21)未来の予定2
ロバートは式に参加させないつもりだったわけではない。王族の忙しさはよくわかっている。参加していただいては申し訳ないと思っていただけだ。だが、下手にそれを言うと、不機嫌になっているアレキサンダーの機嫌をさらに損ねることは予測できた。
「どうせお前のことだから、時間を割いていただくのは申し訳ないと思っているのだろう」
アルフレッドは苦笑していた。
「アリア、君の息子は真面目だが、どうしてこう、融通がきかないのだ。真面目が過ぎて、甥のように思っている私にまで気を遣っているよ。私に、結婚式のために時間を割かせるのは申し訳ないと思っているらしいが、なんとかならないかね」
あまりに図星のアルフレッドの言葉に、ロバートは驚いた。まるで母がその場にいるように、虚空に語り掛けるアルフレッドに、苦笑する母の姿が目に見える気がした。
「どうせ、そんなことだろう。ロバート」
アルフレッドは優しく微笑んでいた。
「はい」
アルフレッドの言葉に、素直に認めざるを得なかった。
「ロバート、お前は少し、誰かに甘えなさい。素直になりなさいと言ってもいいかもしれない。何もかも、一人で背負わなくてよいのだよ。お前でなくてはならないことは、確かにある。だから、お前でなくてもできることは、誰かに任せなさい。誰かのために苦労することを、お前は厭わない。お前の周りにいる者も、お前のために苦労することを厭うわけではないだろう。むしろお前のために何かできたらと思っているはずだ。ロバート、一人で背負わなくてよいのだ」
“王家の揺り籠”、“家名なしの一族”の枷を知るアルフレッドの言葉に、ロバートは何も言えず、ただ頭を下げた。一番降ろしたい荷は、一族の枷だが、それはこの国のために、必要なものだ。
「私は式には参加するからね。兄上達やアリアに土産話の一つも持って行かないと、天の国にいっても、私の立場がない」
アルフレッドの冗談めかした言葉に、ロバートは一礼するのが精いっぱいだった。一人で背負わなくてよいとアルフレッドはいう。だが、一族の本家に残っているのはロバート一人だ。ローズを巻き込むと思うと、胸が痛んだ。だが、ローズが誰か他の者の腕の中で笑うなど耐えられない。信頼して身を任せてくれる相手が、自分でないなど許せない。自分の我儘なのだ。
「ロバート」
ローズは何かを察したらしい。心配して見上げてきていた。そっとかるくローズを抱きしめた。
「アルフレッド様やアレキサンダー様、グレース様までご参加いただくとなると、警護を検討せねばなりません」
一族の枷をロバートは頭から追い出した。考えねばならないことはいくらでもある。
「そんなもの、俺がやる俺が」
エドガーの申し出はありがたいが、エドガーでは何か問題がありそうな気がする。
「あなたに任せては、お客人を呼べません。私が取り仕切ります」
エリックの言う通りだ。だが、エリックばかりに任せていては、他が育たない。
「二人の結婚式なら、アーライル家の兄弟がくるだろう。アーライル家の兄弟なら、別に俺がいても問題ないって。何なら腕の立つ奴連れてきてくれって、頼もうか」
「お客人にそのような態度が許されると思う、あなたが問題です」
息の合った従兄弟達に、どこからともなく笑いが起こった。
ロバートは、隣で微笑むローズの額にそっと口づけた。はにかんだように微笑むローズはやはり可愛らしい。
「ロバート。婚約したのだから、接吻すればよいだろうに」
アルフレッドの言葉に、ロバートとローズは赤面し、微笑ましい恋人たちに周囲は温かい視線を送った。
第三章も終わりです。
今回、準備不足ながらロバートは頑張りました。見守っていた方々の準備の良さ(特にアルフレッド)を幕間更新予定 2つあります
1)5月17日ー20日 13時更新
きっと優しい未来 https://ncode.syosetu.com/n8563gw/
ローズもローズなりに、一生懸命だったというお話と、見守っていた人達のお話です。
2)5月21日ー28日 10時更新
一世一代の夢 https://ncode.syosetu.com/n4842gx/
第一部第一章で登場した一人が、アレキサンダーの計画に協力したり、ロバートに絶対にバレてはいけない秘密を抱える?お話です
本編は、5月24日7時から第二部として開始予定です
引き続き、第二部へおこしいただき、お楽しみいただけましたら幸いです。
第一部を読んでくださった方々、ブックマーク、評価、頂いている方々、本当にありがとうございました(*'▽'*)
第二部も、https://ncode.syosetu.com/n5142gx/
よろしくお願いします<(_ _)>