Episode 4
この世界は現代社会であると同時に桜希の前世同様魔力のある世界であった。人々は皆魔力をもって生まれる。階級制度こそないが上流階級の人間の魔力の方が多い傾向にあった。桜希の両親も共に強い魔力をもっていた。桜希はまだ気付いていないが彼女は前世の魔力をもったまま生まれ変わってしまった。
桜希の両親は桜希の魔力の濃さと繊細さを感じておりより一層愛おしさがこみ上げるのであった。
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隼人視点
俺の母親はあの今大路グループの社長夫人だ。俺の父親も一応上流階級の人間ではあるが今大路と比べたら劣る。俺の父親は建設会社を経営している。
2歳上の兄は成瀬証券の息子で俺の父親が一番社会的な地位が低く劣等感を抱いていた。兄である拓海とは親友のような関係性だ。けれどあの兄と比較されることが何よりも辛かった。
同じ母親から生まれたが拓海は全てを持っていた。優秀すぎる兄と比較され社交界の人間にどう思われているのか大体は察している。俺は学問での成績こそ良いが拓海のようにそれ以外の活動では比較対象にすらならない。
上流階級の人間であることから日々家庭教師たちから恥にならない最低限のことを学校に行く前の年齢から習わされる。現に俺は3歳で既に家庭教師が付いていた。
この国では義務教育として中学校まで誰しもが教育を受けられるとしているが上流階級の人間はとにかく人の上に立ちたがる為、子息たちには英才教育が施される。俺の父親は上流階級の人間に染まっているわけではないが、母親が大手のIT企業の令嬢で今大路グループの社長夫人であったことから家庭教師を雇った。
そんな劣等感を抱きながら日々勉強に力を入れたり、拓海と過ごしたりしていた。
ある日俺の母親のサラさんが家に来た。そこで俺に新しいきょうだいができることを教えてくれた。しかもその子は今大路の子だと。きょうだいが出来ることを素直に喜べなかった。
もし俺より年下のその子が俺より優秀であったら?
拓海と同じくらい優秀であったら?
俺はどうすればいいのか?
そんな事を思いながら、弟など生まれなければいい。そんな残酷な事を思ってしまった。
ただ何ヶ月か経った頃、サラさんがまた来た。もう既にお腹は大きくなっていて、サラさんはすごく嬉しそうだった。そして嬉しそうに俺に妹が出来るんだと教えてくれた。
女の子は生まれにくい。それは物心ついた頃から知っていた。けれど女の子は我が儘で自分中心で世界が回っていると信じて疑わない。学校に入学してから初めて母親以外の女性を見た。俺の予想と反して貴重と言われる存在がこんななのかと俺の母親と比べるとこんな野蛮なのが、と結構軽蔑した。
俺の母親のサラさんはこの世界においてかなり珍しいタイプでなかなか居ないと俺の父さんが話してくれた。そんなサラさんの娘だったとしても女というのは野蛮だという印象が短期間でかなり根付いてしまい、妹の誕生は全く楽しみでもなんでもなかった。
けれどどうだろう。
サラさんの腕の中にいる天使には学校にいる女とは全く違う印象を受ける。基本学校の女には嫌悪感を抱いており、たとえ顔が良くても同じだった。
妹の桜希は生まれた時から天使そのものだった。この世のものとは思えないほどのオーラを纏っていて、彼女の近くはとても心地よかった。それは桜希が会話をできるようになってからもだった。
俺はあまり人と喋るのが得意ではないし、表情もあまり出せない。
桜希は「いっぱいしゃべるからってその人のことよく分かるわけじゃない」と言った。俺は納得した。桜希は俺の言いたいことや思っていることをよく察してくれる。だからなのかと。
桜希の可愛さは爆発していて、拓海のように桜希とベタベタくっついているわけではないが学校が休みの時に必ず会いに行くほどには俺も大概シスコンなのだろう。
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