第12話:最初の試練
三月の最後の週だったろうか、鹿児島の実家を離れて東京行きの飛行機に乗り、羽田空港に着いた。
「あーこれから憧れていた東京での生活がはじまるのか~」
僕の心はとても晴れやかだった。
そして心高々にモノレールに乗り、電車を乗り継ぎ高田馬場に降り立った。
そしてあの面接をしたあの寮へ。
ハーッ
ハーッ
ハーッ
ハーッ
ハーッ
階段キツっ!
心が晴れやかだったのもつかの間、重い荷物を背負いながらの階段はかなりつらかった。。。しかもこの階段・・・手すりがない。
『なんだよこれ。なんで五階なのにエレベーターないんだココ。
それにここの螺旋階段急すぎ。マジで。荷物鹿児島から全部送ればよかった。。』
息を切らせながら、そしてやっとの事で5階へ。
僕は厚い防火扉である玄関の扉を開けた。
「こんにちはーーーーーーーーー」
シーーーーーーーーーーーーーーン
案の定、返事はなかった。
『またかよ!!』
あの面接のことが頭をよぎった。
「あの~すいませーん。こんにちはー。あの~今度ここに入ることになりましたタケオと言いますが、、、、」
そんなとき奥から声がした。
「いいよ~。勝手に入っちゃって」
「失礼しま~す」
と僕は靴を脱ぎ、そしてあの面接をやった談話室に入った。
そこにはプレステをやっている人がひとり。
「おーお前が今度入ってきた1年生か!」
「はいっ!タケオと言います。よろしくお願いします。」
「おう。よろしくな。俺はこの前の面接にでれなかったんが、俺は大学4年で後藤田って言うんだ。。。。。
そう言えば、もう一人1年生がいるぜ。白っ白~ちょっとこっちにこ・・」
その言葉が終わる前に僕は
「後藤田先輩っ!!それはそうと、今やっているのはプレステですか?」
と質問をしていた。
僕にとって自己紹介なんかどうでもよかった。
僕はプレイステーションに眼を輝かせた。
「おっお前もゲームとか好きなの?」
「はい!プレステはやったことがないので」
「あ~そっか~。
あ~あ。
それじゃあ、これからはテレビとゲームの争奪戦がはじまるな~」
「えっ?」と僕。
「あっ、
お前は聞いてないの?
テレビはこの寮に一台しか置いちゃいけないし、順位があるんだよ。
まずテレビ番組を見る人が最優先、次がビデオ、そして最後がゲームだ。」
「え~本当ですか?」
『うおーマジっ!!聞いてねーぞー。見学に来たとき俺、金さんに、
〔〔「寮でゲームやる人っておおいですか?」
「いや、クンっ!今はほとんどいないね。クンっ!、、、、、、、そうだねー。
でも最近は、クンっ!みんな忙しくてテレビを見る人も少ないから、クンっ!大丈夫だと思うよ〕〕by 金}
って言ってたよな。確か。
あの人、酔った勢いで説明してたんじゃねーか?』
心の中で僕は不安になってきた。
実はこの前の金さんの説明はすべて勢いなのではないかということに。
そう思うともっともっと不安になってきた。
「そうそう、最近はテレビを独占している人がいるから、ゲームはむずかしいんじゃない?俺もこれひさしぶりだし」
「あの~その独占している人って?」
「金っていう留学生だよ。」
もっともっともっと、不安になってきた。
『またまた、おめーかよ』。
再び金さんにやられてしまった気分の僕。
『これからどうしようかな~』
そんなとき、廊下の向こうから走ってくる足音が聞こえてきた。
タタタタタタタタタタタタ。
「ナンデスカー。」
40代のおっさんが着るような白い下着を着、黒い短パンをはいた青年が談話室に入ってきたのだった。
つづく。