間とは、・・・・・「普通とは違って怪しく、妙な空間」という意味になる。


そう、まさしくこの異空間と言うに相応しい世界がこの防火扉をあけた先には広がっていたのである。


防火扉を開けると、、、、、、少し薄暗い。


目の前に靴が床一面に広がっていた。


そして左右の壁には下駄箱がならんでおり、幅の短い廊下が奥まで続いていた。


「あの~すいませ~ん。」

おそるおそる声を出したが、


シ~ン


「あのここの見学をさせていただきたいんですが~」


シ~ン


「あの~すいませーーーーん」


ちょっと投げやりの声を出すと、


ガチャッ


玄関から一番近いドアが開いた。


「ハイ、」


帽子を被って白いジャンパーを着、そしてちょっと顔の赤い眼鏡をかけた人がコップ片手にでてきた。


「あの~、ここの寮の見学をさせてもらいたいんですが・・・」


「ああいいですよ。どうぞ。。。あっ!このスリッパどうぞ」

と言うとその眼鏡をかけた人は、下駄箱にあるサンダルを出して僕と姉の足元においた。


僕は、履くのを一瞬ためらった。


なぜなら、いかにも、臭そうなサンダルだったからだ。


しかし、『いえ、靴のままでいいです』なんて言えないので、


「あっありがとうございます。」


と言いながらも心の中で泣きながら履いた。


なんだかこのサンダルやわらかいよ~。うわああああああああ~


まず、その眼鏡をかけた人は、僕たちを談話室と呼ばれるところに案内してくれた。


「クンっ! ここは、クンっ! 談話室と・・ば・ところで クンっ! 寮生が クンっ! 集まって話をし・・ クンっ! その横にあるキッチンで料理をして、クンっ!食べたりす・・。」


この眼鏡をかけた人の癖だろう、文節ごとにやたら、鼻水を吸うような音を細かい間隔でする。


しかも声が小さいためよく聞こえなかった。

ただ、なんとなく雰囲気はわかった。


談話室は、思ったよりも広い。


テレビが1台、外側がやぶれ綿が一面に飛び散っている黒いソファーが2つ、長方形のテーブルが3つ並び、あとはマンガが散乱していた。


いかにもマンガに出てくる寮だ。


ひと言で言うと「汚い」に尽きる。


談話室に隣接してあるキッチンも広かったが、これはキッチンというより厨房と言った方が無難である。


中華なべがあるのはとても印象的だった。


それに談話室のテーブルに無造作に焼酎がおいてあるのにもビックリさせられた。


『あっ酒がおいてある。でもまあ大学生だから当たり前だよな。

アレっ!?そういえばここちょっと酒くさいぞ。でもまだ昼間だしありえねーか!』


しかし、酒臭いニオイは僕の方に段々と近づいてきた。


『いやっ気のせいじゃない!どんどん臭って来るぞ。来たっ!はぅ!』

後ろを振り返ると、

「クンっ! なにか質問アル?」


・・・・・・・・・・・・・・・・『お前かよ~』


犯人は、眼鏡をかけた人だった。

眼鏡をかけた人は、元から赤いんじゃなく、焼酎で顔を赤くしていたのだ。


『酔っ払いながら、、、しかも焼酎片手かよ!』


開いた口がふさがらなかった。


しかし、眼鏡をかけた人は淡々と説明を続けた。


「ここが二人部屋。クンっ!1人部屋もあるけど、クンっ!それは大学四年間のうちの一年だけ使える事ができます。」


2人部屋の広さは、二段ベッド・机・本棚が入ったら、いっぱいいっぱいの広さだ。


思った以上に狭かった。


次にお風呂とトイレに案内された。


「それから、クンっ! 便所とお風呂は共同ね。」


お風呂は全面タイル張り。便所はその名の通りで、便所は便所らしい便所だった。


「これでひと通りだけど、質問アル??」

と眼鏡かけた人。


「えっとー。・・・・・姉ちゃんどう思う??」

姉に、助けを求めた。


「男子寮って感じよね。でもわたしが住むんじゃないし。タケオ次第でしょ。」


「確かにそうだよね~」

と変に納得する僕。


僕は非常に大きな不安を感じたし、あまりにも突っ込みどころが多い設備にびっくりしたが、しかしその反面どこか懐かしい感じがした。


前の物件とは雲泥の差・月とスッポンだったが、不思議なことに『絶対ここには死んでも住みたくない』という感情も生まれてこなかった。


最初は、『えっまじかよ』、


『やばいよ』、


『汚ねー』、


『くせー』


と思ったが、あまりのビックリのせいで感覚が麻痺したのか


『アレっアレレ!ココいいかも』、


『ココいいんじゃん』


『ここで住んでもいいかな?』


と思い始めたのだ。


そんな感覚が麻痺した僕に、決定的なひと言が飛び込んできた。


「あっ クンっ! そうそう。ここ門限ないよ」


「え!?」

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