第五話:絶対嫌!
その時、姉が、
「・・ふーんそうなんだ。あんた明日東京来るの。・・そういえば、今度、私が就職する会社も大学生入居者募集してるって言ってたな~」
「へー。そうなんだ。どんなとこ?」
もうこの時点では、住む場所は決まったと思っていたので興味本位で聞いてみた。
「実は、わたしも行ったことないからよくわからないんだけど、でもすごく家賃が安いのよ。光熱費込みで2万1千円なんだって。」
この値段に、東京に住んではいない僕でもかなり驚いた。
「えっ!2万1千円!光熱費込みで!まじっへえー東京でそんなところがあるんだ。すごいなー。」
「ちょっと待って。お母さーんっ!ねえ東京に二万1千円ですめる家があるんだって~。」
あまりのびっくりに電話口から母を呼んでみた。
「でも姉ちゃん。なんでそんなに安いの?」
「その寮は、二人部屋でトイレ・キッチン・お風呂が共同で、ご飯はでないんだって。あと留学生がいるらしいよ。」
「2人部屋??だからか~。俺は絶対やだね。いやいやいや~ダメダメっ!なんで東京までいって、知らない人と一緒にすまなきゃいけないんだよ。」
そんな話をしているとき、母がお風呂にお湯をため終え、帰ってきた。
「えっどうしたって?」
「東京で2万1千円のところがあるんだって。」
「えーすごいわね~。ちょっとかしてみなさい!・・・ 。もしもし美奈子、ほんとなの???そこは職場から近いの?
・・うんうん。そうなの~。
でも、もうタケオは住む場所、決まってるのよね。
・・・えっとね。東伏見っていう駅だったかしら。
でもそうねー今からでも変えようかしらね~。そこ家賃も安いんでしょ。」
「へえっ!!」
僕は母のその言葉にかなり焦った。
「なななっな何言ってんだよ。かーちゃん!!いやいや、絶対やだよ。留学生もいるんでしょ?俺、英語しゃべれないしさ~・・・。」
「だからいいんじゃない。いい勉強になるかもしれないじゃないの!」
「えー俺、絶対やだよ。それに二人部屋なんてあぶないよ。
変な人と一緒だったらどうするんだよ。お金が盗まれたりしたらやばいよ!そうそうお金の問題はシリアスだよまじで」
と必死の説得。
そんな時、父が参戦。
「かあさん。変な事言うのやめなさいよ。もう先方には電話してるし、明日行くんだから、変なこというんじゃないよ~。まったくもう。やめなさい!」
『おお親父~!いけいけ~ナイスフォローじゃん!!』と、僕。
「そっそうだよそう。明日行くのに変な事をいわないでよう。」
「変なことじゃないわよ~。私は善意で言ってるの。まったくもう・・。
まあでも、前から電話してるし、今度行くところはいいところなんだからしょうがないわね。
という事で美奈子。今回は縁が無かったということで。」
『いやいや、縁も何も今初めて聞いたことじゃん。フゥーそれにしてもあぶなかったなあー。でもまあ、俺とはもう関係ないからね!!!』
<現実に戻って>
「緊急事態だから、この際しょうがいんだよ~。」
「しょうがないって言ったってお前。・・キャンセルしてもいいが、一度キャンセルしたらもうここには戻れないんだぞ。お前はそれでもいいのか?
それに明日にはお前鹿児島に帰ってこないといけないんだし!
もし本当に寮にいくとしても、美奈子に電話しないといけないだろう。
まず美奈子に電話して行けるかどうか聞きてからにしない。」
「わかった。じゃあ姉ちゃんに電話してみるわ~ 」
両親への電話を切り、すぐさま姉に電話してみた。