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34)レオン・アーライルの反感

 レオンは、先にイサカの町に行った者達から、町に行く前に、ローズという孤児の小娘の教えを受けると聞いていた。


実際に会ってみると、生意気で気が強い。口調もやや乱暴。粗野なふるまいが目立つ。確かに、賢いようだ。だが、レオンは、王太子とその妃が、こんな子供に好きにさせているのが信じられない。父がなぜ、この小娘を気に入ったのかもわからない。


 レオンは、大人用の椅子に乗せられたローズと、たった二人で向かい合って座っていた。誰かに座らせてもらわないと、大人用の椅子に、まともに座れない子供だ。足も床に届いていない。常に近習が誰か一人付き添っている。


王太子も、王族ともあろうものが、何の酔狂か、孤児を相手に大袈裟だ。おまけに、ローズは先ほど、その近習に部屋の外でしばらく待つように頼んでいた。孤児が王太子の近習に意見するなどありえない。


「レオン様、レオン様のお父様が、レオン様を町に派遣する者として、御推薦くださった理由は何でしょうか。お父様は騎士の一番偉い方とお伺いしましたが」


無礼な小娘の単刀直入な質問に、レオンは溜息を吐いた。

「僕は第二子です。家督相続権はありません。兄が継ぐ予定です。兄の方が武術に優れていますし。僕は養子に出される予定です。実績があったほうが、養子縁組もうまくいくだろうという父の計らいです」

「あなたのお父様、本当にそう思っていらっしゃるのかしら?お父様がそうおっしゃったの?」


琥珀色のローズの目に射抜かれるようだった。

「いえ、父はただ、見識を深めて来いとだけ私に言いました」

「あなたのお父様は、あなたのことをよろしく頼むとおっしゃいました。お父様もあなたに実績が必要だとおっしゃっておられたけど、理由はあなたとは違うはずです。あくまで推測ですが、お二人は同じ言葉を使っておられますが、違うことを考えておられると思います」


 孤児の小娘に、貴族の何が分かるというのか。レオンは、腹立ちしか感じなかった。


 初日、二日目と、生意気な小娘の指導が続いていた。指導の内容はともかく、この小娘を相手にしていると、苛立つことが多い。自分を送り出した父の手前、父の命を放り出し、おめおめと屋敷に帰ることなどできないだけだ。


 今日もローズに少し残ってほしいと言われた。貴族である自分がこの小娘の頼みに、時間を割くなど腹立たしいことこの上ない。


「国王陛下は戦争を望んでおられません。その時代、騎士を束ねる者に必要とされるものは何かしら。これはあなたへのお願いです。明日までにご自分で考えていらしてください」


 なぜ、本来、王太子宮にいることすら許されないはずの孤児に、貴族の自分が命令なぞされなければならない。王太子宮に何度か呼び出された父は、すっかり小娘の崇拝者になって帰ってきた。そのせいで、送り込まれただけだ。


 商人と学者である他の二人も、あっさりとこの小娘の信奉者になった。それも腹立たしかった。


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