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自灯籠  作者: 葦原爽楽
自灯籠 千紫万紅の夏休み
173/211

第七話 お姉ちゃんの悩み事

前回、さっさと結婚しろ



はぁ、と。ため息をつく一人の女性がいた。

そこは食堂。多くの同士達が友人と共に食事を楽しみ、気持ちの良い笑顔と空気で満ちている空間。

であるのに、その女性の周囲だけは重苦しい空気に包まれている。

女性の顔は超難問の数式を解いているかのように曇り、眉間にしわ寄せ、時々頭を抱える。

しかしその美貌は曇りはせず、苦悶の表情を浮かべても清楚な美しさが損われることはない。


既に食事は食べ終え、米の一粒まで残らない空の食器を、意味も無くじっと見つめる。

トントントンと、これまた意味も無く机を指でリズミカルに叩く。

都合何度目かになるため息をつき、食器を片付けようと立ち上がりかけて、


「いつになく疲れた顔をしてるね。何かあったの? ロウ」


突如として聞こえた男性の声に、女性はその動きを止めた。

声をかけた男性は、女性の正面の席に座る。

名前を呼ばれた十二天の一人、ロウは男性の姿を捉える。

ロウにとって、見知った顔だった。


「ジュリアス。

ええ、少し悩み事があって」

「悩み事ね。

良かったら俺に話してみない?

話すだけで楽になることだってあるよ」


ジュリアスと呼ばれた男性は、ニコニコと少年のような柔和な笑みを浮かべる。

女性のように長い白髪。傷一つない美麗な肌。透き通るような瞳の青。

手弱女(たおやめ)のように細い身体と温厚な性格に反して、一人称は俺。

図書館で司書をしている優しいお兄さん。そんなイメージが一番当てはまる。

魂まで善人色に染まっているイケメンだ。事実、彼に惚れている女性は多い。


そんな彼らが存在する、ここは高天原。

強力な咎人たちと戦い、抑え、葦の国を防衛する最前線。

神に随う随神(かむながら)たちが住まう場所。


ロウも、ジュリアスも、その神随の一人。

もっといえば、同じ部隊の一員。


組織や集団の人数が多くなれば、役割ごとに人員やチームが分けられる。

随神もそう。対咎人との戦闘のため随神たちは、割り当てられた部隊に属し、各部隊がそれぞれ粛正に当たっている。

隊を率いる部隊長は十二天と呼ばれる実力者。必然的に隊の数も十二。


しかし隊長一人に業務と責任が集中するのを避けるため、各隊長の下には彼らを補佐する副隊長が存在する。

ロウの率いる部隊――第七部隊の副隊長こそ、今目の前にいるジュリアスだ。


そのジュリアスの好意を受けて、ロウは申し訳なさそうに首を横に振った。


「いいえ。大丈夫よ。

身内事だし、貴方の貴重な時間を潰す必要はないわ。

ごめんなさい、心配かけて」


100%の善意と謝意をもって、ロウはジュリアスの申し出を断る。

そう。ロウが抱えている悩みはあくまで個人的な問題であり、それは彼女の部隊員にまで影響を及ぼすものではない。

彼に心配をかけないためにも、これからは今までにも増して鉄面皮を強化しようと決意する。

だが、ロウの意に反してジュリアスは退かなかった。


「けど、さっきから君は悩んでいて、そして今も解決はできていないんだろう?

それで業務にも支障がでたらさらに困るんじゃない?

それとも・・・・・・俺じゃあ君の相談相手にもなれないのかな?」

「あ、そういうわけではないの!

その・・・・・・話を聞いて貰える?」

「うん。そうこなくっちゃ」


気まずそうにするロウとは反対に、嬉しそうに身を乗り出すジュリアス。

多少強引に迫らなければ自分のことは話さない。彼はロウと長い付き合いゆえそれを知っている。


「それで、一体何に頭を悩ませているんだい?

