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母乳ビースト

 家のベッドへ獣人を寝かせる。まさか私以外が私のベッドに寝ることがあるとは思っても見なかったので、ベッドはかなり汚い。主に母乳で。



「―――ワフ?」


 お? どうやら起きたらしい。

 何だかんだでまだ緊張感が残っていたのだろうか?


「気が付いたか?」


 獣人は目を開け、私を見た瞬間に飛び跳ねた!!


「何だ貴様は!!」


「落ち着け! 私はオッサンでここは私の家だ!」


 獣人は周りをキョロキョロと見渡し、朱く光る眼を尖らせ警戒の態勢を取った。


「そしてそれは何だ!!」


「母乳を絞っている」


 私は片乳を曝け出し、マグカップに母乳を注いでいた。

 我が家では普通の事だが……ははぁん、さては母乳ビギナーだな?

 それならば驚くのも無理は無い。


「生憎家には母乳(コレ)しかなくてな……安全と栄養は保証する。温度も人肌だ」


「こんな物が飲めるか! 汚らわしい!」


 ……ああ、そうか。突然見知らぬ場所へ連れて行かれて混乱しているんだな。どれ―――



  ―――ギュッ……


「な! 何をする! 抱き付くな!!」

「大丈夫だ。怖れることは無い……」


「おい! 母乳が止め処なく出続けてるぞ! 止めろ!!」

「すまん、ある程度すれば止まる……」


「ああもう! 何だってんだ!! さっきから母乳の優しい匂いに包まれて懐かしい気分だぜ!!」

「ふふ、落ち着いたか?」



 私は母乳に塗れた獣人を離し―――あれ?


 待て……獣人が着ていた服が母乳で濡れて胸の膨らみが露わに…………


「お前さん女だったのか!?」

「今頃か!? そう言うお前もオッサンだろ!!」


 待て待て待て待て待て待て待て待て待て、何てことだ!!


 見知らぬ女性を拉致監禁して片乳出して母乳まで飲ませてしまったぞ!?


 これはアレか? 犯罪(タイーホ)なのか!?

 しかもこの獣人(♀)よく見たら結構な筋肉質だ! 俺はこの場で殺されるのか!? 片乳を曝け出したまま死ぬのか!?


「あわわわわ…………!!」

「待て、何を慌てているオッサン」


「許してくれ……まさか女性だったなんて……」

「落ち着け!」


  ―――ゴン!


「……落ち着いたか?」

「…………あ、ああ」


 私は一先ず落ち着き、マグカップに注いだ母乳を一気に飲み干した。


「げ! 自分の飲むのかよ……」

「母乳ロンダリングだ。問題は無い。それより、私が母乳を出していることが気にならないのか?」


 獣人は首を軽く傾げ「見た目はオッサンだけど、女なんだろ?」と鼻で笑った。どっちを笑ったかは知らないが、見た目がオッサンであることを笑ったなら、ちょっと傷付くぞ?


「……いや、私は男だ」

「…………ははっ……」


 獣人(♀)は私に近付き、(おもむろ)に股間に強く触れた。


「…………いやん♡」

「…………(汗)」


 獣人の血の気が引いていくのが手に取るように分かる。まぁ、無理も無いだろう……。オッサンが抱き付いてきて母乳を噴射して、しかもアソコまで触れてしまったのだ。


「…………スマン、これは夢か?」

「……スマン、これは現実だ」


 それを聞いた獣人は、その場に倒れて気絶してしまった―――

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