第四話 深淵・数・宇宙
頭が痛くなったらごめんなさい
前回、先輩と後輩
夏休みのある日。
なんの予定もなく、ただ家で休んでいる私――黒雲美羽。
室内の気温は30度を超えている。
しかし汗を一つもかかなければ、暑さにうなだれていることもない。
ソファーに座り、テレビやスマホを見るのでもなく、白紙のノートにシャーペンを持って向かい合っている。
ずっと前から思考を占めていることがあり、私はその解決のために熟慮していた。
私だって馬鹿じゃない。ここのところの急激な変化。異変。ファルファレナがいたからこれまでまともな考察ができなかったが、今日はそれを深く探ってみよう。
だって怖いだろう。自分の与り知らぬ所で、自分を巻き込んだ何かが進行しているなんて。
おそらくそれは、私の顕現にも結びついている。大した想念もなく顕現が開花したあの謎が、もしかしたら今日解けるかもしれない。
さて、考察すべきことは次の二点だ。
①黒い世界で出会う、私と似ているあの少女について
②私が不浄門を通して出会った霊体たち。彼らが私に対して友好的で、一部の者からは忠誠を誓われていることについて。もちろん私には彼らと出会ったことなどない
私の行使する魔術式『不浄門』は、善悪二元において悪の領域にいる霊体を呼び出す、一種の召喚式。
召喚というと床に五芒星を書いたり鳩の血を用意したりと、本来周到な用意が必要であるのが一般的だ。
だが不浄門はそれらの過程を一切無視し、霊体と接続する特権パスポート。
今まで、そうして彼等の力を借りた。これのおかげで私はファルファレナと互角に立ち回ることができたのだから。
しかしだ。そもそもの問題が残っている。
不浄門とは一体なんだ? 私はそんなもの、今まで一度も聞いたことがなければ見たこともない。
アラディアさんとの特訓中に、ぱっと思いついた私オリジナルの魔術。それ以上でもそれ以下でもない。
だけど、ファルファレナとすら互角に渡り合える超高等高位術式を、魔術初心者である自分が編めるのか? 魔術とはそんな簡単なものなのか?
魔術の専門家であるアラディアさんに相談したところ、そもそも、不浄門は魔術かどうかすら怪しいとすら言っていた。
顕現でもなければ、魔術ですらない。一体これはどんな分類に入れればいい。
そして、次にだ。
原理も正体も不明なこの魔術式から召喚された者たちについても、やはり頭を傾げる謎がある。
私が不浄門を介して狙った霊体を召喚したとしよう。
しかし、それら呼び出された悪魔や悪霊は、その悪性ゆえに召喚者に素直に従う者は少ない。
逆に召喚者を破滅に導こうとしたり、召喚されるなり襲って殺そうとするなど日常茶飯事。
そんな霊体たちが、私のような小娘に頭を下げて従うものなのだろうか?
分散の悪魔・コロンゾンは私を見てこう言った。
『久しきメルキレシャ』と。
メルキレシャが何を意味するのか。残念ながら調べてみても分からなかった。
名前なのか、称号のようなものなのか。分からないから一旦保留だ。
その前の、久しきという形容詞。そこから察するに、私と昔出会ったことがあるのではないか?
だけど私にはその悪魔と面識はない。会ったのは初めてだ。
たぶん、誤解したのではないだろうか?
コロンゾンが昔出会った存在と私が、あまりに似ていたから。
では、私は誰と似ている?