咎人のこと? 高天原の業務のこと?」

「・・・・・実は、妹のことで」

「妹さん、エクシリアちゃんのこと?」


副隊長であるジュリアスは当然、ロウの妹であるエクシリアのことを知っている。

時々会うこともあるし、ロウが度々口にしている。

あの子に何かあったのか。


「もしかして、咎人と交戦して負傷したんじゃ――」

「いいえ、そんなことはないわ。最近は妹も慎重になってきたし、親方様も見てくれているから」


それを聞いてジュリアスは安堵した。大事がないならそれに越したことはない。

では、妹の何が気に掛かっているのか。


「この前ね、近くの平行世界へエクシリアと一緒に買い物に出かけたの。

ほら、私の世界って三人しか人がいないから」

「ああ。君と妹さんと親方様の三人だっけか」

「ええ。それで、あの子と映画見たりご飯食べたりして、1日過ごしてたの。

それで道中を歩いていたら、ポスターが目に映って」

「ポスター? どんな」

「なんの変哲もない、警察職の勧誘ポスター。

普段なら見過ごすものだけど、その時はそれを見て少し思った事があって、

その時、あの子に聞いたの」

「なんて?」

「『将来、貴方は何がしたい?』って」


妹が将来に対してどんな夢を描いているのか。ロウはそれを知りたかった。

エクシリアくらいの年なら、それに対して大なり小なり考えているものだ。

姉としても、それを知りたいと思うのは当然のことだろう。


「そして、その答えは?」

「・・・・・・・・・。

『粛正者以外に何があるの?』って」

「ふむ。なるほど」


それがロウの悩みだと、ジュリアスはここで理解した。

恐らく、ロウの予想としてはエクシリアちゃんにできるだけ安全な暮らしをして欲しいと思っているんだろう。

できるだけ、咎人との抗争に巻き込まれないような。

それは、高天原で多くの世界を観察したからこそ育まれた知見。

自分の世界だけしか知らない、以前のロウでは持ち得なかった発想。


だが、無情にもエクシリアちゃんの解答は、ロウの安息の願いとはかけ離れたものだった。


しかしエクシリアちゃんとしても当然のことを言ったまでだろう。

今まで何十何百と咎人を殺してきた。

それはこれまでだってそうだし、これからだってきっとそう。

葦の国の住人のため、時には咎人たちのために彼らを殺す。

その作業に疑問を挟むことなど決してない。


「そうだね。それは大きな問題だ。

顕現者となってしまった者の将来は大きく限定される。

保護されるか、咎人になるか、その二択。

日常生活に溶け込んだとしても、明かしてはいけない秘密をずっと抱えているような生活を送ることになる。

迂闊(うかつ)に恋もできないからね」


ジュリアスはロウの意見を首肯し、同時に問題の根幹部分を捉え、口にする。

本来全ての者に開かれている無限の可能性。顕現者になってしまえばそれが大きく限定される。


高天原か粛正機関に保護され、制限があろうと再び日常を送るか。

自らの力を以て無道の堅洲国に赴くか。


後者はともかく、前者を選んだ者たちは、さらに二択を迫られるはめになる。

このまま保護され続けるか、自らも粛正者となって咎人と戦うか。


常日頃から咎人と戦い続ける高天原の本音としては、保護した顕現者たちにはぜひ自分たちと共に戦ってほしい。

しかし、もちろんそれは強制できるものではない。死地に赴いて敵を殺せと、何の事情も知らず顕現を開花させた彼らに言うなど、鬼畜の所業でしかない。

が、自分は何もせず守られ続けるということが、彼らの精神衛生上良くないものであることも知っている。


結果、どちらにしても保護された顕現者たちに苦痛を強いてしまう。

高天原としても相応の対処はしている。結果、保護者たちの不安は限りなく0に近い数値を出しているのだが、決して0にならないのが現状だ。


エクシリアの場合もそう。粛正者以外に将来何があるのか。彼女の言葉は、この問題を上手く表わしている。

