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【加筆修正中】EgoiStars:RⅠ‐Prologue‐  作者: EgoiStars
帝国暦 3357年 復古宣言 [前編]
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第23話『宇宙海賊の未来は五里霧中』

【海陽惑星系宙域 ????】



 漆黒の宇宙空間に漂う小惑星帯は航宙において非常に危険な存在である。静止しているように見えるその群れの中は音速の速さで飛び交う小石が混ざっていることもあり、その小石と衝突すれば人間の身体など簡単に貫いてしまう。その反面、巨大な氷の塊などの資源が紛れていることもあり高値で取引されることもあった。

 危険と宝が眠るとある小惑星帯の中を傷だらけの宇宙船が漂っていた。ボーンファイトのイラストが描かれたその宇宙船は小惑星帯をうまく潜り抜けていく。やがて僅かに大きな小惑星から着艦を誘導するレーザーが照射された。船は小惑星の中に消えていった。


 帰還した船を見た宇宙海賊ホーンズの副頭領ザズール・ワインスタインは顔を顰めながら頭頂部の狐のような耳を忙しなくビクつかせていた。


「だから言わんこっちゃねぇ」


憤慨するザズールとは対照的に嬉々とした表情を浮かべるメカニックや医療班が声を上げて船を取り囲んでいく。ボロボロの船体と乗降口から降りて来る負傷者たちを見た彼らは嬉しそうに声をあげた。


「ジェネレーターいっちゃってるよな? この前かっぱらってきたあの新型使おうぜ!」


「やった! 関節が逆方向に行ってる! さっさと切断しちゃお!」


「うひゃひゃ! 装甲板全とっかえじゃん! カラーリング変えちゃいましょ!」


「おーおーいっぱい出血しちゃって? ん~この血の味はカルキノス人のΔ-W型の血かな?」


「んだよCSの損傷個所脚部ばっかりじゃねぇか! 肩パーツ余ってっから使いてぇんだよ!」


「おっほ! こりゃあ俺がオペしていいよな?」


運び出される機材や担架に乗せられゾロゾロと運び出されてくる怪我人を見て歓声が上げる。

 どう考えても普通ではない環境の中でザズールは鼻息を荒げながら乗降口を睨みつけていた。


「レオナルドッ!!」


船から頭頂部の耳をパタつかせる小柄な若者が降り立つと、ザズールは格納庫中に響き渡る程の怒号を上げる。その怒号に周囲は声を切ってザズールの方に視線を投げかけるが、無重力空間にふわりと降り立った少年はまるで頼まれたおつかいを忘れた子供のような表情を浮かべていた。


「あ、ザズールさん。只今戻りました」


 ザズールは憤慨しながら勢いよく地面を蹴ると、無重力空間を飛びながら少年……頭領であるレオナルド=ジャック・アゴストに詰め寄った。


「どういうつもりだ! 何で勝手に仕事を受けた!」


「すいません。声量抑えてもらえます? レオンドラ人は耳が良いから鼓膜破れちゃいますよ」


レオナルドは頭頂部の片耳に指を入れながらそう告げる。その“すいません”が謝罪ではなく問いかけだったことにザズールは益々耳をバタつかせると、レオナルドは苦笑を浮かべながら弁解してきた。


「怒っているのは理解しましたから大声を出す必要はありません。あ、報告しますね。ジュラヴァナに行って新しい神栄教の部隊と交戦しましたが見事に負けました。向こうの棒術を使うCSが物凄く強かったです。詳しくは映像データを確認してください。じゃ僕は少し休みますね」


淡々と言いたいことだけ言ったレオナルドはザズールを横切ってフワフワと漂っていく。

 ザズールは益々鼻息を荒げるが何とか大きく深呼吸をして何とか平常心を取り戻した。そして追いかけるように再びレオナルドに近づき次は諭すように話しかけた。


「なぁおい待てレオナルド。言った筈だぞ? 妙な仕事は受けるなってな」


「何言ってるんです? 僕らの仕事に妙じゃないものなんてありませんよ」


「そういう話をしてるんじゃねぇ。仕事は選べと言ってんだ。言っただろ? 神栄教が自分(テメェ)の星を襲わせるなんざ裏があるに決まってる。そんな俺の忠告を無視して勝手に出撃したらこのザマだ」


