シガナキモノガタリ
「♪~」
きらきらと輝く光に照らされる闇夜の中、灯り一つない高層ビルの屋上に、一人の少年が街を見下ろしている。
黒いフードを被っている少年は、これからはじまる革命に、はたまた今までの変えなければならない惨な過去に、笑みを浮かべる。
Prrrrrrrrr
少年の鼻歌を遮るように携帯電話の着信音が鳴り響いた。
「はーい」
「そろそろだ」
「OK」
これから始まるある男の奪還作戦の合図だ。
何が何だがみんなはわかっていないだろうが、まあ聞いてくれ、これはきっとみんなの為になるだろう。
否定的な人がいるとしたら、反対派がいるとしたら、それは馬鹿か老○くらいだろう。そんな奴らに耳を貸し、賛同なんてするから、若者にとって不公平になるんだ。まあ今年の投票率は戦後、下から三番目なんて言っちゃあいるが、最下位は二年前で、2位は去年だという、簡単に情報を得れるからといってメディアに頼りきっていると、案外ネガティブな方に飲まれたりするんだぜ。そんなことは置いといて、そんな悲哀に満ちた、残酷で、悲惨な、奇跡的で、夢に溢れた世の中の話を語らせていただくとしようか。
「この欲望に埋もれた最高な世界に向けて」
そう言い残すと、少年はビルから飛び降り、街に消えていった。