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14)ロバートとローズからの報告

 グレースの腹が目立つようになり、懐妊が公表されてから、アレキサンダーは夕食などもできるだけ、グレースと一緒にとるようにしている。グレースが妹扱いして可愛がるローズも、同じ卓につく。ローズの身分を考えればありえない光景だが、それが王太子宮の日常だ。


 食後、卓に着く全員に茶を注ぎ終わったロバートは、ローズの隣に立った。 

「報告いたしたいことがございます」

ロバートが先を言うよりも、アレキサンダーとグレースの方が早かった。

「婚約か」

「十七まで許しませんよ」


 それぞれの言葉にロバートは面食らった。椅子に座って見上げてくるローズと顔を見合わせた。

「まだ、何も申し上げておりませんが」

ロバートの言葉に、アレキサンダーとグレースが笑みを浮かべた。

「ロバート、お前は意外とわかりやすい」

「ローズも朝から浮かれていましたもの」


 二人の言葉に、ロバートとローズは、また顔を見合わせた。夕食の時に報告して、それまでは互いに普段どおりにしていようと約束していたのだ。

「ロバート、十七までは、許しませんからね」

微笑むグレースに十七という言葉を繰り返され、ようやくロバートはグレースの意図を薄々察した。


「恐れ入りますが、グレース様、十七というのは」

「ローズが十七歳になるまで、結婚は許しません」

確認したロバートに、返ってきたグレースの返答は、予想されたものではあった。

「私は、アレキサンダー様と十四歳で正式に婚約し、十七歳で結婚しました。ロバート、あなたの方が、大人です。小さなローズが成長するまで、余計な手を出すことは許しません」


 ほぼ四年先だ。

「グレース様、お言葉ではありますが、十六歳で成人のはずですが」

ロバートは自分でも珍しいと思いながら、食い下がった。


 三年先と思っていたのに、さらに一年は避けたかった。いつまでライティーザが安定しているか、誰にもわからないのだ。

「姉代わりの私が結婚したのが十七歳です。姉に倣ったところで何の問題がありますか」

貴族ではよくある話だ。だが、ローズは貴族ではないし、グレースの妹でもない。

「男性と違い、女性が嫁ぐには準備があります。お父様からローズを私の妹代わりとして式の用意をする許可は頂いております。一年延びることくらい何ですか」


 グレースに何やら叱られたことくらいは、ロバートにもわかった。グレースの様子から、逆らわないほうがいいことも察した。女性が嫁ぐときの準備とか、アスティングス侯爵もすでに巻き込んでいるとなると、何がどうなっているのか、ぜひ教えていただきたい。だが、少なくとも今、グレースに尋ねるべきではないことは確実だ。


「承知いたしました」

ライティーザの平穏が続くように、アレキサンダーの政務に協力するしかない。アレキサンダーに政務に集中してもらうためにも、グレースには心身ともに健やかでいらしていただく必要がある。グレースの機嫌を損ねるわけにはいかない。


「わかっていればよいけれど。ローズ、こちらにいらっしゃいな」

グレースの言葉に、ロバートはローズに手を貸し、椅子から降ろした。扇で口元を隠したグレースが、ローズの耳に口元を寄せ囁いた。グレースの隣に座るアレキサンダーの表情から、大体何を言っているか、大方の予想はつく。


 グレースが口元の扇を外したころには、耳まで赤くなったローズがいた。


 真っ赤になって戻ってきたローズを椅子に座らせてやったが、こちらを見ようとしない。おそらく予想通りの内容なのだろう。ここまで赤くなるならば、ローズは、一応は男女のことは分かっているらしい。

「ロバート、急だが明日の夕食にはおそらく父上がいらっしゃるから、お前もその心づもりをしておくように」

「承知しました。しかし、そのようなご予定でしたでしょうか」


 アレキサンダーの言葉にロバートは疑問に思った。ロバートでも、国王であるアルフレッドの予定の詳細は、把握できてはいない。

「あぁ。よほどのことが無ければいらっしゃるはずだ」

「承知しました。では厨房にはそのように伝えておきます」


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