26)ローズを庇護する者達
そのまま、王太子妃グレースの居室の居間に全員で移動した。視察から戻ったばかりのアレキサンダーとロバートの疲れをローズは心配したが、二人とも取り合わなかった。
「視察程度で、そこまで疲れたりはしない」
「あなたは少しは、大人に甘えるべきです」
ロバートの言葉に、アレキサンダーは笑った。
「ほう、どの口がそれを言う」
「今、話し合うべきは、ローズのことです」
アレキサンダーは、それ以上ロバートを追求しなかった。
「ローズ、誰がお前に嫌がらせをしている」
単刀直入なアレキサンダーの言葉に、ローズはロバートの腕の中で身を固くした。
「ローズ、どうしました」
「私が、それを言ったら、どうなりますか」
「当然、そのような愚かなことをしたものは、罰を受ける。お前の後見人は私だ。お前はいずれ私の家臣として仕える。お前への嫌がらせは、私への嫌がらせと同じだ」
アレキサンダーの言葉は正しい。王太子アレキサンダーが、後見し、見込んで育てようというローズへの嫌がらせなど、許されるものではないのだ。
だが、ローズはますます身を縮めるだけだった。
「ローズ。どうしました」
「だって、罰は可哀そう」
予想通りのローズの言葉だった。
「あなたは、そう言うと、思ってはいましたが」
ロバートは腕の中のローズの頭を撫でた。
「それに、いっぱい、沢山の人に、邪魔して迷惑をかけてるわ」
ローズの小さな、小さな声がした。
「ローズ。どうして、そんなことを」
身をかがめてロバートはローズに視線を合わせた。その目に涙が浮かんでいた。
「あなたは誰にも迷惑など、かけていません」
「でも」
「私が、迷惑だといったことが、一度でもありますか」
「ないわ」
「私が、あなたに嘘をつきますか」
「つかない」
「あなたは誰にも迷惑など、かけていません」
「本当に」
「本当です」
ロバートは、そっとローズの目に浮かんだ涙を拭いてやった。身を持たせかけてきたローズをそのまま抱きしめてやった。
「あなたがいてくれて、私は嬉しいですよ」
腕の中でローズが頷いた。
「ローズ、もう遅いわ、あちらでミリアと寝ておいでなさいな。私達も休むわ」
グレースの言葉にローズは素直に頷き、ミリアに手を引かれて部屋を出て行った。
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