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27)王太子妃のお茶会



  会議場を出たローズは大きく息をついた。目の前のベールが邪魔だ。せっかくお化粧をしてもらったが、顔が変な感じがする。何より、緊張した。汗をかいた。


「では、こちらへ。グレース王太子妃様がお待ちです」

フレデリックはいつも通り、片目を閉じてにやりと笑った。


 行きと同様、王太子宮への帰りも一緒の馬車で帰るから、グレースとお茶をしながら待つようにアレキサンダーに言われていた。

「立派だったそうね。ローズ」


いつの間に、誰からきいたのか、グレースは微笑み、ローズを褒めてくれた。沢山の貴族達を前にしていたときの緊張感を思い出し、ローズはめまいを覚えた。


「おほめにあずかり光栄です」

 実際につかれた。アレキサンダーの知り合いとして、何度も会っていた有力貴族達は、ローズが話しやすいように協力してくれた。打ち合わせもなかったのに、ローズに協力的な質問をしてくれた。アレキサンダーの近習達も、大丈夫だというように頷いてくれた。


 イサカの町で協力者がいない中から始めたロバートのほうが、もっと大変だったはずだ。そう思って乗り切った。


「アルフレッド国王陛下も、アレキサンダー王太子様も、沢山の方々がいらっしゃったので心強かったです」


 王太子宮での議論、お茶会の時の面々の名前と地位は、先ほど知ったばかりである。ある程度以上だろうとは思っていたが、重鎮に厳選されていたとは思っていなかった。知っていたはずのグレースは、笑っているだけである。少し恨めしく思った。だが、ローズも、詳細に相手のことを詮索していなかったからお互い様だ。それに、貴族の中でも高位の人々と知っていたら自由に話をできていたかわからない。


 ローズは、グレースと花の香りのする紅茶を飲みながら迎えを待った。


そろそろロバートを後任と入れ替えたい。いくら何でも一人にやらせる仕事量ではない。そのうち倒れてもおかしくない。問題はどうやって人を選ぶか。アレキサンダーに頼むべきなのだろうか。


 考え込んでいたローズは、会議を終えて、グレース主催のお茶会にやってきたという面々に、一瞬目を見張った。いつもの王太子宮での話し合いの出席者がそろっている。最近参加するようになった、アーライル子爵もいた。


 近習達がいつものように地図を広げ始めた。これからが、会議の本番であろう。


 アレキサンダーの「知り合い」達が、国王アルフレッドと有力貴族であるとわかった以上、ローズは緊張すべきなのだろうが、話の内容に集中すると、そんなことなど忘れてしまった。


 原因の井戸、というよりも水源地から井戸までのどこかが、汚染されて今回の疫病が発生しているのだ。


そこを突き止めるにはどうするか。


 井戸や広場を掘り返し、場合によっては町を一部移動させないといけないかもしれない。今、封鎖されている井戸が安全であり、使えるということをどうやって証明したらよいかも問題だ。ロバートの後任も含め、話し合うことは沢山あった。


「町の再興のためにやるべきことは沢山あります。王都から人をもう少し送り込んで、情報が密にとれるようにしたほうがよいと思います。疫病の危険がなくなったわけではありません。しかし、当初より感染する危険性は下がりました。今は、アレキサンダー様の近習であるロバート一人にすべて背負わせています。今後、内容が多岐にわたる以上、分野毎に人を送り込んだ方がよいのではないかと思います」


 ローズの意見は、すぐに承認された。アレキサンダー王太子だけにこの件の功績を取られてなるものかという、貴族たちの権威争いで、後任ぐらいすぐ決まるから大丈夫だと、レスター・リヴァルー伯爵はローズに耳打ちで教えてくれた。ローズを可愛がってくれる年配のリヴァルー伯爵が実は宰相だというのは先ほど聞かされたばかりだ。


「その人が、疫病に感染して周囲に広げては問題ですから、人選には、厳選をお願いしたいのですけれど」


率直すぎるローズの意見も、この茶会の場では問題ない。


「そういった加減が難しいところでね」

アルフレッドは苦笑した。


既に、愚息をと、差しだしてきた貴族もいたらしい。天に召されたらどうするのかと思うが、本当に愚息であれば、そういう使い道を選ぶ貴族もいるそうだ。


「貴族も大変ですねえ」

ローズの感想に大貴族たちは笑った。


「ローズ、君は本当に面白いね」

アルフレッドの言葉に頷く貴族達に、ローズは何と言っていいかわからなかった。



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