しかし、ロウが言うには強制されて嫌味たらしく言った風ではないらしい。

悪意などない単なる疑問。顕現者となってしまった以上そうなることが当然だろうと、言葉に込められた意味を読み取る。


「あの子はいつもそうなの。

与えられた仕事を機械のように淡々とこなして。

あくまで私が勝手に思ってるだけなんだけど、生きていることが事務作業にしか過ぎないんじゃないかって。

『仕方ないからやってるだけ』って、あの子が言っている気がするの」

「なるほどね」


その言葉を噛み砕きながら、ジュリアスは相槌を打つ。

ロウの言い方。姉妹の心配をするものではなく、まるで子を案じる親のものだ。

ロウは頭を抱えて、さらに告白する。


「けど、私がこんなこと言う権利がないことも分かってるの。

本人の意思があったとはいえ、エクシリアが粛正者になることを許可したのは私だし。

・・・・・・私も、咎人を殺す方法しか教えてあげられなかった」


今まで粛正者としての経験を妹に積ませたのは、ロウにとっては自己防衛のため。

もしも堅洲国から咎人が襲ってきても、ロウが不在の間自分の身を守ることができるように。

しかしエクシリアにとっては違うようで、いつしかそれが将来の道となっていた。


「なるほど、なるほどね。

うん、分かった」


ジュリアスは何度も頷く。その顔は、既に解決策を見つけ出したかのような晴れやかさがある。

その反応にロウは思わず食いついた。


「もしかして、どうすればいいか分かるの?」

「うん。ロウ、この後時間あるかな?」

「私? ええ、今日は特に咎人の粛正要件はないけれど」


それを聞いてジュリアスは、


「よし、じゃあ本人に直接聞いてみようか」



■ ■ ■



その後、


「お姉ちゃん。ジュリアスさんも。お久しぶりです」

「久しぶり、エクシリアちゃん。ごめんね、わざわざ時間を取らせてしまって」

「いえ、お姉ちゃんとジュリアスさんの頼みですから」


エクシリアの丁重な礼に、ジュリアスは柔和な笑みで返す。

その横で緊張したように身体を縮こませているロウを除けば、近所のお兄さんと話す少女、その表現が相応しい。


ジュリアスとエクシリアは既知の仲。ロウを介して今まで何度か会ったことがある。

戦術指南や堅洲国での立ち回り、高天原での職務など、彼女がジュリアスから学んだことは多い。

エクシリアも彼に尊敬の眼差しを向けている。

だから、彼の突然の訪問にも迷うことなくOKと返答した。


縮こまっている姉に困惑の目を向けながらも、エクシリアはジュリアスを中に入れ、おもてなしの準備をする。

数分後、エクシリアは机を挟んで、ジュリアスとロウに対面しながら座る。


「今日は一体どういったご用件でしょうか?」

「うん、それなんだけどさ。実はロウとエクシリアちゃんのことで。

これはどうしても直接話し合わないと解決しないなって思ってね」

「私と、お姉ちゃんのこと?」

「うん。さあ、ロウ。ここからは君の言葉で」


話を振られたロウは、一呼吸間を置き、それから静謐な態度のまま話始めた。




全てを聞いたエクシリアは、目を閉じて考え込んでいた。

姉がエクシリアに抱える想い。

顕現者のこと。これからのこと。咎人のこと。姉としてのロウの想い。

その全てを受け止めて、彼女はやがて目を開く。


「お姉ちゃん。あの、怒らないで聞いて欲しいんだけど・・・・・・」


沈黙を破ったその言葉に、ロウは身構える。

エクシリアは困惑か憂鬱か、なんとも言えない表情で口を開き、



「お姉ちゃんって、案外大したことないんだね」


「!!?」

「ふはっ」


その言葉に、ロウは目を見開き、ジュリアスは噴き出した。


「はは、ははは、ははははははははははははは!!」


そのまま弾ける哄笑が家内に響く。大きく口を開けるが、端正な彼の顔立ちはそれすら美麗なものに変えてしまう。

ロウもエクシリアも、思わずジュリアスを見る。


「いやはや、熾天使でさえ恐れるロウを『大したことない』か!!