それは①で言った通り、黒い世界に存在するあの少女だ。
顔も、髪も、目も、体も、性別も。私と彼女には不自然な程に共通点が多い。
なら、つまり。不浄門を通して出会った霊体たちが忠誠を誓い友好的であるのは彼女に対してであって、私に対してではない。
一応、霊体たちに何か知らないか聞いてみた。
だが彼らは口をつぐみ、異口同音で
「残念ながら、それは言えない御約束です」
と言うのだ。怪しいことこの上ない。なぜ言えないのか。誰との約束なのか。疑問は深まるばかり。
・・・・・・これ以上のことは何も言えない。考えるのはここまでだ。
総括として、今回の考察で分かったことは。
私に似ていて、それでいて違うあの黒い少女が、全ての根幹にあるのではないか。
顕現も、私の過去も。
直接会ってみたい。話してみたい。
けどそう上手くはいかない。あの黒い世界は夢という形で現われる。
眠る度に黒い世界に行けるのかと聞かれれば、否と答える。
行ける日もあれば、行けない日もある。完全にランダムだ。
それに、何より。
あの少女が怖い。それが接触を遮る最大の難関になっていた。
覚醒し、羽化したファルファレナとさえ渡り合えたはずなのに、依然としてあの少女に対する恐怖は拭い切れてない。
彼女と向かい合った時点で、どれだけ闘志や気力を振り絞っても、嵐の前の蝋燭の如く吹き消される。
どれだけ心を武装しようと、あの目を見ただけで恐怖で潰される。声を聞いただけでへし折れる。
相対しようものなら、体が震え、すぐにでもその場から逃げ出してしまう。
それは本能ではなく、魂が覚えている恐怖。
これでは会話もできはしない。
謎は謎のまま、解決することを許してくれない。
このまま、何も分からないまま流されて進むのだろうか・・・・・・。
私はため息と共に、ノートを閉じた。
■ ■ ■
数について知識をつけよう。
夏休みのある日、蛍はそう思った。
動機は二つある。偶然にもその日は僕にとってなんの予定もなかった。奏や美羽と遊ぶ予定はなく、宿題もスケジュール通りに一日分を終わらせた。桃花では表の仕事も裏の仕事もない。
よって後は夕食を食べて寝るだけなのだが、それだけではいささか暇だ。
なので何かスマホで調べたい。そう思った理由が一つ。
そして二つ目。前々から数を戦術に応用したいと考えていた。
数、といっても僕が知りたいのは巨大数と呼ばれる分野だ。
例えば、那由多とか不可思議とか無量大数とか、あとゴーグル数が有名かな。100の100乗の100乗という、もはや訳の分からない数字。
これを戦闘に活かせないかと、エンケパロスとの戦闘後に感じたものだ。
数の概念を丸々操る彼の顕現・ヌメロス。そこから繰り出される攻撃の数々は、理路整然の暴力と呼ぶにふさわしかった。
あれを、自分も再現できないかと、ずっと思っていた。
だけどまとまった時間が少なくて、これまでまともに調べられなかった。ファルファレナの事で急がしかったから。
僕の顕現『想造』は物量や数で相手を押しつぶすことことに定評がある。
無数に武器を生み出したり、無数に自分の分身を生み出したり。他にも何かできることはないか、手探り状態だ。
だからこそ巨大数と相性がいいと思った。
一より二の方が、一人より十人の方が、戦闘では有利に決まっている。莫大な数の差は相手に拮抗することを許さず、濁流のように全て押し流す。
といっても、どこまで効果があるのか眉唾ものでもある。
数の概念を超えた咎人だって普通にいるし、ジェムとの戦闘では数字の大小の違いよりも、込められた力の量が重要だということが分かった。
つまり表記された数価など当てにならない。
この世は数学だけでは理解できないということだ。むしろもっと包括的な、諸概念を含めた視点でないと分からないこともある。
さて、さっそく調べていきますか。
スマホを取り出し、巨大数と調べる。
そしたら出てくる出てくる。とりあえず一番最初に出てきた検索結果を見てみようか。
・・・・・。
ふむふむ、なるほど。
まず自分の理解しているものはすんなり入ってきた。
カントールの提唱した順序数。それは自然数を大幅に拡張したもの。
