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自灯籠  作者: 葦原爽楽
自灯籠 喫茶店・桃花
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第七話 誘い

前回、蠱毒



「大丈夫そうですね」


喫茶店桃花・二階。テレビで二人の様子をうかがっていた店長の否笠は、安堵したように溜息をついた。

初めての第三層ということもあり、最初の動きこそぎこちなかったが、見た限り充分に適応している。

これで二人も自信を持てるだろう。


「どう思いますか? 天都さん」


隣で画面を注視していた天都は、思ったことを淡々と伝える。


「まぁまぁ、ではないでしょうか。咎人の攻撃が通用しないとわかってからは多少油断もしています。

現にこれまで注意していれば避けられる攻撃が、美羽は三回。蛍が五回ありました。

これでは今まで過度に注意させていたのが無駄になります。

三層までならともかく四層からは命取りになりますから、四層はあと数回慣らした後がいいでしょう」


普段無口の彼が珍しく口が回る。店長の前だからか、それともこと戦闘の話になると饒舌(じょうぜつ)になるからか、真相は彼のみぞ知る。


「確かに、そうですね。三層も心理的に余裕を持てるようになったら、次は四層に慣れてもらいますか」


天都の意見に同意し、否笠は今後の方針を決定した。

全て順調にいけば、いずれ下層の咎人にも引けを取らなくなるだろう。

まぁ、何はともあれ問題は四層からなのだが・・・・・・。


(まぁ、その時になってからでないとなんとも言えませんか)


今できるのは、二人をできうる限りサポートすること。

惜しみも無く二人に知識を与えること。

それが、自分にできる精一杯のことだ。


奥の壁が歪む。テレビには二人の姿が無い。戻ってきたのだろう。

否笠は立ち上がり、多少疲労の色が見える二人に微笑みかける。


「お疲れ様です、二人とも」


いつもと同じように二人を迎えた。



■ ■ ■



「美羽! 蛍! こっちこっち」


日曜日。僕たちは奏に連れられ、街のショッピングモールに向かっていた。


三層に赴いた感想? 色々疲れたの一言だ。

あの後、美羽と一緒に100体近い咎人を相手したのだが、いかんせん数が数。

身体を動かす美羽と違い、僕はどちらかと言うと頭を動かす。毎回リアルな想像を要求されるので、その分脳に負担がかかる。


将棋と同じだろうか。プロの棋士も一回の対局で数㎏体重が落ちるとかテレビで言ってたな。

動かないといっても、疲れないとは限らないんだ。


桃花に戻った後も、天都さんに一言二言注意を貰った。


『動きに無駄がありすぎる』『躱せる攻撃はなるべく躱せ』『自分が不死身だと思うな』


まとめると、僕がこと防御に対して認識が甘いということだ。

これは僕自身も内心反省していた。万全の体勢で殺し合いに望むのが堅洲国だ。その意味で昨日の僕は隙を見せすぎていた。

次からは身を引き締めて戦わなければ。


そんなことを考えながら三人で歩いていると、目的のものが見えてきた。


「もしかして、あれが?」

「うん! あのカラフルな看板、間違いないよ」


小さなブラックボードに、カラフルな装飾が施されている。

その近くにはポップな雰囲気の店。

店にはガラス越しにクレープの標本が飾られている。計20個のクレープ。安いものは300円から、高いものは800円のものまである。

この一番高いものが、奏が言っていたクレープだろう。

どれを選ぶかはあらかじめ決めていた。


「いらっしゃいませ」

「すいません、特盛りクレープを三つください」


店員の女性の人に、奏が食べたクレープを全員分注文する。

3分後、人の顔よりも巨大なクレープが全員に行き渡った。

確かに大きい。持つとそれなりの重量がある。見えているだけで三種のクリームと五種類のフルーツが所狭しと飾られ、その上からイチゴとチョコのソースがかけられている。

これだけで一食分のカロリーがあるのでは? あまりのボリュームにそう疑う。


「こっちで食べよ」


美羽が近くのベンチを見つけた。

三人が座り、思い思いに口をつける。


「「「いただきます!」」」


まずは一口。形が崩れないよう慎重に。

できたてということで生地は温かい。そこにクリームとイチゴの味が合わさる。

甘い。クレープだから当然か。


食べ進める。バナナや、ミカン、ブルーベリー、マンゴー。どうやら層によって中身が変わるようだ。

クリームの種類も同様。上は生クリーム、中段はカスタードクリーム、そして最後にチョコクリームと変化する。

食べていて楽しいとはこういうことか。仮にも飲食店で働いている身として勉強になる。


総評すれば、いろんなクレープを混ぜあわせた万能クレープかな。

量はけっこうあるが、飽きさせない工夫が随所に見られる。

甘い物を食べ続けると舌が慣れるのか段々甘さを感じなくなることがあるが、このクレープにはそれがない。

その点に関しては果物がいい働きをしている。時折酸っぱい果物が顔をだすが、一種の口直しなのだろう。


5分かけてようやく食べきることができた。

舌もお腹も大変満足している。奏の舌を(うな)らせたのは本当だったようだ。

全員食べ終え、美羽と奏が雑談に入る。


「クレープ美味しかったね」

「うん! ここ他のクレープも美味しいのよ。今度から週一で来ようかな~」

「そんなことしてたら、また金欠になっちゃうよ」

「うっ、」


図星をつかれたように固まる奏。当たり前の事だが、美味しいものを食べる分それに比例して金銭も使う。

それが原因で奏もよく月のお小遣いがすぐに無くなるのだとか。


「あ、あはは。そうだね、節約します・・・・・」

「うん、それがいいよ」


しゅんと落ちこむ奏。

しかしすぐに立ち上がった。


「よーし、せっかく来たんだしこれから買い物しよ!

前から狙ってた服があるんだよね、白の可愛い奴。

美羽ちゃんにもきっと似合うと思うんだよ。どう一緒に?

あ、蛍も来てね。つけて欲しいアクセサリーがあるんだ!」


相変わらず立ち直りが早い。感情を切り替えるのは奏の得意なことだ。

僕たちの答えも決まってる。


「うん。いいよ」

「僕も付き合わせて貰うよ」


僕たちの返答を聞いて、奏が嬉しそうに目を細める。


「OK!そうと決まれば善は急げだ。ちょうどこの下の階だからエスカレーターで降りよ」


そういうと僕たちの手をぐんぐん引っぱっていく奏。

いつもの光景。いつもの日常。いつもの三人。

それが、これからも続いてくれることを、ただただ願うだけだ



こんな感じで、美羽と蛍のW主人公視点で物語が進みます

次回、バドミントン

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