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自灯籠  作者: 葦原爽楽
自灯籠 千紫万紅の夏休み
175/211

第九話 約束・前編

前回、一滴でも



二つの足音が白い廊下に響く。

やがて突き当たりにある扉が開き、二人を受け入れる。

開いた先は庭園の如き室内。

一直線に続く道。その右左に流れる水路。そして咲き誇る花々。

天幕の下がった奥で座っていた人物は、立ち上がり手を振った。


「やあやあ、この前ぶりだね否笠。そして天都君。

息災だったかな?」

「この前ぶりですねシェーレ」

「お久しぶりです」


名はシェーレ。

ニライカナイにある粛正機関・ガーデナー。その頭首(仮)。

いかにも弱々しい肉体に、ダボダボな服を着て、その整った顔立ちを台無しにしているようにも感じる外見。


その対面にいるのは二人の男性。

一人は否笠。そしてもう一人は天都。

桃花の粛正者である二人は、シェーレに連絡+会話をするために、ニライカナイに訪れていた。


「さあ、座るといい。

熾天使・ファルファレナを見事粛正したんだって?

その時の話を是非聞かせてくれよ」

「ではそうさせてもらいましょう。

天都さん。貴方もお座りになったらどうですか?」

「いえ、俺はこのままで大丈夫です」


否笠の言葉を断る天都。

いつも以上に丁寧な物腰は、天都を知る者からすればどこか違和感がある光景だろう。


「粛正は無事完了しました。といっても封印ですけどね。

高天原の援軍が成し遂げてくれました。

いやはや焦りましたよ。実は私たちが粛正しにくることが計画に含まれていましてですね。

覚醒した彼女相手には苦戦しました。こうして生き残れたのが不思議なくらいです」

「へえ? そうなのかい天都君」

「はい。一時は全滅の危機に陥りました。

百王に匹敵するほどの霊格を有していたことは確かです」


シェーレから天都君と呼ばれ、どこか居心地が悪そうな具合で天都は説明する。


「そうか。あいつらに迫るか。

これは僕たちも見通しが甘かったね。たかが熾天使と見くびるんじゃなかった。

時々いるんだよ。そういう輩が。

大多数の中に隠れた本当の天才。

砂粒に埋もれたダイヤモンドみたいな、稀有な存在がね」


その言葉に否笠は苦笑する。色々思うことがあるらしい。

シェーレは続ける。


「それで。天都君は今回なんで――

ああ、そろそろ30年か。

時が経つのも早いものだね」


言いながら、その最中に答えに気付いたシェーレは、苦笑しながら天都に聞く。


「墓地にはもう行ったのかな?」

「いいえ。これからです」

「否笠。老人たちの会話に天都君を付き合わせるのも悪い。

自由にさせてあげたらどうだ?」

「その通りですね。天都君、挨拶だけならもう充分です。

彼女のところへ行ってあげてください」

「わかりました。ありがとうございます」


一礼をして、そして天都はその場を去って行く。

その姿が消えるまで、否笠とシェーレは彼を見届け、同時にあの日を思い出していた。



そう、全ては30年前。

このニライカナイで、天都契の全てが決まった。



■ ■ ■



30年前。ニライカナイ・ガーデナー。

晴れ渡る晴天。絶叫と嬉声が入り混じった喧噪。舞い上がる火炎の火花。混沌の坩堝。

その日も、いつも通り世界は存亡の危機を迎えていて、ガーデナーの粛正者はその対処に追われていた。



「報告。第五南地区で階層破壊爆弾が連鎖爆破しています」

「積乱緑雲発生。25秒後に論理攪乱雨が降り注ぎ、辺り一面の世界秩序がバグってしまいます」

「七大天使・アズラーイールが例のごとく暴れてます! 既にニライカナイの3%が崩壊しました」

「南南東の方角で黒騎死病魔群の一つ、病魔・フリークス発病。半径60メートル以内の奇形化確認。ただちに消毒準備が必要です」

「放浪宇宙式 A:Y:Z観測。数時間後に現行宇宙論の書き換えが行われます」

「戦王・サンバラが果たし状を突きつけてきました。応答しなければニライカナイの住民を皆殺しにするそうです」



相次ぐ叫び声にも似た報告。そのどれもが放っておけば、ニライカナイに大規模な破壊をもたらす超災害。

そして窓の外から聞こえてくる悲鳴、絶叫。そして爆発音。

大気を震わせ、振動が走り、遙か遠くにキノコ雲が幾つも見える。

路上は血に溢れ、まるでパンデミック映画のように死体の山ができている。

全ては混沌。なべて世は平和なり。



報告を聞き届けたシェーレは、諦観とも愉快ともとれる笑顔を湛えて言う。


「うん。皆、適当に対処してくれ」


言われるまでもないと、既にガーデナーの粛正者は総出で対処に当たっていた。

