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現代社会に近い世界観の長編作品 まとめ

小悪魔れでぃの聖夜前日悪戯で一般人はたじたじになる。


「ああ、困ったなあ……」


 十二月二十四日。クリスマスイブ。

 世間では恋人たちが盛り上がって居たり、町全体がイルミネーションで飾られているが、俺にとって今日は最悪の日だった。

 恋人がいないとか、仕事詰めだとかそう言う話ではない分自分は幸福なのかもしれないが、そういう身分にはそう言う身分なりに重圧やらやらなければいけないことは多々ある。

 家で待ってる彼女へ渡すはずだったプレゼントは落としてしまうし、家の鍵は仕事場に忘れる。鍵を取りに行くために仕事場に戻れば嫌いな上司に見つかって仕事を頼まれる。果ては彼女にそれを連絡したらご機嫌が斜めになってしまわれた。遅れたのは自分のせいなのだからある程度は仕方がないが、さんざんと言っても仕方がない日だった。

 落とし物を探しに今日通っていたはずの路地裏をとぼとぼと歩いていると、人が入れるほど大きなゴミ箱からガサゴソと何かを探しているような音が聞こえてきた。

 普段、この路地は人があるか無いような細い路地なのに、いったい何なのだろうか。

 そう思って恐る恐る近づいて行くと、突然、ゴミ箱が揺れる。

 何事かと思っていると、いきなり蓋が勢いよく空いたかと思うと、中からゴミの臭いと共に何かが顔を出した。

「よいしょっと!」

 そんな声と共に飛び出してきたのは、小さな女の子だった。

 身長は140中ごろぐらい。白い肌にプラチナブロンドの女の子。ワンピースドレス……というかドレスコートを着込んだ少女が突然ゴミ箱から飛び出してきたのだ。

 さすがに怖いので避けようかと思っていると、向こうに見つけられてしまったのか、少女の目がこちらを向くのが分かった。

 ――あ、まずい。

 そう感じたが、時すでに遅く、少女がにこっと微笑んだかと思うと、手を後ろ手に回して小首をかしげた。

「今日は良い日?」

「は?」

「そうじゃなさそう? あっ、もしかして色々巻き込まれたり、残念なことがあったんでしょ?」

 いったいいつみられたのかと思うほど的確な指摘で「はあ、まあ……」という反応しか返せなくなる。

「どんなことがあったの?」

「いやまあ、大事な人へのプレゼントを無くしたり、怒られたりかな」

「あはっ! 可哀想!」

 ひどい言われようだった。

 しかし、彼女の言う通り今日は本当にひどい日かもしれない。突然こんな目にあうのだから、厄日ともいえる。

 しかし、彼女にはなんて返すべきなのだろう。

「グラナーチカ様!」

 また別の誰かの声がして、少女の背後から男の子が出てきた。身長は170後半。ちょうど少女の頭が胸よりちょっと下になるくらいの身長だろうか。黒髪のモーニングコートを着た少年――執事服、と言えばわかりやすいだろうか。のイケメンがこちらに向かって走ってきていた。

「ベルカ! あはっ、みつかっちゃったのね」

「見つかっちゃったじゃないですよ。ずっと探してたのにこんなところに居て……」

「だって、クリスマスイブだもの。もっとたくさんの人を見ないと面白くないじゃない?」

「面白くないじゃない? じゃありません。今日はあれほど家でじっとして居ようって言ってたでしょう」

「つまんなーい」

「グラナーチカ様……」

 いったい何を見させられているのだろうか。突然現れたかと思ったら少女にからかわれて、からかった当人につまらないと言われる。

 今日は本当に散々な日かもしれない。

 そう思っていると、少女の前にベルカ、と呼ばれた少年が出てきて頭を下げられてしまう。

「あの……、彼女が大変失礼な事をしでかしていると思うのですが、本当にすいません」

「い、いやまあ……。少なくともあなたが謝ることじゃないかなって」

 そんな会話をしていると、彼の後ろに居た少女はつまらなそうに小石を蹴る。

「つまらないわ、ベルカ。見つかったのなら家に帰ろ」

「ぐ、グラナーチカ様……」

 少年の呆れたような声に同意する。さぞ彼も苦労しているのだろうと「大変そうですね」と同意する。

 すると、何を思ったのか。少女が突然こちらに歩いてきて手を握られてしまう。

「はい、これ。プレゼント。大事にしてね?」

 突然そう言うと、握られた手の中に何かを渡される感触がした。何かと聞く前にグラナーチカと呼ばれた女の子はご機嫌そうに路地の出口に向かってスキップしていってしまう。

 その様子を少年も見ていたのだろう。慌てて彼女の後を追おうとして、急ブレーキをかけると振り返って、こういった。

「すいません。ちゃんと言っておきますので。ちょ、グラナーチカ様! 待ってください!」

 そのままグラナーチカと呼ばれたワンピースドレスを着た少女は黒髪の少年に追われて街の中へと消えてしまった。

 嵐が過ぎ去ったような気持ちで呆然としていると、そう言えば彼女に何か握らされたことを思い出す。


 なんだったのだろうとそれを見て見ると、今日落とした彼女へ渡す指輪が入った箱だった。




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