人魚姫に転生した……どうしてこうなった?
小さな頃よくみていたおとぎ話の人魚姫。
その物語にでてくる王子様に毎回腹を立てていた。
─こんなの王子じゃない!浮気男だ!─
まぁ、現実的に考えて付き合ってもいないのだから浮気もなにもないのだが……うん、でもやっぱり私にとっては“浮気男”だ
そんなことより、今重要なのは……
鏡をもう一度確認する。
これは、“夢”ではない…
ため息を吐いた。
“今の”私の姿が、そのストーリーにでてきた人魚姫の人間の姿になっている。
しかも、王子に拾われて他の女と王子が結婚するまで残り1週間ときた。
王子の愛をもらえなければ、泡となって消えてしまう。
逆に王子の愛をもらえたら長生きし地上でも暮らせて声も戻る。
─王子に求婚……生きるか死ぬかだし……でもな…正直めんどくさい……
“浮気男”に媚売って長生きしたくない。
でも、“浮気男”のせいで殺人も犯したくはない。
ふと考えて、今の姿を再確認した。
深呼吸する。そして、決めた。
私は、潔く長生きすることを諦めた。
さて、ここは王宮だ。
私は、魔女との契約で声はでないが、読み書きはできる!
残り、私の寿命は1週間(推定)!
後悔しないように生きてやる!
その後、どうにかこうにか王宮から逃げ出した。
この世界の土地勘、なんてなく適当に歩いた。
脱走初日に森を見つけた。幸いそこは、食べれる果物がたくさんあった。捜索されても見つからないように森の奥へ奥へと進む。
のんびりしている内に4日がたった。
今日は、歩いている途中に泉を見つけた。何かあれば戻るポイントにしようと印をつける。
泉から離れて5分程歩いていると、そこにボロボロに汚れた狼?が倒れていた。
「ぅー……のど……乾いた」
さすがに、見ないふりはできず助ける事にした。
抱っこすると案外軽く、泉まで軽々運べた。
持ってきたコップに水をいれ飲ませてあげる。
グビ、グビ
少しずつ水を飲んでいく。
満足すると、私をジーと見つめた。
そして、
チュッ
!!
ファーストキスを狼に奪われた…
私が固まっている側で、遠吠えをあげ始めた。
ガサッ ガサッ
ドッ ドッ ドッ
遠くから近づく足音に我に返る。
─もう、私を探しにきたの?確かに生活に必要なものはもらってきたけど…─
周りは、見渡しがよすぎて逃げてもすぐ見つかりそう……
─しかたない、大人しく捕まろう─
ふぅー
息を吐きだし、草原に横たわる。
「みつけたぞー」
─捕まったらどうなるんだろう─
足音が徐々に近づいてくる。目をつぶってこれまでの人生を振り替える。
なんとも言えない人生だった。
人生の思い出に浸っていると、
「ん?こいつは、なんだ?」
「シャー!」
狼?が威嚇した。
その後、足音も話し声も聞こえなかったので、目を開ける。
「!!」
自分の目を疑った。
だって、8人の屈強な男達が跪いていたからだ。
そのうちの一人が私を見てすごい勢いで土下座してきた。
「この度は、王子の伴侶と知らず無礼を働いて申し訳ありませんでした。お許しくださればこれから一生貴女についていきます!」
─誰にいってるの?……まさか…まさか─
「ふしゅー」
狼?がまた、威嚇した。
男達は更に縮こまる。
「マジか……」
ふと、無意識に声がでた。
ん?
“声がでた”?
「あー、あー」
周りの視線がきつかったがそんな場合じゃない。
うん、普通に声がでる……
ということは、……つまり……長生きできる!
ん?でも、王子の真実の愛って…それに伴侶って…
私は、狼と向かい合う。
「私って君の伴侶?」
「クゥン!」
狼が勢いよく頷く。
さて、私の寿命の問題は解消されたようだ。
だが新たな問題が浮上した。
目の前の“狼?”が私を伴侶にしたいそうだ。それに王子さま(推定)ときている。お断りしたいのだが、できる立場ではないだろう……
狼と結婚……種族も違うのに…
(私の夢は、平凡な家庭なのに……)
あぁ、神よ、なぜなのです…
空をみた。
雲ひとつない晴天だ。
私は、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。
「どうしてこうなった?」
たくさんの方の応援により続編を2月1日(月)18:00に投稿予定です。
未熟者ですが、
そちらも楽しんでもらえるとうれしいです(* >ω<)
人魚姫に転生した……どうしてこうなった?
(結婚式にいくことになりました)