一人優雅にコーヒーを飲むシェーレ。その姿を見て、近くのソファーに座っていた男性は肩をすくめた。


「相変わらず適当ですね。

それで回るのですから、ガーデナーは不思議なものです」


呆れているのは一人の男性。

30代前半といったところか。肌には老齢による線が一つも見られず、未だ青年の枠に収まっている外見。

黒いジャケットを纏い、サングラスもつけない裸眼のままで、鋭い視線をシェーレに向けている。

誰であろう、若き日の否笠である。

彼がニライカナイにいる、その理由は、


「ははっ、お前にとっては研修にはならないか」

「ええ。君に『粛正機関の活動を学ばせてくれ』と頼んだことが間違いだったようです。

環境も、部下の扱い方も、まるで参考になりませんね」


そう。見学のため。

このたび、否笠はとある理由により、粛正機関を一人で営むことになった。

しかし、否笠自身は経験が乏しい。

単純に咎人を殺していればいいわけでもない。柔軟な対応や交渉も、時には必要になるのだろう。


ゆえに咎人との交戦や対応など経験豊富で、名目上粛正機関のトップに位置するガーデナーを見学しにきたのだが・・・・・・

頭首(仮)がご覧のように適当で、かつ部下が非常に優秀なこの粛正機関は、否笠の想像とはかけ離れていた。


そもそも、ニライカナイという環境自体が特異なものだ。

数多の鼠達が群雄割拠し、生活を営むこの空間は、当然堅洲国のバトルフィールドとは違う。

そこで活動するガーデナーと、堅洲国のバトルフィールドのみで活動する葦の国の粛正機関では、その差異は際立つ。


野球でピッチャーを目指す者が、キャッチャーの練習を勉強するようなもの。

分担場所が違う。到着地点がズレている。

学べることはあるだろうが、本質から遠い場所にある。


「といっても、あなた以外に当てがないのも確かです。

ここは私が妥協して、葦の国の粛正機関でも導入できる点を探すしかないでしょう」


仕方ないと、否笠は髪を弄りながら答える。

『お前からは何も学べないが、俺が努力してなんとか学べる点を見つけてやるよ』

否笠は意識していないが、言葉の裏にはそんな意が込められているようでもある。


シェーレはもちろんそれを読み取っているが、それに対して苛立ちや不快感を抱くことはない。

否笠がこんな人物であることは昔から分かっているし、慣れている。むしろ丸くなったほうだ。

そもそもシェーレ本人が他者から見下されようと、特に気にしない性格をしている。

フラストレーションとは無縁の気質。それゆえ否笠とも心置きなく付き合える。


「そうしてくれると助かるな。

ここは一日中厄介事が飛び込んでくるからね。

その過程で見つかるものもあるだろうさ。

なにより、君が仕事を請け負ってくれるなら、僕も少しは楽ができる」

「楽って、貴方いつも座って指示出してるだけじゃないですか。しかも雑な」

「雑に見えて詳細な指示をしているんだよ。

無駄を省いたシンプルな言葉で、10以上の意味をたくみに含ませている。

長年の経験で出来上がった技だ」

「どうだか」


呆れながらも、否笠は慌ただしく動き回る粛正者たちの様子を見る。

有言実行。一つでも学べる点を探すために。

このだらけた頭首とは違い、ガーデナーの部下はほんとによく働いている。


報告を聞いた粛正者たちは、それぞれ分担し、仲間を誘い、一人以上の多人数で粛正に当たっている。

そう、一人以上で。


ガーデナーの粛正者は日々咎人と戦っている歴戦の猛者。

熾天使クラスの顕現者もいる。いや、大多数を占めている。

その位階にいる者たちですら、単独での活動を避けている。

それすなわち、一人では死の危険が増すということ。


不測の事態にいつ遭遇するかは分からない。

同格の間では相性の問題が出てくるし、相手が多人数の場合一人だと苦しくなる。

それゆえ、二人以上の人数で事に当たっている。


その理想が高天原。部隊を組んで、強力な咎人を討滅する。

人材が豊富な彼らだからこそ出来る芸当だ。

しかし理想は理想。人数の少ない粛正機関に、部隊を組むなど不可能。

だからこそ、人数の少ない所は工夫して、咎人の粛正に当たる。


なんにせよ、単独での粛正は無謀。咎人の粛正は最低でも二人。

まず一つは学べたと、速やかに脳内にメモする。



否笠が観察していると、暇そうにしている横からシェーレが口を挟んだ。


「それにしても、『否笠』か。

なんとも執着した名前をつけたもんだな。

そんなに、()()()が気に入ったのか?」

「・・・・・・まさか。

近くにいたのが彼女だけだから、適当にあやかっただけですよ。

観察の邪魔をしないでいただきたいですね」


不機嫌に答える否笠。

その声に軽い殺意が込められていることにシェーレは驚き、次に苦笑した。


(どうやら相当影響を受けたようだな)