まず自然数がある。1,2,3・・・・・と、自然数が無限に続くことは理解出来る。
順序数とは、自然数の最大値、それをωとすると、ω+1,ω+2・・・・・・と続けていけるということ。
それ自身より小さい順序数全体からなる一種の集合だ。
同じくカントールが唱えた、ℵなどの超限数とは大体同じものだと思ってくれれば良い。呼び方を変えただけだ。
仮にω+ωまで続けたとしてもまだ先がある。
ω+ωをω・2とすれば、ω・2+1、ω・2+2・・・・・ω・3・・・・・ω・ω=ω²・・ω²+ω・・ω³・・ω(のω乗)・・・・ω(のω乗のω乗の)・・・ω₁、ω₂・・・・・・ω[ω}・・・ω[ω[ω}[ω}・・・・・・}}}}が無限に続く。
ちなみに[ }というこの記号は下付き記号のことだ。ωの下に小さい文字でωが続いている姿を想像して欲しい。
その無限に続けた果てがε₀らしい。
さらにそのε₀も増大する。
ε₀¹、ε₀²、・・・・・ε₀(のω乗)・・・・・ε₀(のω乗のω乗のω乗の・・・・)・・・・・・・
ε₁は(0、1・・・・ε₀、ε₀のε₀乗、ε₀のε₀乗のε₀乗・・・・・・・・)
ε₂は(0,1・・・・ε₁、ε₁のε₁乗・・・・・・・)
ε₁、ε₂・・・・εω、εω²・・・・・εω(のω乗)・・・εω(のω乗のω乗のω乗の・・・・)・εω[ω]・・εω{ω{ω{ω・・・]]]・・が続いてようやくε[ε₀}になる。
ε[ε₀}、ε[ε[ε₀}}・・ε[ε[ε[ε[ε・・・・・}}}}とかこれまた永遠に続いていく。
比較的わかりやすい部類だ。この前数学の先生も簡潔に説明してくれた。その時のことはまだ覚えてる。
この前僕はローランと戦った時、最終的にこの領域まで次元を上ったんだから(最も、あれ以上に次元領域を上昇しようと無意味だったが)
εの行き着く先がζ₀であり、
そのζの行き着く先がη₀。
そしてηの行き着く先には、φ(ω,0)という、ヴェブレン関数φが登場する。
しかしこれが限界というわけではない。
二つ目の引数――φ(ω,0)の0を限界まで拡張すると、
φ(φ(φ・・・・φ(φ(1、0)0)0)0)
が限界らしく、
これをフェファーマン・シュッテの順序数Γといい、
φ(1、0、0)=Γ₀となって、これまた無限に、引数が一つずつ増えていく。その果てが小ヴェブレン順序数なるものらしい。
引数がω個になったものが小ヴェブレン関数ならば、引数が超限個になったものを大ヴェブレン関数と呼ぶ。
この上にも順序数崩壊関数やらが出てくるが、理解できなかったので一旦保留。
弱到達不能基数は、上で並べたものが遠く及ばない無限であり、
到達不能基数はさらに弱到達不能基数が及ばない域の無限である。
そして到達不能基数をθとして、小さい順から並べていくと、
θ¹、θ²・・・・θ(のω乗)・・・θ(のω乗のω乗の・・・)・・・・θ₁、θ₂・・・・・θω・・・θω[ω[ω[ω・・・・・・}}}・・・θ[θ}・・・θ[θ[θ[θ・・・・}}}
などと並べていくと、第一種超到達不能基数というものが現われる。のかな? 分からない。
次にその第一種超到達不能基数のみを並べた基数を小さい順に
θ₀¹、θ₁¹、θ₂¹・・・・・・・・
と並べていったものを第二種超到達不能基数といい、以下第ω種超到達不能基数まで連続。
そしてその第ω種超到達不能基数のみを並べた基数を小さい順に・・・・・・
というのを繰り返した先を第一種極到達不能基数と仮に呼ぶとする。
さらにその第一種極到達不能基数をθのℵ乗とすると、小さい順から並べて、
θ₀(のℵ乗)、θ₁(のℵ乗)・・・・・・・・・・
とすると、マフロー基数なるものが得られるらしい。(すべての到達不能基数のことを第0種マフロー基数と呼ぶ)
次にすべてのマフロー基数を小さい方から順にならべたものを
μ₀、μ₁・・・・・
という第一種マフロー基数ができあがり、それを小さい順から並べた第2種、第3種・・・・・と続いていく。
さらにωまで到達すれば、さらに上の第ω種超マフロー基数なり極超マフロー基数なりの概念が出来上がる。
・・・・・・大丈夫かな? ついてこれるかな、これ?
