第17話:視線の呪い
なんと金さんが帰ってきてしまった。。。
「クンっ! なにやってんの?」
金さんはすかさず僕に質問してきた。
「えっ??あっあーファイナルファンタジーというゲームですよ」
「ふ~ん。面白い?クンっ!」
「ハイ」
「いつ買ったの?クンっ!」
「えっ?えーと最近ですね」
「ふ~ん」
・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
会話が続かない。
というか金さんの質問は普通なのだが、何か圧力を感じてしまうのだった。
『とっとにかく、ここは少し、会話をして乗り切らなければ』
と思い、
僕は、
「あの~。金さんはこれからどっかにいかないんですか?」
あっ!!
あっ!!
ストレートすぎる。
つい本音がでてしまった。
『俺は何を言っているんだ~。なんという直球勝負的な質問をしているんだ。金さんどっかに言ってよといっているのがバレバレじゃん。。。』
「クンっ!今帰ってきたんだから、いくわけないじゃない。」
「あはは、、、そうですよね。今帰ってきたばっかりですもんのね。あはははhhh」
うっ!
・・・・・・
・・・・・・・次の質問が浮かばない。
どうしよう。
そのときだった。
「タケオ~。今日また、クンっ!新しいビデオをクンっ!借りてきたよ」
と金さんの何気ない一言。
『この質問は何を意味するのだろう。俺にゲームをやめさせて、ビデオ鑑賞をしたいのだろうか?』
と思いつつ僕は、
「えっそうなんですか~。それは面白そうですね、、、、あははは」
僕は顔を引きつかせながらも精一杯の愛想笑いをした。
それからどれくらい時間が経っただろうか。
僕はゲームを再開したもののいつまでも僕のうしろに視線を感じるのだった。
視線の向こうには金さんがいたのだ。
この無言の圧力はかなりきつかった。
ゲームはやっているのだが、全く頭に入ってこない。
僕はこの圧力に耐えられなくなり、
「金さん、ビデオ見ますか?いいですよ。ビデオみても」
と切り出した。
しかし、以外にも金さんは、
「いいよ。クンっ!今日はゲームやりな。」
といいながらは、こちらに笑顔を向ける。
『えっ??なぜに笑顔??』
そのとき、背筋に悪寒が走った。
不気味だ。不気味すぎる。
これまで、ゲームの質問も聞いたことがなく、ビデオ鑑賞以外にはほとんど談話室に顔ださないあの金さんがビデオ鑑賞を断るなんて、そしてましてや金さんが笑顔だなんて、、、あり得ない。
そんな不気味な金さんから「ゲームやりな!クンっ!」と言われたら、
やめたくてもゲームをやめることができなかったのは言うまでもない。
金さんは、それから自分の部屋と談話室を行ったり来たり。
そのたびに僕は背中に強力な視線を感じ、ゲームに集中することができなかった。
そして、時間が過ぎていき、朝になってしまった。
朝日がとても眩しかった。
というより痛かった。
『あー朝だ~。昨日の、あの俺の葛藤はなんだったんだろう。。』
本来ならば清々しい朝を迎えるはずの僕だったのに、今の僕は疲弊しきっている。
徹夜と金さんの呪いというべき視線にやられて。
そして僕は言うまでもなく、その疲弊しきってしまった体で入学式に臨むこととなるのである。