変わっていく友人の姿に複雑な心境を抱きながらも、邪魔をしないように自分の仕事に集中する。

否笠もそれ以上の言及がないと分かると観察に戻る。



その時だ。


「おい、ぼんくら頭首。

暇そうだから仕事持ってきたぞ」


遠くから、何かを片手に持ちながら一人の男性が歩み寄ってきた。

奇抜な衣装。多数の装飾品をつけ、歩く度にジャラジャラと金属音が鳴る。

仮にも頭首をぼんくらと呼ぶのは、仲の良さなのかただ単に信頼してないのか。


「ほら、言いたいことは自分で言え」


そう言って、否笠とシェーレの前に、持っていた人物を放り投げた。

床に転がった人物は、怪我でもしているのか苦悶の声を上げ、顔を上げる。

顔立ちから、その人物が少年の年齢であると知る。

端正な顔は煤と血に塗れ、殴られた痕が残り、ただ事ではないことを知らせる。


少年はなんとか起き上がると、二人に向けて勢い良く頭を下げた。


「お願い、します。

姉さんを助けてくださいっ!!!」



■ ■ ■



「ああ、今聞いた話を整理すると、だ」


少年から一切を聞いたシェーレは、噛みしめるように言葉を吐き出した。


「君のお姉さんは、突然現われた組織に連れ去られたというんだね。

だが君たちは極めて平凡に暮らしていて、人の怨みを買ったような覚えはない。

お姉さんは君に逃げろと言って、そして君はその通りに逃げて、結果そうなったと」


ボロボロの服と顔の少年を指す。

痛みが引いたのか、少年は先ほどよりも落ち着く――ことはなく、むしろ水を得た魚のように、姉を助けてくれと激しく懇願を続けた。

少年の声は鬼気迫る迫真のもの。

とても嘘だとは思えない気迫を有していた。


シェーレは一旦話を区切り、少年を連れてきた人物に視線を向けた。


「マックス、君が関わったのならなぜ僕たちに彼を寄越すんだい。

帰還途中だったのなら、そのまま助けてあげればよかったのに」

「シェーレ。三徹の俺に次働けなんて言ってみろ。てめえの眉間打ち抜くぞまじで」

「アハハゴメンヨスキナダケヤスムトイイ」


どこから取り出したのか、いつの間にか銃口をシェーレの頭に突きつけるマックス。

棒読み気味な頭首から許可を貰ったあと、彼は舌打ちしながら、そのままどこかへ消えていった。


「ふぅ、危ない危ない。まったくなんて奴だ」

「無能な上司の脅し方を知ってる、よくできた部下ではありませんか」

「・・・・・・・・・」


否笠の言葉に反論できず、苦い顔をするシェーレ。

誤魔化すように、再び少年に向かい合う。


「君――ああ、ケイと言ったかな?

ケイ君。一通り君の話は聞いたが、その中で気になる単語がいくつかあった。

もう一度、詳細に、君が見た事を教えてくれないかな」

「・・・・・・はい」


問われた少年は、呼吸を整えながら答える。


「俺と姉さんは今日、家でじっとしてたんです。

数時間後に積乱緑雲が降るって放送がありましたから。