そもそも自分の理解が間違ってないか不安になる。いや、たぶんどこかで絶対に間違ってるな。
僕も完全に理解出来たわけではない。が、目眩がしそうになるほど大きい数があるってことは分かった。
他にも、クヌースの矢印表記とか、ヒドラゲームとか、たっくさんの検索結果が出てきる。これを全て一日で理解することは不可能だ。
仏教の中で度々巨大な数字が出るのは、信者の判断力を麻痺させ、無条件で帰依させること。あるいは疑念や論理的追求の意思を挫くこと。その二つの目的があるという説がある。
だとしたら全く以てその通りだ。思考放棄したくなる。
ちなみに、何でもありが許されるのなら、集合論の『クラス』なるものが一番大きいようだ。
ではクラスとは何ぞや?
これがまた厄介なもので、『全ての集合の集合』であるらしい。
例えば、上で出てきた全ての到達不能基数や、それより大きな無限など比べものにもならないくらい大きい基数というものを想像しよう。
無論、そんなもの分からないし想像できない。あるのかどうかすら分からないし、ただ単純に大きいだけでは抽象的すぎる。
だが仮に、そんなものがあったとしてだ。このクラスなるものはそれさえ自分の集合に含む。
クラスより大きいものも何もかも、これは全てを含むんだ。
まさしく反則で、矛盾の塊のような概念。
・・・・・・となるとだ。
僕と美羽が戦った咎人・ジェム。
彼は展開型で、その世界も集合論を使って自己強化を行っていた。
矛盾を犯し、クラスという最大集合を自分に組み込んだ。
では、ジェムはあの時世界の何よりも大きいものだったのか?
それを成し遂げた彼は、展開型の中でも最大規模を誇ったのか?
5分くらい悩んでも答えが出なかったので、スマホを取り出し霞さんにLINEでこのことを質問した。
『ん~? そうだよ。展開型は集合論とか使って自分の世界を拡張したり、規模を増やしたりする。
だけど蛍の思ってる通り、それは展開型同士の戦いだとあんまり決定打になんないぜ』
夜遅くまで飲んでいる霞さんは、珍しい僕からの連絡に、詳しく説明してくれた。
『そもそもさ。蛍は宇宙のレベルってどういうもんか知ってる?』
『宇宙のレベル? いえ、知りません』
『んじゃ超簡単かつかいつまんで所々省略説明しますね~。
レベルつっても宇宙の規格の話だよ。
まず宇宙。単一の宇宙だね。たった一つである分、最も安定している形。細胞をイメージするといいよ』
なるほど。単一の宇宙は細胞か。分かりやすいな。
『次の形が多元宇宙。これが一番主流だね。
このレベルが一番種類が多くて多種多様。平行世界とか多世界解釈とか、形而上学的な宇宙とか数学の集合論とかがいっぱい存在する』
これも理解できる。
多元宇宙。宇宙が単一のものではなく複数存在すること。
自由度の高さは屈指のものだろう。どんな法則も可能性も認可されるのだから。
『そして最後に全宇宙。
これはもう単純。集合論のクラスとかレベルⅣ多元宇宙とか、オムニバースとかと同じだと思っていいよ。つまり全ての集合の集合。
宇宙も多元宇宙もぜ~んぶ、ほんとに何もかもを含んだ大きさの宇宙。
全部だからね。この世に存在するものもしないものも、どんな命題であろうと全部この中に入ってる。
これ以上を考えたって無駄だよ。どんな独自用語使ってその上考えたって、例えオムニバースが順序数みたく無限に無限に無限に・・・・・って作業をいくら繰り返したって、結局出来上がったそれも全部の範囲内なんだから』
全宇宙。初めて聞いた言葉だ。
集合論のクラスと同じく、全ての集合の集合。
これを前にすればどんなに巨大な多元宇宙論であろうと、塵を突破して点以下でしかない。
