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第44話:五十嵐の正体


ブオオオン!



ブオオオン!



ブオオオオオオン!



轟音はどんどん近づいてくる。




ブオオオオオオオオオオオオン!




後ろを振り返ると、スピードに乗った白い車が僕たちの方に近づいてくるのが見えた。





それを見た後藤田さんは、




「あっ来た来た。まさにグッドタイミング!



・・・にしても、いつ聞いてもうるさいなーあの車は。



近所迷惑なんですけど。。。」


とひと言。





ブオオオオオオオオオン!





とてつもない轟音をふりまきながら白い車は、僕たちの目の前に止まった。





そして、運転席のパワーウィンドーが開く。




ウィィィィィィン




「おはよー!」




そこには、サングラスをかけ、右手を軽くかざす男。





その男とは、僕達のお財布を寒くした張本人。




そう五十嵐寮監、その人である。





寮監とは、寮を管理・監督する人の事を言う。





真理寮は自治寮であるが、正確には財団法人ZANDが全体的な運営を行なっている。





つまり、財政面は財団法人ZANDが行い、寮内の政治・運営を学生達が行なう仕組みなのだ。





そしてこの財団法人ZANDと真理寮のパイプ役をするのが寮監と言うわけである。





しかし、五十嵐寮監が健全にそのパイプ役になっていたのかと言えば、寮生の間で不満や不安があったのも事実であった。




いずれこの不安は現実のものとなり、ある事件に繋がっていくのだが・・・。






ともあれ、今回の寮旅行には寮監と言う立場から五十嵐さんも参加する事となった。






「おはよー!お待た~!!」


と言いながら、五十嵐さんが白い車からでてきた。






『・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・





お待た~って



・・・・・・・・・・







死語だよな。



死語。。。。』



と思いつつも、僕はあえて突っ込まなかった。







「今日は宜しくお願い致します。」


と、後藤田さんと鈴木さんを中心に寮生全員で、五十嵐さんに挨拶。





「おう!こちらこそ宜しくな!



それはそうと・・・、俺が運転する車はこれ?」



五十嵐さんの指差した方向にワンボックスタイプの車が、2台とまってある。






「そうです。荷物等もあるので車2台で分乗していきます。」



と鈴木さんが説明。






それから、この旅行の企画担当でもある鈴木さんから各車両に乗るメンバーが発表された。





五十嵐さんの車には、金さん、山川さん、後藤田さん、パクさん、山田、田端の7名。




一方の鈴木さんの車には、僕、白、アリさん、三木谷さん、近藤さんの6名だ。





そしてそれぞれの車両に旅行に必要な荷物を積み込んでいったのだった。





僕も自分の荷物と夕食となる食材などの積み込みしていたのだが、



ふと、もう1台の見ると、





田端がおもむろに何か積み込もうとしているではないか。





それは布団一式。





『えっ布団?



しかも一式



なぜ???』






と、僕は戸惑いながらも田端に声をかけた。






「おいおい田端! お前なんで布団なんか持って行くわけ!?




向こうにもちゃんと布団があるって話しだぜ」







田端は答えた。






「これは車で寝るための布団。」









僕は一瞬ひるんだものの、彼の話ぶりと行動から推測するに、彼は前日から徹夜でゲーム【ゼルダの伝説】をプレイしていたのがわかった。





まあ彼の気持ちもわからないではない。





いつぞやの寮懇で【金さんのテレビ独占禁止法】が制定されたとは言うものの、現在もテレビ解放宣言にはまだまだ遠い冬の時代。






そんな中で、金さんがビデオを見ない時間は、僕や田端のようなゲーマーにとっては大変貴重な時間なのだ。




田端にとってその貴重な時間が前日からの徹夜に繋がったのであろうと思われる。





『それじゃあ眠いはずだよ。』



と僕は、先ほどの彼のイモムシスタイルにも納得がいった。







けれども、僕は、



『布団一式を使った本格的な車中でのドライブ睡眠なんて聞いた事もないけれど、




せっかくの寮旅行。



車の中で寝るなんてもったいないよ!!』



とも思ったのだった。







なぜならば旅行の楽しさの半分は旅行時の車の中と言っても過言ではないからだ。





車中での語り合いやゲーム、間食が車中での醍醐味!



ああ楽しきドライブよ~?!




これ無くして車での旅行は語れない。








『ああ、田端はすでに旅行の楽しみの半分を失っているよ。もったいない~』




と僕はこの時、田端に対して同情だけではなく、憐れみさえ感じてしまったのだった。






数時間後、僕はこの考えを完全に改めるというのに・・・・。








「それでは、目的地群馬に出発!!!」



寮長の号令の下、車は走り出した。







さあ恐怖のドライブの始まりである。



つづき。

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