けど、突然大きな音がしました。

気付いた時には家の防壁を破られて、扉を蹴破って奴らが入ってきたんです。

全員が白いスーツ姿で、武装していて、いきなり襲いかかってきたんです。

抵抗しましたが数の差で押し切られて、姉さんを連れてかれて。

『これで魔道具に捧げる巫女が手に入った』て、奴らは言ってました」


血が滴る程に握りしめた手は、少年の悔しさがそのまま滲み出ている。

それを見ながらも、シェーレと否笠は考察を深める。


「白いスーツ、ね。

服は所属団体を表わす目印の一つだが、それだけじゃあどこの団体なのかは分からないな。

それより、『巫女』と『魔道具』か・・・・・・」

「一応お聞きしますが、貴方のお姉さんは巫女を生業(なりわい)としていたのですか?」

「いえ。そんなものと関わったことすらありません。

特定の宗教を信仰しているわけでもありません」

「ですよね。一般的に言われている巫女とは違ったものと思った方がよさそうです。

それで、『魔道具』というものはなんですか?

聞いたことがないので説明をお願いしたいですね」

「このニライカナイの中でさえ、超常という烙印を押されたモノの総称だよ」


少年の代わりに、背後にいるシェーレが答えた。


「魔道具は全て、名称の前に№の文字がつく。

その形状は様々。住居や本だったり、生物だったり。物質ですらない魔道具もある。

制作者は不明だ。コシャル・ハシスの職人達が秘密裏にこしらえたとも、今は姿を消した『神童』が造り上げたものだとも言われている」

「危険なんですか?」

「危険なものも多い。

けど安全に活用できるものもある。そんな立ち位置だね。

僕らとしては回収して全部封印したいけど、魔道具を収集しようとしているコレクターも多くてね。

彼らと争奪戦を繰り広げることもあるんだ。困ったねぇ」

「ふむ。抽象的には理解出来ました。

なので一例を挙げてくれませんか?」

「そうだね。じゃあ№11 『発芽郷』を紹介しよう。

これは外から見れば何の変哲もない地面だ。

2.5ヘクタール程度の土地で、中央に一本樹木が生い茂っているが、それ以外の特徴はない。

だけど、この土地に()()()()()()()()()という特徴があってね。

例えば金塊を埋めれば金塊の実を結んだ木がなる。

人間を埋めれば人間の実を結んだ木がなる。

本当だよ? 本当に()()()()()()()()()()()。枝の先端から、首吊り死体みたいに生えてるんだよ」

「・・・・・なるほど、大体は理解できました」


総じてろくでもないものにカテゴリーできそうだということが。

一拍置いて、シェーレは自身の考察を口にする。


「推測するに、その白スーツの連中は魔道具を集めるコレクターの集団だろう。

一人で集めるよりも大勢で。人手は多い方がいい。当然の考えだ」

「ですが、結局最後には殺し合うのでは?

