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06 裏切りますわッ

「どうぞお座り下さいですわッ」


 トールはおずおずとマリーから少し距離を空けてベッドに腰かけた。与えられた任務を考えれば下策ではあるがそもそも乗り気ではないのだから仕方ない。だがマリーすぐに距離を詰めてきた。


 ふわっと女の香りがトールの鼻孔をくすぐる。夏場なのでマリーが着ている服は薄手でであり、なんなら胸元まできっちり強調するようなデザインだ。トールの肩越しにまで顔を近づけてきたマリーと顔を合わせれば自然とそちらも目に入ってしまう絶妙なポジション取りである。


 そんなマリーからトールは少し視線を外した。


「それでは陛下からのお言葉をお伝えします。陛下はマリー様との和睦を望んでおられます。また条件として--」


「トールさん。お話しする時はキチンと相手の目を見てするものですわッ!」


 そう言ってトールの顔を無理やり自分に向けさせる。とても痛いとはトールの心中の叫びだ。


「……申し訳ありません。なにぶんマリー様の魅力……に、当てられてしまいまして直視かなわなかった事をお許しくださいませ」


「ッ……!す、直ぐに慣れますので問題ございませんわッ!」


 一瞬の動揺を表すもその目はまっすぐとトールを見つめており手を絡めてくる。だがトールにとっては小動物に狙いを定めた捕食者の動きそのものに映った。ドキッではなくゾッとする。


「それで、なのですが、その条件と言いますのが一つ御座います」


「まあ何でしょうか!気になりますわッ!」


 こうなると非常に伝えずらい。なにしろさっきの三人を処刑してしましょうという話である。マリーの怒りに火が付けばこのまま握り潰されてしまうのは自明であった。


「まず、陛下のお立場としては追放を言い渡した罪状を引っ込める事は叶わない……という前提がございます。ですが、恩赦という形でこれまでの功績に報いようと考えておられます。しかしその場合ですと恩赦の対象は公爵令嬢であるマリー様のみ……となってしまいます」


 マリーからの圧力が増した気がした。掴まれた腕が悲鳴を上げそうになる。


「あら……わたくしに仲間を裏切ろとおっしゃるのですね?それはとても……悲しい事ですわッ!」


「はい……。それは重々承知しておりますがマリー様にとって彼等は何者にも代え難い者達でしょうか?苦楽を共にしたといっても所詮は冒険者、リスクのある任務でいつ命を落としても不思議はないでしょう。マリー様ほど冒険者として大成した方であればその辺りの御覚悟も出来てはいないでしょうか?」


「勿論!わたくしほどの冒険者ともなれば覚悟はありますわッ!……ですが仲間が全員いなくなれば今後の活動にも影響はでてしまいましょう。その辺りお考えがあれば……聞きたいですわッ!」


 離さないと言わんばかりに腕を絡めて上気した顔を近づけてくる。すでに互いの吐息以外が感じられない程度に近づいている。


「………………陛下からは、何かあれば私がサポートするように仰せつかっております」


「ッ……!それなら良いですわッ!」


 とりあえずの難所は無事クリアとなってほっとする。


「それではそろそろ三人が戻ってきますので食事に睡眠薬を混ぜておきましょう。眠ったら縛って馬車に積んでおきます」


 もちろんマリーの食事にも睡眠薬を大量に入れる気でいる。こうして事前にマリーと相談した事でまさか自分の食事にまで睡眠薬を盛られるとは思っていない様子だ。


 一通りの仕込みをコッソリ終えると三人がものすごい勢いで丁度帰ってきた。


「マ、マリーお嬢様ッ!ご無事ですか!?」


「オイッ!変な事されてねえだろうなッ!?」


「僕たちこの三十分が凄く辛かったんだよ……マリーちゃんも同じ気持ちだよね……?」


わたくしなら大丈夫ですわッ!!それから今日は遅いからトールさんも一緒に夕食ですわッ!」


 三人はまあ食事だけならいいかと食事準備を開始した。そして睡眠薬を盛られたドレッシングを大量にかけたサラダを食べた三人は眠りに落ちていった。


 そしてマリーのグラスに注がれたワインにはそれ以上の睡眠薬が盛られていたにもかかわらず依然として元気なマリーの姿があった。


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