これは面白いことを聞いたよっ、はは、傑作だ! はははっ」

「ちょ、ちょっと、ジュリアス!」

「ごめん、ごめんよロウ。

予想の斜め上の解答なもので、つい、ね」


哄笑を抑えようとするジュリアス。しかしそれでも肩が上下し、歯の隙間から小さく高音を零す。

どうやら笑いのツボにはまってしまってようだ。

数秒後、落ち着いた彼は2人に謝罪する。


「ごめん。第三者である俺が会話を中断させてしまったようだ。

さて、エクシリアちゃん。『意外と大したこと無い』。その台詞から察するに、これまで君はロウを素晴らしい人物だと思っていたということだよね。

それがなぜか、教えてくれないかな」

「はい」


呆然としていたエクシリアは、その言葉で我に返り、姉の方を向いて話始めた。


「お姉ちゃん。小さい頃のこと覚えてる?」

「小さい頃? それって、まだ私達が顕現を開花しなかった時のこと?」

「うん。まだこの都市が存在していて、そして罪人との戦争があったときのこと」


もちろん覚えている。忘れることなんてできない。

かつて、エクシリアとロウが住んでいたこの都市は、強固な監視社会が築かれた国家―すなわちディストピアであった。

別名、世界統合国家。その名の通り、全ての人間が一つに統合された国。


空間中に監視網が張り巡らされ、人の行動を逐一監視。

出生前診断や乳児期から行われる検査により、将来犯罪に至る可能性がある人間を前もって拘束する。それをおかしいと叫ぼうとも、絶対の正義が反論を押し潰す。

そこら中に張り巡らされた監視網が、人の行動を逐一監視。

最低限の感情を残して、それ以外を全て奪う無痛社会。人を憎むことも恨むことも止めて、結果怒ることも悲しむこともない。

自由と可能性と人間性を奪ったが、同時に人口増加、エネルギー問題、格差や食料難などのあらゆる問題が解決された。


ロウとエクシリアの姉妹はそのディストピア国家で、それを何の疑問も抱かず生活していた。

親と共に、一から十まで決められたその日々を。


争いはなかった。絵に描いたような平和が実現されていた。

寿命以外で死を迎えることはなかった。

笑顔という能面を貼り付けた人間しかいなかった。


幸福か不幸かと問われれば、間違いなく幸福に秤が傾いていた。

これこそ人類史の行き着く先であると、迷うことなく断言できた。


だが、その安寧の日々は崩壊を迎えた。

”罪人”と、国家から呼称された人間達によって。


ディストピアからの解放と自由を謳った彼らは、監視網を潜り抜け、徒党を組み、徹底的な抗戦を誓った。

その過程がどんなものかは知らないが、結果として国は滅んだ。


獲得した自由に熱狂した罪人たちは、静止の声も空しく、各々が生の証を示すために行動した。

殺した。傷つけた。犯した。

家屋に火をつけ、逃げ惑う人々に対して銃を乱射し、飛び散る血を全身で受け止めながら、流れ弾が味方に当たることすらいとわず殺し続けた。

それをして、自らは生きているのだと世界に叫んだのだ。


それを解放だと、自由などと呼ばれても、私達はそんなことなど望んでいない。

なぜなら生きることができたから。法を守り、慎ましく生活し、不自由なく生きていたから。


そうして姉妹の家族も殺され、魔の手が2人に伸びようとした際、現れ出たのは白銀の鎧を纏った誰か。

塵を払うように罪人たちを殺し、姉妹を抱えその場を去った。


そして、その後は、


「結局、罪人は全員死んだ。殺された。

お姉ちゃんの手で」

「・・・・・・」


ロウは、その言葉を真摯に受け止める。

横で聞いているジュリアスもその事実を知っているのか、驚く素振りはない。

エクシリアは続ける。


「私、あの時すごく怖かった。

