第24話:ガラスのハート
「あはは~それでお前、一人飲んでたかの。普通パーティの意味間違えるか~。だははっはははは~腹イテ~」
馬鹿笑いが寮中に響いた。
「そんなに笑わないでくださいよ。後藤田さ~ん。
俺本気だったんっすから。
田舎からでてきてるんですから間違うのが普通ですよ! 田端は東京に住んでるから知ってるんですよ~」
「でもだからってなー。六本木という名前できずけよ。ああー面白すぎ!」
「うっ!そんな~殺生な」
『恥ずかしい!恥ずかしすぎる!みじめだよ俺!だあああ』
先日のパーティは最悪だった。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
重低音がホール中を響く。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
音楽に合わせてスポットが当てられたホール中央にあるステージでは男女が入り乱れて、踊っている。踊っている。おどっている。おどって・・・・。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
重低音が男女の心に揺さぶる。そして心に響く。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
リズムに合わせてみんなが踊る。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
重低音が僕の心を揺さぶる。そして心に響く。
バンっ!バンっ!バンっ!、ドンっ!ドンっ!ドンっ!
リズムに合わせて、ホールの隅っこへ。。。がくっ
『あーなんで、俺こんなところに来たんだろ~。早く気づけよ俺!
パーティはパーティでも、クラブのパーティかよ。』
これほど自分を恨んだことはなかった。
僕は一人だった。
『姉さん、今はじめて東京の怖さを知りました。こわい、恐ろしい、あああ~~。。。。。』
ポカーン、
あまりのショックにボーっとしてきた。
『いかん、いかん。早くこの場の状況に慣れなければ』
すぐに我に返った。
そんなときだった。
「あっどうしたんですか?」
「えっ?」
さっき場所の案内をしてくれた田端の後輩がグラス片手に話しかけてきたのだ。
「いやー。別に・・・。」
僕は、声を低めにして答えた。
『言えない。絶対言えない。。
パーティがパーティ違いでした!あはは~、
なんて事を言えるはずがない。
とりあえずここは適当に話しを合わせ、どっか言ってもらおう』
「えっえ~それにしても、めちゃくちゃ人がいますね~」
僕は平静を装ってさりげなく話題変えた。
「そりゃ~パーティですからね~。」
持っていたグラスを口元に持っていきながら彼は言った。
グサっ
僕の心に流鏑馬の矢が的中した音だった。
うっ!僕はとっさに右手を胸にあてた。
『痛い、いたすぎる。
姉さん、僕はこの痛みに耐えられそうにありません。
もう無理みたいです。さっさようなら~』
しかし次の言葉が僕を変えたのだった。
「それにしても、もう女の子決めました?」
「へえ??」
目を見開いて僕は、彼を見た。
「いや。やだなー何言ってるんですか~?
パーティと言えば、女の子じゃないですか。
お・ん・な・の・こっ!」
メラメラメラメラ
メラメラメラメラ
メラメラメラメラ
その言葉を聴いて、僕の体中が燃えてきた。
僕の体から熱き炎のオーラがでてきたのだ。
「いやー僕は、あそこのテーブルにいる女の子をターゲットにしようと思うんですけど、どうですかね。
タケオさん?タケオサさ、、、?」
『そうだ。そうじゃないか!パーティとはそういう場所じゃないか!なんで気づかなかったんだよ俺』
僕は不死鳥の如く立ち上がった。
僕は復活したのだ。
「田端の後輩さん、ありがとう!感謝するぜい」
僕は彼の肩に手をおき、言った。
「へえっ??はっはあ~」
彼は、首をかしげていた。
しかし僕はそんな事は気にせず、グラスをもって出動したのだった。
出動したのだった。
出動したのだった。
出動したの、、、、だ。
出動し、、、、、、
・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
『だあー俺、
ナンパなんてしたことなかったんだ~!!!!