話すうちに2人は格納庫と廊下を繋ぐスペースに入りこむ。

ザズールは扉を閉じてスイッチを入れると人工重力が働き2人は地面に足を付いた。


「騙し騙しやってきたがあの船はもうダメかもしれねぇ。俺達の母艦はもうあれしかねぇんだぞ?」


ザズールが差す親指の先には扉の窓越しにボロボロの船が火花を散らしている。海賊団の台所事情が芳しくない事は全員に言い聞かせているところだが、首領たる彼がこんな散財に近い行動をしては下の者に示しがつかないのだ。


「海賊が破産申請して国が認めるとでも思ってんのか? このままじゃ海賊連合に」


「あ! お頭だぁ~」


ザズールの説得を無邪気な声が遮る。この小惑星に暮らす海賊団の子供たちがどこからか現れ、帰ってきたレオナルドに我先にと言わんばかりに飛びついた。


「いやぁ皆さんただいま帰りました。留守中はお父さんお母さんの言うことをちゃんと聞いていましたか?」


「うん! あ、はいこれ!」


「あ、アタイも!」


子供たちはレオナルドに似顔絵やら手作りのメダルを差し出すと、彼は満面の笑みでそれら一つ一つを受け取った。


「ありがとうございます。これでまた僕も頑張れますよ」


「それよりお頭! 俺にもCSの使い方教えてよ!」


「俺も!」


「う~ん。まだ少しみんなには早いと思うんですよねぇ~」


「レオナルド。ちゃんと話てぇんだが?」


ザズールが口を挟むと、レオナルドは困った子供の頼みから助けてくれたと思ったのだろう。ニッコリと笑顔を作って子供たちの為に屈んでいた状態から立ち上がった。


「あ、そうでしたね。じゃあ皆さん。また後で。CSについても考えておきますからね」


「絶対だよ!?」


憧れと尊敬の視線を投げかける子供たちに頷くとレオナルドは「じゃ行きましょう」と言ってザズールを連れ出した。


「いやぁ~助かりました。ありがとうございます」


「レオナルド。とにかく船だがな?」


「ああそれでしたら変え時でしたし。これを機に新しい船にしてはどうですかね?」


「んな金がどこにあんだよ?」


「それを稼ぐためにこんな妙な仕事を受けたんです。ザズールさんはどう思います? 僕じゃいくら考えても神栄教の意図が見えない。何故自作自演までして自分たちの星を襲わせたんでしょう?」


「さぁな。せいぜい華々しい自分達のデビューをアピールしたかったんだろうよ。んな事よりもな? これからの身のふりを考えねぇと」


「まぁ何とかなるでしょう。それに金策の方は任せてください。帰って来る途中でいい仕事を紹介して貰ったんで」


「お前の言ういい仕事ってのは得てして碌なもんじゃねぇだろ……」


 話ながら歩いていた2人は幹部室の前に辿り着くと、レオナルドが手をかざし扉を開いた。彼の生態認証を読み取った扉は横にスライドすると、ソファーに腰を下ろしていたタトゥー塗れの大男ニック・エルナードが片手を上げた


「おう! お頭帰ってきたんだな! お帰り!」


「あれ? ニック君。格納庫に行かないのかい? 今日は修理のし甲斐があると思いますよ?」


レオナルドは意外そうにそう返すと、ニックは片足を上げて整備班のつなぎ服を捲るとギプスを見せてきた。


「いやぁ~一昨日第7パックを弄ってたらちょっとやっちまってさ!」


「あーこれは痛そうですね」


「いやぁ間抜けだったな。ちょっと下のモンが整備をさぼったらしくてよ」


「そういう理由なら治療費は整備部の経費から落とすのが筋だぞ」


「おやっさんそんな冷たいこと言うなよぉ~俺やお頭のおしめを代えてくれた間柄だろぉ?」


ザズールの言葉にニックは情けない声を上げる。レオナルドとニックは先代からこの海賊団の主要メンバーである。彼等の父親たちはザズールにとって先輩でもあったため死後は彼が後見人として2人を育ててきたのだ。


