「感染症」「鏡」
「感染症」
何を言ってるのか、わかってるのか。
何をしてるのか、わかってるのか。
世界は様相を変えて、地球は今日も正しく周る。
太陽は東から昇る。
“正しい”が蔓延していく。
人のありようが変わっていく。
君の顔色が変わっていく。
僕は自分の顔が見えない。
忘れられていく。
覚えられてしまう。
傷つけられてしまう。
捕まってしまう。
嘘だと思うか、十年前の君に聞いてみる。
「鏡」
鏡に映る僕の影が、僕の首を絞めている。
振りほどこうともがいてみても、そこには何もない、触れられない。
ゆっくりとだが、確実に強く締めつけられていく。
息ができなくなる。
必死にもがいても、自らの爪で首の皮膚がはがれ、血がにじむだけだ。
呼吸ができない。
頭に浮かぶ、絶望と死。
その言葉が張り付いたまま、はがれない。
そのあいだにも、影は僕の首を絞め続ける。
顔のないその顔が、こちらを見つめる。