自分だけがコレクションを所有したいという欲はあるはずでしょう。

直に内部分解するのが目にみえますね」

「それまでは仲良くしましょうということさ。

魔道具が全部揃うまでは足並み揃えて協力し、全部揃ったら争奪戦開始。

勝ち残ったら一人が全てを手に入れる。簡単な話じゃないか」

「確かに、そうですね」


ひとしきり納得し、目を少年に戻す二人。

事情は分かった。少年の境遇も理解出来た。

しかし、そもそもの話がまだ残っている。


「ケイ君。僕たちガーデナーは慈善団体ではない。

便利なお悩み解決所じゃないんだ。僕たちの仕事はやりすぎてる馬鹿を葬ることだけ。

それ以外はする義務はない。例え目の前で大勢の者がなくなろうが、素知らぬ顔をして通り過ぎることだってある。

それは、分かっているかな?」


粛正者は正義の味方ではない。

咎人を殺し、それによって秩序の安寧を図る。

一言で言うのなら、邪魔な者を消す仕事。暗殺者と変わらない。

それが時によって人々を助ける結果に繋がることもあるだろう。

だがその本質は、人命救助とはかけ離れたところにある。

同じ顕現者の保護ならまだしも、それ以外の存在を助ける意味は皆無に等しい。

連日数兆~数京単位で命が消し飛んでいるニライカナイでは、それがより顕著だ。


冷たく言い放ったシェーレに対して、ケイはそれでも諦めなかった。


「はい。それでも、頼れる人が他にいないんです」


万感の想いを込めて、絞り出すように放たれた言葉。

例えシェーレに断られたとしても、自分一人で姉を取り戻すという覚悟が込められている。

それを聞いて、シェーレはため息と共に笑みを零した。


「ふむ、分かった。

こんなにも必死に頼まれたら、とても無下にはできないな。

いいだろう。できる限り力になろう」


その言葉に、ケイは驚きと、精一杯の感謝を伝えるために頭を下げる。

シェーレはうんうんと頷き、

そして、にこやかな笑顔を浮かべて、


「この否笠が、君のお姉さんを助け出すと約束しようじゃないか!」

「は?」


急に話を振られて、否笠は素で驚いた声を上げた。


「だってお前、僕たちの仕事を学びたいんだろう?

そのためにうちに来たんだろう?

ただ見学するだけで帰ったらもったいない。実際に働いていけよ」

「・・・・・・君、そういって自分が働かない口実にしてませんか?」

「シテナイシテナイ。ダンジテシテナイ」


頭と手をブンブン振って、棒読み気味に答えるシェーレ。


「否笠。何事も実践だ。

教科書に書いてある内容を全部暗記した奴がいて、ではそれを実際にやってみろと言われて、そいつができると思うか?

習うより慣れろ。実践を伴わない知識なんてガラクタも同然さ」

「言いたいことは分かりますが、論点をすり替えないでください。

依頼を受けた君自身がやらないのですかと聞いているんです」

「仮にも頭首が安々と動くわけにもいかないだろう。

ガーデナーに何かあった時対処しなきゃいけないのは僕だし。

それに、本音を言うとなるべく危険な目には遭いたくないんだ」

「なるほど、よく分かりましたよこのクソ偽善者が」


最高の笑顔で毒を吐く否笠。

この屑を反面教師にすれば、さぞ素晴らしいリーダーが出来上がるはずだと、また一つ学んだのであった。

ため息をつき、否笠は少年に向かい合う。


「ケイ君。肯定するわけではありませんが、確かにこの屑では貴方のお姉さんを助け出すのは荷が重いでしょう。

なので私が手助けします。結果は保障できませんが、それでよろしいですか?」

「はいっ! ありがとうございます」


伸ばした否笠の手を掴むケイ。


「頑張ってくれ。朗報を待ってるよ」


背後から聞こえるその言葉に、否笠は握り拳を作り、勢い良く親指を下に向けた。



次回、中編

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