『大体この三つが宇宙の大きさの基準ね。
下に行くほど規模は増すけど、その分複雑で矛盾を含んでいく。だから理路整然とした展開型の顕現者はたった一つの宇宙で満足してる奴もいる』
『その全宇宙は、=葦の国なんですか?』
『そうとも言えるし、そうじゃないとも言える。無限にある全宇宙も葦の国の一部だよ。
それどういうことなんて聞かないでね。私もあんま分かんないし、アラディアに聞いたら、
全てにも格があるとか、矛盾犯しまくってるのに何を今さら言ってやがるとか、分かるような分かんねぇような言葉で濁されたんだから』
『・・・・常識的な考えでは計り知れない。ということですか』
『そ。葦の国がどうなってるのか、誰もわかりはしないよ』
僕たちが住んでいるこの宇宙も、葦の国の次元内にある平行宇宙の一つ。
上で紹介したような概念が全部収まる次元レベルの世界だ。
それが途方もないことだってことは大体分かる。
『展開型同士が戦う。それはすなわち世界の喰らい合いだよ。
異なる法則を、異なる意思を持つ世界同士が、相手の世界を殺して自らに取り込むという作業。
確かに世界の大きさも重要な要素の一つだけど、決定打にはなりはしない。
つまり、結局は霊格のでかい方が勝つんだよ』
『結局はそこに落ち着くんですか』
『その通り。だから魂喰いをたくさんして――ああ、あんたらそれ止めたんだっけ』
『はい。ファルファレナを倒せましたし、もう必要ないので』
『羨ましい限りだね~。たった一回同格と殺し合っただけで次の位階に行けるなんて。
私が熾天使になるまでどれだけ苦労したことか30分くらい聞かせたいくらいだよ~』
『それは勘弁してください。これからどうやって自分の想造に学んだことを取り込むか時間を使いたいんです』
そう。学んだことを復習する時間は大切だ。
繰り返し学習することで、知識は定着する。
そして今回はアウトプットも兼ねている。学んだことを内に留めておくのではもったいない。
大事なのは外に出す手段だ。
『というかさ、一つ質問してい~い?』
『はい。なんでしょうか?』
『あんたさ。そんな無限の濃度とか基数とか、そんないかにも抽象的なもの想像できんの?』
・・・・・・・・・
『あんたの顕現って想像のクオリティが高ければ高いほど効果増すんでしょ?
でもさ、今学んだのって数字とか文字とか図とかそんなんでしょ? それどうやって自分の想像に取り込むの?』
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
『お~い、蛍~?』
『・・・・・・すいません。それ失念してました』
頭に手を当てて、やっちまった~と後悔のため息をつく。
霞さんの言ったことはその通りだ。
適当な図とか文字とか数字とか、そんなものを想像しても何の意味もない。精々それらが描かれた紙が出てくる程度。
僕の顕現はエンケパロスの顕現のように、演算し数値を代入することで威力や数を操作することなどできない。
『ははっ、お疲れ様~。
あんま意味ないってこと分かったっしょ?
そもそもあんたの顕現にはあわねぇぜ。数式を覚えたとして、そんな抽象的なものをどうやって想像するのか分かんないでしょ』
『はい。2時間くらい徒労に終わりました』
『まあ落ち込みなさんな。無駄なことなんてな~んにもないんだし、きっといつか役に立つ時がくるさ』
『そうですね。そう思っておきます』
話に付き合ってくれた霞さんに礼を言い、LINEでの会話を終え。
巨大数。僕には上手く扱えなさそうだけど、見ている限りでは面白そうだった。
今後も、暇さえあれば見てみよう。
母親の夕食の呼び出しに応じ、僕は自室を後にした。
次回、告白




