Episode 5
桜希視点
兄様たちは現在進行形でどちらが私にお昼を食べさせるかの話し合い?をしている。
正直私は自分で食べたい。日々世話を焼かれ、羞恥心で死にそうになっているので私は頑張って。2歳の発達していない手を使って木製のスプーンを持てるようになったのだ!
けれどその頑張りもあまり報われず、家族で食べる夕食では父様も母様もダイニングの席順無視で私の世話を焼く。美形の両親からのあーんは美の暴力だ。たとえ私の両親であっても至近距離で食らえばかなりのダメージになる。
そんなことを考えながら目の前に並んでいる私のお昼を見つめた。本当ならば兄弟喧嘩を放っておいて食べ始めるのだが兄様たちはスプーンの取り合いをしながら話し合い?をしているので食べられない。悲しい。お腹すいた。
「おなかすいた」
「「あ」」
「ごめんね。桜希。」
「ごめん」
「ううん。だいじょうぶ」
「にいさまたちもいっしょにたべよ?」
「「かわ」」
「?」
「そしたらさきはじぶんひとりでたべられるでしょ?」
「「え?」」
「にいさまたち、どうしたの?」
「桜希は兄様たちが嫌い?」
「ううん。大好きだけど。なんで?」
「桜希、兄様たち交代交代にするから。それならいいよね?」
「うんうん」
何がいいんだ!?兄様よ!拓海兄様は今更な気がするけど隼人兄様まで頷かないでくれ!
交代交代にするって。何故だ?そんなにも妹の心を殺したいのか!?
二人の兄様は顔面が驚くほど整っているのだ。両親と等しく美の頂点にいるのではないかというほどに。
「兄さま、わたしじぶんでたべれるようにれんしゅうしたの」
「じぶんひとりでたべたい。ダメ?」
「「うっ」」
「分かったよ。じゃあ今日一緒にお茶してね!」
「うん!」
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桜希はルンルンでお昼を食べ始め、兄たちの可哀想な様なんて目にも入らなかった。
兄たちは妹に拒否され、目に入れても痛くないほど可愛がっている妹が日々成長しているのが嬉しい反面寂しいのだった。
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サラ視点
今日は息子たちが家に来ると旦那たちから聞いていた。娘の桜希は自分の娘とは思えないほどの可愛さで生まれた時は天使だと思った。女の子は成長するごとに我が儘になる。私は普通の女の子のように育てられなかったので娘には思い切り甘えてもらおうと健一さんと二人で甘やかしている。
けれど娘はやはり健一さんに似たのか頭がよく普通の子よりも物わかりがいい。息子二人の2歳の時を比較しても桜希は語彙力が2歳とは思えないほどに発達している。我が儘を言うどころか私たち夫婦の我が儘を聞いてもらっているような雰囲気になることがよくある。
例えば桜希が絵本を読んでいて、私たちが様子見している時は桜希がこちらの心境を読み取ってか、絵本読んで?と可愛らしくおねだりしてくれる。そんな可愛らしいおねだりを見たくてついつい桜希の部屋に足が向いてしまう。
現に今も息子たちと仲良くお話ししている娘の姿を眺めている。私のそばに控えている執事たちも考えていることは同じようで、ビデオカメラを用意していた。桜希には教えていないけれど、桜希のビデオを撮りためてコレクションにしている。
今夜は健一さんと一緒に晩酌しながらビデオ観賞会でもしようかしら。
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