表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

93/173

93.プランを変更いたします




 翌日から、仕事の合間を見つけては侍女や侍従に聞き込みをして回りました。

 ……結果は芳しくありません。

 フィーの悪い噂を聞き出し、そこから裏の顔を手繰り寄せるつもりだったのですが。



「フィーお嬢様はセイレンケッパクを絵に描いたような方だからね!」



 これは侍従に聞き込み中のところへ割り込んできたネリの言葉。



「毎朝の礼拝は欠かさない、旦那様と奥様の言いつけは必ず守る、週に一度は孤児院の手伝いに行く、他にもいろいろ……。とにかくすごい方なんだ!」


「そうそう」



 若い侍従も笑顔でうなずきます。



「社交界にデビューしてからも浮いた噂は一切なし。フィーお嬢様のようにお淑やかで純真な女性なんて、階下には絶対いないよなぁ」


「そりゃそーよ! あたしたちとは生まれも育ちもぜんぜん違うんだから」



 ふんす、とネリが自慢げに鼻を鳴らします。

 侍従はお手上げだというふうにこちらを見て、



「ところでローザちゃんだっけ? 今度の休み、俺と遊びに行かない? いい店知ってるんだけど」



 などと言いながら私の肩に腕を回そうとします。

 しかし避けるまでもなく、ネリがその腕を一瞬で叩き落としました。



「いでっ!」


「ローザに気安く触らないでくれる⁉」


「べ、別にいいだろ。お前のもんじゃあるまいし」


「だーめ! あんた、新人にすぐ手出すんだから!」


「人聞きの悪いこと言うなよ!」



 やいやい言いはじめる彼らを置いて、私は一人そっと抜け出します。

 ……完璧な人間などいるはずない。フィーにも何か欠点があるはず。

 ですが、このままでは埒があきません。

 フィーの父であるヴィクター卿が戻るまでに決着をつけなければ。もうこれ以上、お兄様との結婚話を進ませるわけにはいかないのです。



『本当に、私の願いを叶えてくださるのですね?』



 フィーの明るい声音が耳によみがえり、私は歯を食いしばりました。

 ──絶対に。

 あなたにお兄様を渡したりしない。






「あいつの弱点?」



 邸宅を囲む広大な庭。

 その一角でゼトと落ち合いました。

 お兄様とフィーの結婚を阻止するべく手を結んだ私たちですが、人目につく場所で会話するわけにはいきません。他の使用人、特にネリに見られたら、不審に思われてしまうでしょうから。



「ええ。あなたならフィーの弱点を知っているでしょう?」


「知らん」



 ゼトが嫌そうな顔で即答します。



「本当に? よく考えましたか? あるでしょう? 何かひとつくらい?」


「むっ……?」



 問い詰められて視線を漂わせ、それから「ああ」とうなずき、



「あいつは猫に弱い」


「猫?」


「肉球を見ると触らずにはいられないらしい。口では『神鳥派として鳥を愛でなければ』とか言いながら、野良猫を見るとすっ飛んでって餌をやってるな」


「…………」



 大真面目に語るゼトに、私は盛大なため息を漏らしました。



「……使えない男……」


「今なんつった?」



 こめかみのあたりを震わせつつ、ゼトは咳払いします。



「貴様の計画には無理がある。あいつの善人ぶりは生まれつきだ。婚約破棄につながるような欠点など見つからんぞ」


「そうですね。彼女に惚れているあなたに聞いたのが間違いでした」


「……ッ、じゃあ貴様の兄貴の弱点を言ってみろよ!」


「お兄様に弱点なんてあるわけないじゃないですか」



 即答し、もう一つの案に考えを巡らせます。

 あまり取りたい手段ではありませんが──



「わかりました。フィーのスキャンダルを見つけるのは一旦保留にします。その代わり……」



 さっと顔を上げ、私は事務的な口調で告げました。



「あなたには、フィーと駆け落ちをしていただきます」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
おまえ!おまえなぁ!!⊂(´・o・⊂;)(•ㅁ•́*)✧
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