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第39話:男の教訓


結局、鈴木さんのスクープした三木谷さんとアリさんとの付き合ってる疑惑は、第三者である白の証言によって完全に否定された。




まあ状況証拠ばかりで当たり前の事だが・・・・。




また、敬語の問題も僕と白の一年生の意見では参考にならないという事で、次回の定例舎生懇談会の議題という事でその場は収まった。





収まった。





・・・・収まった?





・・・・・・・・・・・・収まった~???





そんな事はない!




この問題での犠牲者が約一名。




それは



僕だ。



『あれだけ、ただただ食事をしたいが為だけに、早く帰ってきた僕を巻き込んでおいて、次回の議題??



なんなんだ!それは?


それなら最初から議題にしろ!バカヤロー』






なんだか変な問題に巻き込まれて疲れてしまった。





そんな疲れたときは、早くご飯を食べて風呂に入って寝る。





これにかぎる!






しかし、この日の僕はこんな事に巻き込まれる事は、勿論予想していなかったので、すぐできる野菜炒めの食材を買ってはいなかった。





こんなときに限って買ってきたのは、初挑戦のカレイ。



そう。



せっかく時間があるのだからと僕は男にとって難関のカレイの煮付けに初挑戦しようと思っていたのだ。



けれども今は・・・・時間がない。



今の僕には時間がないのだ。



僕のエネルギー切れも、もうまもなくだ。



そうは言っても食材はカレイしかないので野菜炒めはできない。



僕は仕方がないのでカレイの煮付けに挑戦する事にした。



しかし僕は気付くべきだったんだ。



男の初挑戦の料理は、時間的にも、精神的にも余裕があるときにやるものだと。




僕は、お腹がすきすぎて頭の思考能力が低下し、調味料を計量することなく適当に醤油とみりんを鍋にいれ、その後カレイを鍋に・・・。



『落し蓋・・・・っと』



精神的余裕の無さから、レシピのチェック項目に目を通すことなく、いかにも重そうな皿を落し蓋として、カレイの上に置いた。



そう僕はこの日まで、落し蓋の意味をその言葉通りに、【浅漬けのように重い蓋が落し蓋だ】と信じきっていたのである。



・・・・・・


・・・・・・・・・


それから十分後。



鍋の蓋を開けると、



香ばしい匂いはそこにはなく、



どことなく醤油臭く



またカレイはなんとなく黒かった。




そして、落し蓋をはずすと、そこには落し蓋の皿のあとがくっきりと刺青のように、カレイの体に残っていた。




皿に盛り付けようとすると、カレイの身がバラバラと砕かれていく。




盛り付けした後には、どんな魚かわからなくなっていた。




というより、料理が魚料理すらもわからない。




そしてそのお味はというと、、、、



「まずい。



しょっぱい。


苦い。


食べれたもんじゃない」



僕はお腹が空いていたはずなのに食が全く進まない。



そしてそんなときに限って、ご飯を大盛りにしている。



それに今日の夕食はこれしかない。


・・・・・


・・・・・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・


どうしよう





僕は選択を迫れた。



これを食べずに今日は絶食を通すのかそれとも我慢して食べて取り合えず空腹をしのぐのか。






そんなときだった。






さっき帰ってきた田端に声をかけられたのは。





「丁度、牛肉を買ってきたから一緒に食べる?」






なんという助け舟だろうか!






それに、ほとんど料理をしない田端が料理をするなんて!



しかも僕に手料理をご馳走してくれるなんて!





なんとも感動的な話ではないか!





僕も初挑戦の料理を失敗したところだし、、、、、




勿論、断る理由は何もない。





僕は感動しながら田端の料理を待った。





ジュージュージュー





肉の焼けるいい音がする。





『今日は変な騒動に巻き込まれて最悪だったし、初挑戦した料理も最悪だったけど、最後には良い事もあるもんだ』




僕は犠牲者である僕自身に同情しつつ、楽しみに田端の料理を待った。





「どうぞ!」




田端は肉を皿に盛り付けて僕の目の前に出してくれた。





「ありがとう。お腹空いてたんだよね。それじゃあいただきま~す!」




パクッ




僕は田端が焼いてくれた牛肉を口に入れた。






『んっ?




あれっ?





噛み切れない。。。





それになんだか、すごく固くてガムのようだ。』






「これ本当に牛肉だよね」

と、僕。






「そうだよ。」

と、田端。






「ちょっと牛肉のパッケージみせてくれる?」

と僕。






「いいよ。ハイッ」

と田端。







【おでん用 牛すじ】





パッケージにはそう書いてあった。





「田端って料理作るの初めてだったっけ?」





「そうだよ!初挑戦!」




・・・・・・・・・・・・・・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




【精神的・時間的余裕無き初挑戦の男料理は作る・食べるべからず】




今日僕は、男料理の教訓を知る。



つづく。

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