あんなに優しくて清純だったお姉ちゃんが、顔中血塗れになりながら、手に屍骸を持って、1人残らず罪人を見つけ出して息の根を止めた。

あれ以来お姉ちゃんは変わった。笑顔を見せなくなって、正しい判断と正しい思慮と、正しさだけを追い求めるようになった」


エクシリアはそのときを思い返す。

親方様の庇護の元、罪人共を残らず火にくべたロウは、その次の日から人が変わった。

自他共に厳しく、特に自分に対しては一切の妥協を許さなかった。

まるで、今まで存在していたディストピアを体現するかのように。

ロウは、一切の罪人を裁く断罪者となった。


「それからお姉ちゃんはすごかったね。

顕現に目覚めて、堅洲国で咎人を粛正し始めて、それから高天原に所属して、たった一年で十二天にまで上り詰めて。

あっという間に雲の上の人になった」


規格外の才を持っていたと言ってもいい。

なにしろ顕現を開花してたったの数ヶ月で最上位の熾天使にまで到達したのだ。

顕現者の平均を大きく超え、その器はまさに天に相応しい。

エクシリアからすれば、至るべき領域に至ったのだと、姉の出世を喜ばずにはいられない。


「すごいって思った。尊敬した。

私もお姉ちゃんみたいになりたいって思って、だから私も粛正者になったの」


それは、ロウが初めて聞く心の声だった。

憧れの人。自分の目標であり、辿るべき道。


ロウはそれを嬉しく思うと同時に、恥ずかしさが胸の大多数を占める。

自分はそんな大層な人間ではない。妹の理想にはふさわしくないと。


いつ何時でも自分を律し、正しい事を正しいままに行い、そんな姉を理想として。

そして、今のエクシリアが出来上がっていった。


与えられた仕事を淡々とこなす事も。

生きていることを事務作業のように思う事も。

全て、姉のような人間になりたかったから。


「だからお姉ちゃん。心配しないで。

私が粛正者になったのはあくまで私の意思。

そもそも、私の将来を勝手に鑑みて、勝手に可哀想だなんて思わないで」

「ぅ・・・・・・ごめんなさい」


深々と、机に頭を沈み込ませるロウ。

いつもとは逆の立ち位置。そのせいか、終始一貫してロウの腰は低い。


話が収束に向かっている。その空気を感じたジュリアスは、その場を締めにかかった。


「どうやら、大丈夫そうだね。

ロウ。君の心配は杞憂に終わりそうだ。

エクシリアちゃんは君の想像よりもずっと強い子だよ」


ロウの肩に手を当てながら、本心からの賛辞を口にするジュリアス。

それから、向かいに座るエクシリアに提案をした。


「エクシリアちゃん。

君の予定が合う時でいいんだけど、高天原へ来てアルバイトしてみないかな?

将来君が随神になりたいのなら、いい経験になると思うけど」

「え、いいんですか!?」

「うん。僕たちの部隊は皆優しい人ばかりだし、なんなら堅洲国で皆と粛正も―」

「ちょ、ちょっと、ジュリアス! 私を抜きにして話を進めないで!」


仮にも隊長である自分を無視して進むなど、言語道断だとロウは話に割り込む。

それに対して、ジュリアスは笑みを崩さずに返す。


「と言われても、エクシリアちゃんも乗り気だし、僕たち慢性的に人手不足だし、新人の育成は早い内にしておくに越したことはないよ」

「そうだよお姉ちゃん。仕事に個人的な感情持ち込んでいいの?」

「そ、そんなことしてません! あくまで一部隊を管理・統率する者として、この場での軽率な判断は―」



普段通りの生真面目な調子を取り戻したロウに対して、ジュリアスとエクシリアは口を合わせてアルバイトの参加を支持する。

結局、渋々ながらもロウはエクシリアのアルバイトを認めるのであった。



次回、たった一つ

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