第七話:男子寮ってこんなん!?
真理寮は、高田馬場駅から徒歩10分のところにある。
「ねえ、姉ちゃん真理寮ってどんなとこかな?」
「寮には行ったことないけど、男子寮って感じのところなんじゃない」
「男子寮ってどんな感じなん??」
「やっぱり男子寮っていったら汗臭いんじゃないの!あとは汚いとか。」
「それってさー、現実過ぎてない?
なんかこうもっといいイメージないのかな~。こう管理人さんが綺麗な人だったりとかさあ~。めぞん一刻のようなさあ憧れるひ・・」
「ばっかね~。あんた。そんなのあるわけないでしょ。テレビや漫画のみすぎよ!み・す・ぎ!それに二人部屋って知ってるでしょ。」
「なっ。わかってるけどさ~。かすかな希望も持ちたいじゃん」
そんなこんなで真理寮のある場所についた。
「おお~!!ここか~」
僕の目の前に5階建てのビルがそびえ立っていた。
「二人部屋ってきいてたから、小さいところだと思ってたけど、結構でかいんだね」
「前の物件の事、後悔してたけど、これなら全然こっち方がいいじゃない。紹介してくれてありがとう。ねえ、姉ちゃん!」
「んっ!?違う違う。
ここは寮じゃなくて、KAMIセンターっと言って、水泳とかピアノとか、英語教室などをやっている施設なのよ。
でもおかしいな~。寮の住所もここになってるのよね。
わたしも何度かココにきたことあるけど、寮があるなんて初耳よ。」
「えっ!そうなの?」
「・・ん~、まあとりあえず受付で聞いてみましょう」
『真理寮って・・どんなところなんだろう』
ますます不安が僕を襲った。
とりあえず僕たちは、受付で聞いてみることに。
「すいません。真理寮ってココにあるって聞いたんですが・・・」
「はい、ここの五階部分にありますよ。」
ちびまる子ちゃんに登場するみぎわさんにそっくりな受付の人が応対してくれた。
「えっ!あっ!そうですか。・・いや今度、私の弟が、大学に受かりまして。寮の方で新入生募集をしている聞きまして~・・」
「ああ。寮の見学ですか?ちょっと待ってくださいね。今連絡してみます。・・」
と、みぎわさんが内線で連絡してくれた。
しかし、それにしても、子どもの手を握って玄関口から入ってくるお母さん、ロビーのベンチでくつろぐ老人を見ていると、どうやってもココに寮があるとは思えない。
『この子どもやおじいさんは寮とどんなつながりがあるんだろう。真理寮ってなんなんだ一体。。。。』
僕の不安はどんどん膨らんでいく。
「あっすいません。連絡がつきました。そのまま直接、階段で5階に上ってくだされば大丈夫です」
みぎわさんがアポをとってくれたようだ。
「あっありがとうございました」
僕は、不安を覚えつつ受付前の階段を登ろうとした。
その時、みぎわさんが
「あっ、そっちじゃないの!その階段じゃなくて、目の前の廊下の突き当たりの防火扉の向こうの南階段の五階です!!」
言われるままに突き当たりの防火扉を開けた。
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・
『非常口』???あれっ??
「あの~姉ちゃん」
「何?」
「もしかしてこれが南階段かな。」
「多分そうじゃない?」
「俺にはどうしても非常階段にしか見えないんだけど。。。」
防火扉の上には大きく「非常口」という看板があった。
「非常階段よ!これ。」
『おいーーーやっぱりかよー・・・おいおい 』
「あっだから、わたしもわからなかったんだ~。そうよね。そうよね。中の階段は4階までしかないのに、寮が5階にありますって言われたときは、ちょっとびっくりしちゃったけど・・・。これじゃわたしもわからないはずよー」
と、ちょっと姉は納得した。
「いやいや納得してないでさー。非常階段って非常事態に使うから非常階段っていうんだよね。寮っていつも非常事態なの??」
「あはは!あんた面白いこと言うわね。」
『いやいやすっごく俺まじめなんですけど・・・』
僕には面白い事をいう余裕も、笑う余裕もなかった。
「よくわかんないけど、とりあえず上ったらわかるでしょ!」
なんで非常階段の上に寮が・・・。こんなことを考えつつ僕は、階段をゆっくり上った。
この南階段と呼ばれる非常階段、じつは結構きつい。
「今、これ何階? まだ三階かよ」
この階段はスロープ状で、自分が何階にいるのかもわからなくなるぐらいにカーブが激しい階段なのである。
「は~は~は~。
やっと着いた」
そんな階段を息を切らして、5階まで上りきった。
上りきったもののしかし、そこには山手学舎という看板はない。防火扉が大きく立ちはだかっているだけだった。
「えっこれ????これが玄関のドア・・・なんだ」
防火扉が玄関のドアなんて、はじめて見た。
そして勇気をだして扉を叩いた。
シ~~ン
なんの反応もない。
ガチャ!!
『あっ開いてるっ』
しょうがないので恐る恐る扉を開けてみ・・・おっ重っ
防火扉をあけるなんて人生でそうないことだろうな・・・たぶん。。