08 ハッピーエンドですわッ
夜明けとともにトールが操る馬車が王城へ駆け込んだ。すでに今か今かと待ち望んでいた皇帝一同はトールの馬車へ集まってくる。
「どうであった!?」
「やったか!?」
口ぐちに問い掛けるその言葉はトールの病み始めた精神を殊更に抉っていった。
「はい……」
馬車の荷台には人が四人詰まれていた。その内の三人は男で『デルフィニウムの花』のパーティメンバーである。そして最後の一人はマリーであった。四人ともぐっすりと眠っており目が覚める気配はない。
「よ、よしッ!今の内に処刑してしまうのじゃ!」
それを聞いてトールはいよいよ焦る。馬車を走らせている間、ずっと考えていた。
このままでいいのか。相手はまだ大人になり切れていない少女である。やり直す機会も与えられずに処刑されてよいものか。そもそもの原因は公爵令嬢があそこまでエスカレートする前に大人達がきちんと諫めていればこのような事態にならずに済んだのではないかと。
聞けば幼いころから勉強が嫌いで外に出ては冒険者の真似事をしていたという。きちんとした教育をしてこなかった親や教師に問題はなかったのか。
そしてトールは思わず皇帝陛下に直接進言をしていた。
「陛下!お、お待ちくださいませ!出来れば最後にチャンスを頂きたく御座いますッ!」
「ぶ、無礼であろう!貴様如きが直接陛下に物申すとはッ!!」
当然トールの父親からは叱責が飛んでくる。そうでなければ他の大臣達から叱られていただろう。トールの為にもまずは父親からの援護射撃である。
「……良い。なんじゃ?」
だが、皇帝は寛容にも何がしたいのか聞いてみようという気になった。これだけの偉業をなしたのだ。何を知り、何を考えたのか気になった。
「出来れば私に彼女らの再教育をさせて頂きたく!そこまで長い時間はとりません。ですが、これまで碌に教育を受けていなかった彼女達に先人達の偉業を教え、考えを改める機会を与えて頂けるよう!なにとぞお願いいたします!」
そういうやいなやトールは土下座した。馬車の荷台がコトリと音を鳴らした気がしたが土下座に注目していたせいで誰にも気づかれることはなかった。
「しかしのぉ、これまで幾人もがマリーに教育を施した。だが何も変わらなかったぞ?お前には変えられるのか?」
「策が御座います!」
そういうとトールは懐からタブレットを取り出した。
「ここに収められた書物には我が国の過去の偉人の人生が刻まれて御座います!文字数にして約14万文字の和風ダークファンタジー風味な冒険物語に御座います!!シリアスに、ときにはアレな感じに綴られたこの冒険譚を聞けばマリー様もきっと改心されるはずで御座います!さらに付け加えるならばハーレムもなく!もふもふもないッ!チートは……ッ!そこはまあ、なんですがいかがでしょうか!?」
この作者ページの作品一覧に載っているヤツのことである。なんなら今からそのページへ飛んで読みに行っても構わないし、星に感想にブクマに色々しても問題ないであろう。
そんな時だ。
「私も読みたいですわッ!ぜひ教えてくださいませッ!」
馬車の荷台から声があがった。マリーである。マリーが初めて自分から書物を所望して勉強の意思を高らかに宣言したのである。
「おお!マリーよ。そなたも遂に学ぶ気になったか。そうか……そうであるならば仕方ないな。トールよ。見事にマリーをその物語を読み聞かせて更生させるのじゃ。ワシから言えるのはそれだけじゃよ……」
「はっ!畏まりまして御座います!」
「はやく読みたいですわッ!」
こうして二人は一緒に過去の偉人伝を読みながら仲を深めていくのだった。
実はただの宣伝作品だったのさッ!!
一応同じ世界の未来の話としてこの作品を書きました。
あちらの作品は最初数話は重苦しいですが、最終的に似たようなノリでストレスなく読めるようになってます。
でもこの作品ほどコメディ寄りではないです。ちゃんとシリアスしていますが所詮同じ作者の作品ですので良ければそちらも手に取って下されば幸いです。
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