ナンパの仕方がわからねーうおおおおー』
頭を抱えてしまった僕。
『いやっ!!!でもここでひるむわけにはいかない。もう後戻りはできなんだよ俺。』
そう思いながら僕は、周りを見渡した。
『えっとどうしようかな~~。・・・・・・・・・・・あっ!よしっ彼女にしよう』
僕の目の前に、白い椅子に座っている20歳前後の女性がいた。
僕は、彼女に近づくために一歩一歩前進。
そんなとき、彼女はバックからたばこを取り出し、ライターで火をつけ、タバコを吸いだした。
『うっ!たばこ吸ってるよ、こいつ!
でっでもそんなことを今は言ってられない!!』
勇気をもって僕は彼女に近づいた。
しかし、彼女に近づくにつれてどんどん緊張が増していく。
『ウッ苦しい』
緊張がピークに達する寸前だった。
そして彼女の前に立った。
「あっあの~おっおひとりですか?」
「はああ??」
その彼女の一声に僕の緊張はピークに達し、心臓はバクバクものだった。
「いっいやー、ちょっと話しませんか。」
「なにい??」
全く言葉にならない。
いや言葉がでないのだ。
「えっえっと、どっどこから来たんですか?」
やっとのことで次の言葉がでた。
緊張している僕を、彼女は横目で見ながらもこう言った。
「*****からよ」
「えっ??」
周りの音がうるさすぎてなにも聞こえなかった。
「*****よ」
「はああ??」
会話のきっかけである出身の地を聞く質問が、全くの裏目にでた瞬間だった。
また僕もいつもの癖がでてしまい、なんともむかつく聞き返しをしてしまったのだ。
「なに馬鹿にしてんの?」
彼女はたばこの煙を鼻からだしながら言った。
「いやーそんなつもりはないんだけど、そっそう俺は鹿児島から来てるんだよ、えっとそれでね、それでね・・・・」
僕は必死になって、彼女との接点を探そうと、自分の身の上話をした。
けれども、彼女はいかにもつまんなそうな顔をし、鼻からたばこの煙を出し続ける始末。
「それで?なんか私に用?」
彼女がついに切れた。
「えっえ~」
僕の頭は真っ白になってしまう。
「もういいからあっちにいってよ」
彼女はシッシッというジェスチャーを交えながら僕にそう言った。
「はっは~。えっ?えっ?。。。」
もう僕はどうしていいかわからない。
そしてわからないまま彼女の前に立っていると
「いいわ。そこどいて。」
彼女は自分の席から立ち上がり、グラスをもってホールの向こう側に行ってしまった。
彼女は行ってしまった。。
パリーン!
とても良い音がした。
僕のグラスのハートは見事に砕け散ったのだ。
そして、また先ほどのホールの隅っこへ。
『姉さん、もう戻れそうにないです。みんなこれまでありがとう。。さようなら~~~~~』
・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・・・
「だっははは~。。それでお前、女の子の誰も捕まえて来れなくて帰ってきたの??あはは~」
後藤田さんの馬鹿笑いが学舎中に響く。
「そっそんなの無理ですよ。初めてなんですから」
僕は顔を真っ赤にした。
「いやいやわりー、わりー。でもおもしろすぎるぜ。それ」
後藤田さんはたばこを吸いながら言った。
「でもまあーいいですよ。そんな事は忘れて、ご飯食べます!さあ、たーべよっと」
僕は先ほど自分の作った野菜炒めに箸を入れた。
そんなとき、ルームメイトでめがねをかけた背の高い鈴木さんが談話室に入ってきた。
「それってお前の食事か??」
「えっそうですけど。。なんでですか?」
「いやー犬の食事みたいだな。。ソレっ」
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
パリーン。。
僕のハートが砕ける音と、箸が落ちる音が響いた。
だああああああああ、もうやめてやるーこの寮。。。。。ぜっていこんな寮やめてやるーーー。
つづく。




