母乳シーフ
「あ~……何で庇っちまったんだろ……」
俺は家を無くし、逃げるかの様に遠くへと来ていた。
「……ワタシのせいですまない」
「何だ、起きてたのか?」
私の腕から降りて片足を庇うように歩くミントはまだまだ本調子では無いようだ。
「私の事は大丈夫だ。それより村人達は獣人を酷く嫌っているようだが何か理由があるのか?」
その言葉に俯き黙るミントであったが、私が言葉を待っているとその重い口をようやく開いた。
「ここから先の密林に盗賊一味の隠れ家がある。盗賊一味は全員獣人だ。そして密林を抜けないと隣の村までは行けない。つまり森を無事抜けた獣人は漏れなく盗賊ってわけさ」
「ミントも……盗賊なのかい?」
私は核心を突いた。森に盗賊が居ようがどうでも良い。肝心なのはミントが盗賊かそうでないかだ。あれだけ奴等にボロクソに言われたんだ。今の内に疑念を晴らしていつか奴等に復讐をしてやらないとな!
「……信じてくれないと思うが、私は秘密の抜け道を通って来たんだ」
その言葉は素直に嬉しかった。
自分の見立てが間違って無かった事。ミントがありのまま話してくれた事。その全てが嬉しかった。
「そうか! それじゃあその秘密の抜け道とやらで隣村まで行こうか!?」
「……良いのかい?」
「ああ! 隣村にもダンジョンはある。食うには困らないさ!」
私達は魔物が巣くう暗黒の密林へと向かった。その道中、ミントはどこか浮かない顔をしていた―――
暗黒の密林は昼間だと言うのに日光が枝葉で遮られ、地面は薄暗く不気味な感じを放っていた。けたたましい魔物の鳴き声、バリバリと枝を噛む音―――いや、骨を噛む音かもしれないが、至る所から恐怖の音が聞こえていた。
「何もかも燃えちまったから、今襲われたら死ぬな……」
「大丈夫。早々襲われたりはしないさ」
獣道の様な細い通路を草をかき分けながら歩いていると、突如槍を構えた獣人が二人茂みの影から現れ、槍を交差させ行く手を阻むんだ!
「待ちな。……っとミントじゃねえか」
「へへ、やっぱり帰って来やがったか!」
耳に趣味の悪そうなピアスを着け、舌はだらしなく伸びきっており帽子は見るからに似合わず、服はチグハグ、靴は高級品。その身に付けている物の殆どが盗品ではないかと思われる出で立ちに、私は直ぐさま盗賊一味だと勘付いた。ミントの事を知っているのはやはり…………。
「ボスは?」
ミントは険しい顔で二人を睨みつける。
「奥に居るよ。で、コイツは?」
「へへ、ただのオッサンかぁ?」
「コイツはボスへの土産さ♪ さ、通しておくれ!」
槍を構えた獣人が、道を開けた。
私は彼等とのやり取りを見て愕然とした。信じていたミントはやはり盗賊一味の仲間で、私は騙されてノコノコとついてきてしまったのだ!
「さ、こっちへ……」
しかしミントの方を見ると、彼女の顔は何やら緊張した面持ちで、私を騙したと言う感じは何処からも感じられず、寧ろ申し訳なさそうな顔で僅かに哀愁を漂わせていた。
「……………………」
私は何も聞かず、ミントの後ろをただついていく事にした―――
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