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76.さっそく会議に乗り込みます




 私たちが入っていく前から、広間では鋭い声が響いていました。



「もう猶予はないわ!」



 きりきりと高く引き絞られた──

 ニーナ=シルバスティンの声。



「今すぐに! 領主の交代を行うべきよ!」



 それに対し、臣下たちの困惑した声が聞こえます。



「しかし、ニーナ様……!」


「時期尚早では……」


「何が早いものですか!」



 叱咤するニーナ。



「お前たちがそうやって意見を左右しているせいで遅れたのです。もっと早く皇帝陛下に上奏していれば……もっと強い領主が治めていれば……! いいこと? 今回の件はお前たちにも責任があるのですよ!」



 どよめく議場。

 混乱した空気の中にすたすた入っていく私とエリシャに、振り向いた諸侯たちはみな目を丸くしました。気にせず歩を進めると、向こうも黙って道を開けます。

 ぽっかりと空いた道の先に──

 興奮で顔を真っ赤に染めたニーナが立っていました。



「ああ、フラウ……!」



 私の姿を見るや、彼女は全身をわななかせながら歩み寄ってきました。



「昨夜のこと、フィル殿から聞きました。ティルトを守ってくれたそうですね。あなたも無事で本当によかった」


「叔母上」


「聞いてちょうだい、フラウ。やっぱり《白銀》を継ぐべきなのはあなたよ。ティルトではだめ。あなたの力で、強いシルバスティンを取り戻して!」


「叔母上」


「暗殺者が現れたのも、弱っているこの家を完全に潰そうという企みに違いないわ。でも、フィオナ姉様の娘であるあなたなら──」


「叔母上」



 平然と繰り返して、ようやくニーナが口を閉じました。

 彼女の顔は赤く浮腫んで、いつもより小さく見える両目はギラギラと光っています。まるで泣き疲れたような、それでいて怒り狂っているような。



「落ち着いてください。ただでさえ城内は混乱しているのでしょう」


「それはそうだけれど──」


「それに、暗殺者の目的は私に《白銀》を継がせることかもしれないのですよ」


「………なんですって?」



 私の言葉にニーナだけでなく、周囲の者たちも動揺してざわめきました。



「ティルトが死ねば、《白銀》の直系子孫は私だけになる。陛下はさぞ憐れむでしょう。婚約取りやめにも同意なさるでしょうね。とすれば、私とユリアス殿下が結婚することを望まない何者かが今回の暗殺を企てた──そうは考えられませんか?」


「うんうん、確かにぃ」



 隣でエリシャが大きくうなずき、



「……むむっ……」


「言われてみれば……」



 つられるように諸侯たちもそんな呟きを漏らします。



「それがどうしたというの?」



 頑なな声でニーナは反駁します。



「相手の思う壺だとでも? そんなもの、わたくしは一向に構いません。重要なのはこのシルバスティンを守ること。そしてそのために、フラウ。あなたを迎え入れることなのよ」


「もう、なんですか、それ……」



 と──

 ふるふる肩を震わせ、声を上げたのはエリシャでした。



「さっきからフラウちゃんに後継げ跡継げってそればっかり! ティルト様の意志はどうなの? ニーナ様の言い分だけで、ティルト様がどう思っているかがぜんっぜん出てこないんですけど⁉」


「あの子はまだ子供よ!」


「子供にだって意見があるとは思わないの? それに、今も閉じ込めたままなんでしょ? 当主様を無理やり幽閉したうえで交代させようだなんて、そんなの謀反もいいところじゃない!」


「なっ……このわたくしを謀反人呼ばわりするつもり⁉」


「それじゃどー違うのか説明してください!」


「…………エリシャ」



 私はそっとエリシャの肩に手を添えました。



「フラウちゃんっ……!」


「ありがとう。従弟のために怒ってくれて。でも心配しないで」



 言いながら、広間の入り口を示します。

 開け放たれた大扉。

 その前に立つ小さな人影。



「彼は……いつまでも母親に閉じ込められているような子供じゃないから」




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