「そんな事よりレオナルド。お前が言ういい仕事とはどんな話だ?」


ザズールは憤慨しながらニックの隣に腰を下ろすと、レオナルドは2人の正面にある首領専用のソファに背筋を伸ばしながら行儀良く腰を下ろした。


「簡単な仕事です。クリオス星からカルキノス星に向かっている輸送船を探せというだけですよ」


「探せ? 見つけたらどうすんだ?」


「さぁ? 僕も探せとしか言われていないので……見つけたら連絡していますよ」


「ソイツは誰からの依頼だ?」


「僕らのスポンサーですよ」


ザズールは呆れたようにかぶりを振るが、レオナルドはこれから遠足に行く子供のような弾ける笑顔で顔を上げた。


「大丈夫ですって! 大体輸送船を調べるだけならもしかしたら戦闘もないかもしれませんからね。何より報酬は大きいですし! ここだけの話……皇族絡みらしいですよ?」


屈託のない表情を見せるレオナルドを他所にその言葉からザズールは依頼人の正体に見当が付いた。しかし大きな仕事には必ず裏がある物だ。無論、宇宙海賊などという略奪を生業にする者としてそんなことを恐れてなどいられない。それでもここ最近不穏な政治絡みに首を突っ込むのは得策ではない。何よりも依頼主が()()なら尚更である。


「レオナルド。俺は反対だ。昔と違って上の連中はもう俺たちを必要としちゃいないんだ。特にウチは海賊連合でも爪弾き状態だぞ? それを指示してんのも↑の連中なんだ。このままじゃいいように使われて捨て駒にされるのがオチだぞ」


「分かっています。でもそうも言っていられませんよ。みんなを食べさせていかないといけないですし。ここの台所事情も理解はしているつもりですから。それに……」


レオナルドはそこまで告げると寂しそうでありながらもどこかそう望むような表情で微笑んだ。


「これを機にウチを抜けて堅気になる人がいてもいいですしね」


その言葉にザズールはある種諦めに近い表情を浮かべるが、隣のニックは情けない声を上げ、杖を突きながら立ち上がった。


「ま、待ってくれよお頭~? ま、まさか解散するってんじゃねぇよな~?」


ニックは自分より二回りも小さいレオナルドに縋り寄ると彼は苦笑しながらその肩をポンポンと叩いた。


「それも1つの道ですよ。後ろ指差されない人生の方が幸せに決まってるんですから」


「俺を雇ってくれるイカれた所なんかここしかねぇんだよ~」


「イカれたとはなんだ……まぁ否定はせんがな」


ニックの失礼過ぎる発言にザズールは肯定しながらも憤慨すると、レオナルドの方に向き直った。

 まだ20歳の彼にこの海賊団の未来を託すのは心苦しい。しかしこの海賊団を立て直すには歴代でも天賦の才に恵まれた彼に頼る他なかった。


「報酬はどれくらいなんだ?」


「当面はやっていけるでしょうね。それでも破産までの時間稼ぎぐらいにしかならないでしょうけど」


「リスクを背負うほどか?」


「背に腹は代えられません。これに乗らないならば本当に解散するしかなくなるでしょうね。仕事は僕一人で事足りるので、ザズールさんはみんなに次の職場が斡旋できないか探してあげてください」


「マジかよ~……お頭、俺は残らせてくれよ?」


再び情けない声を挙げるニックを尻目にザズールは小さく溜息をついた。


「……分かった。小型宇宙船くらいは何とかなんだろ。CSは自分のでいいな?」


「充分です。4時間後に出発しますので少し休ませてください。あ、ニックさん。4時間後に起こしてくださいね」


レオナルドがそう告げて立ち上がると、ニックは先程の情けない表情など忘れたように能天気な笑みを浮かべながら親指を突き立てる。

 寝室に向かうレオナルドの後姿を見送りながらザズールは不甲斐ない自分に溜息をついた。そしてソファの背もたれに身体を預けると今回の依頼について考えた。上層部が命令した輸送船には一体何が積まれているのか? その積み荷は果たしてこの海賊団に何を齎すのか? ただ何となく……ザズールは今回の件が気になってしまっていた。今回をきっかけにこの海賊団の何かが変わる。そんな直感を感じていたからだ。

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