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48)後任達の到着

 引継ぎを送るという手紙が届いてからさほど間をおかずに、ローズに教えられてきたという三人がイサカに到着した。


「ロバート様。ローズ様より後任として使わされました。宜しくお願いいたします」

 礼をした三人とその挨拶にロバートは面食らった。

 

 特に代表として挨拶してきたレオン・アーライルは、武官を束ねるアーライル子爵家の次男だ。家督相続権はないが、アーライル家が直系の男子をこの町に送り込んでくるとは思っていなかった。


 先代国王の統治時代、ライティーザ王国は、川向うのティタイトに攻め入った。一時的には勝利し、川向うの町を制圧した。その後敗走を重ね、現在の領土に落ち着いている。


現国王の長兄、第一王子は戦死した。総騎士団長だったアーライル侯爵家の先代の当主も死亡、現在の当主も左足の膝より下を失った。敗戦の責任を取らされたアーライル家は一部領地を没収され、侯爵から子爵にまで爵位をおとした。アーライル家にとっては因縁の地だ。今のアーライル家はロバートの一族と関連があるが、最早遠い昔だ。アーライル家当主が何を考えているのか、一度確かめなければならない。


 一人は商人のカールで、もう一人のマーティンは法学者だという。行政担当、物資担当、法律担当だとローズからの手紙にあった。


 どうやってこの共通項のない三人を見つけ出してきたのか。ロバートは、この場にいないアレキサンダーとローズに聞きたかった。


「ご丁寧にありがとうございます。ですが私は王太子殿下の近習です。敬称は必要ありません」


ロバートの言葉にレオンと名乗った子爵の息子は首を振った。

「いいえ。ローズ様にご指導を頂いた先輩です。ご指導よろしくお願いいたします。それに、ロバート様は、私にとっては高祖母とのご血縁の方でいらっしゃいます」


 レオンの言う通りの血縁関係ではあるが、ロバートは貴族ではない。平民の二人はともかく、このままでは貴族のレオンに「様」と呼ばせることになる。ロバートは焦った。もう一つのことに気づいた。


「ローズのことも、様とよんでいたのですか?」

「はい。ご本人には止めるようにと言われましたが、様と呼ばせていただきました」


ロバートは、さらに恐ろしい可能性に気が付いた。

「彼女はあなた方を呼び捨てにしませんでしたか?」


 町へ行く前の説明の最中、ローズはロバートを時々呼び捨てにした。ローズの突飛な行動に慣れつつあったロバートもさすがにどうかと思った。ローズ自身も気を付けようとはしていたが、話の内容に集中しては敬称を付け忘れることが続いた。結局、ローズとロバートは互いに敬称なしで呼ぶことに落ち着いたのだ。


「えぇ。話に夢中になられるとおっしゃるとおりでした」

「大変、申し訳ありません。ローズが失礼をいたしました。ローズに代わりまして心より深くお詫び申し上げます」


ロバートは心から謝罪した。全員、孤児のローズが呼び捨てにしてよい相手ではない。特に貴族のレオンに関しては大問題だ。それだけで首が飛びかねない。


「いえ、親身になって、ご教授くださいました。私たちが生きて帰るために必要なこと、町を救うために必要なことを教えていただきました」

レオンには、身分も年齢も劣るローズを相手に敬語を使うことを躊躇う様子がなかった。


「ローズ様は素晴らしい方ですね。将来が大変に楽しみです」

年齢が一番上だというカールの視点は、ロバートのそれに近いように感じた。


「思ったより、長期にわたり、あなた一人に任せてしまったからとずいぶん心配しておられましたよ」

マーティンはそういうと、人好きのする笑顔を浮かべた。


「大人のようだとおもったら、甘い物が好きとか子供らしいところもあって、大変可愛らしい方ですね。わが領地に咲くリアの花の蜂蜜を父の勧めもあって差し上げたのですが、ずいぶん喜んでいらっしゃいました」

「それでも指導は厳しいままで、生真面目な方ですね。陛下もそこを大変褒めておられました」


 3人とも口口にローズを褒めた。ロバートの知らない間にローズは随分と、味方を増やしたらしい。その分、敵を増やしていないかが心配になった。


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