第二話:家を探さないと!
とはいっても、最初から真理寮に入ろうと思ったわけではない。
実は住む場所は決まっていた。
その場所は西武新宿沿線で駅から徒歩5分、築5年、2K、フローリング、まかない付きで6万円。
誰もが喉から手がでるような物件だ。
僕もこの物件の事を聞いて
『これからの大学生活4年間を満喫するための新しい基地になるんだ!』
と心をときめかせていた。
今日はまさしくそんな心をときめかせていた物件の契約日。
僕は、はるばる鹿児島からこの日の為に1人上京した。
「ああ早く、大学生活を満喫したい!バイトもして。彼女も作って・・・。そんでもって俺の部屋が愛の巣になったりしちゃったりて。あははは」
と妄想激しい将来を夢みながら、その物件の管理人さんの家の戸を叩いた。
ピンポーン。
そしてギギギギ。ドアが開いた。
「こんにちは。今日はよろしくお願いします。」
頭をかきながら少し目線を下にずらし、一礼をした。
「ああ、あなたがここを希望している人ですね。どうぞどうぞ。遠かったでしょう」
背が高くてフランス人の体に日本人という型をはめたような管理人と学生風な男の人が僕を迎えてくれた。
「いえいえ、すいません。ちょっと迷ってしまいました。。。」
こう、平謝りをする僕に、
「そうだよね。ちょっとここはわかりにくかったかもね。でもすぐ慣れるよ。」
と優しい声で答えてくれた。
『優しい人だ!』と思いつつ、それから少し世間話をすること5分、
「そうだ、これから住む場所を見てみる?」
「はい!是非お願いします。」
『おっ来た来たーー。僕の夢を実現するための第1歩。愛の巣になるかもしれない僕の部屋を早速拝見・拝見っ』
僕は管理人さんに連れられて、白い2階建ての建物に案内された。
「これが君が住むことになる建物だよ。」
僕の妄想と日光が手助けしたのだろう、その白い建物がとても輝かしく見えた。
『これが俺の家になるのかーー』
戸を開けると一面にフローリングが広がり、まだ新築特有の匂いが漂ってきそうな清潔感たっぷりな部屋だった。
勿論冷暖房は完備され、トイレ、シャワー室もある。
そのシャワー室は全面ガラス張り。
ここは日本?それとも異国?というような部屋の作りでクローゼットもちゃんと設備されていた。
僕のこれからの大学生活を占う上で最高な場所だった。
めぞん一刻に出てくる素敵な女性の管理人さんではないけれど、とても信頼のおけそうな管理人さんだった。
「どう?大体間取りはわかったかな?」
「はい、よくわかりました。住むとなったら、いつから住めるんでしょうか?」
僕の早まる気持ちが言葉となった。
「あせらなくても大丈夫だよ。それじゃあ管理人室で契約内容を確認して手続きしようか?」
「はい!」
僕の胸は高鳴った。
『とうとうこの時が来たんだ。
憧れていた東京での一人暮らし、大学生活、そして彼女。
ああ大学生バンザイ! 』
「じゃあこれが契約内容ね。それからまかないがでるけど、毎日2回だよ。昼は大学に行くからだろうから昼は学食にするといい。土曜日も食事は2回だからその時はちょっときついと思うけど・・・。」
『いいよ。いいよ。なんでもいいよ。
そんな事はこれからの輝かしい未来に比べたら、ミジンコなんかよりも小さいよ・小さいよ。
うん うん。』
僕は、菩薩のような微笑みを浮かべながら、契約内容を聞いていた。
管理人さんのあの言葉を聞くまでは。。。