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アンチ母乳

「アンチ母乳とは母乳により授けられた恩恵を全て消し去る究極の母乳じゃ! 乳首属性が適していないと出すことが出来ない選ばれし者だけが使える技じゃ!」


「出し方は!?」


 いつもの良く分からない説明で理解出来る筈のない私は、危機迫った状況でとりあえず出し方を聞いてみた。


「アンチ母乳は少量しか出せんぞい!? アンチ母乳同士がお互いに打ち消し合うからの! 兎に角イメージじゃ!」


「え、ええ~……」


 まともな説明を期待した私が愚かなのだろう。兎に角私は打ち消す様なイメージで母乳を出した!


「水鉄砲みたいな弱い威力で何か出た!」


「でかした! それがアンチ母乳なのじゃ!」


 放たれたアンチ母乳は母乳サラマンダーの肩に少しかかると、忽ち青い炎は消え失せ、母乳サラマンダーは慌てふためくように戸惑っていた。


「コヌビ様の力が……!?」


「トドメじゃ!」


「え、あ、はい!」


 私は命一杯母乳を噴射し、あたふたとしている母乳サラマンダーへ母乳を大量に浴びせた!


「グオォォォォォォ!!」


 身体から紫の煙を立ち上げながら小さくなっていく母乳サラマンダー。最後には手のひらサイズまで小さくなってしまった。


「ウム! これで翁の呪いも解けただろう」


「だと良いけど……」


 私は何処かスッキリとしない面持ちで踵を返した。



「コヌビ様とやらには会わなくても良いのかな?」


 私は肩の上のナツメに気軽に問い掛けた。しかし以外にも帰ってきた答えは恐ろしい物だった!


「乳英雄が一人、乳獣母神コヌビは気性が荒い事で有名じゃぞ? ダンカンなんぞ一撃で殺されて終わりじゃ!」


 ナツメは人差し指で首を刎ねるジェスチャーをした。乳英雄とやらは何とも恐ろしい存在らしい……。


「後の3人はどんな人達なんだい?」


「母乳を自在に操る『覇乳母神 チュベビ』聖母の様な美しさとしなやかさを持ち合わせた『乳傑断魔 ピゾン』 そして圧倒的破壊力の母乳を放つ『母乳将神 ターベッタ』じゃ」


(出来れば一生関わりたくないなぁ……)


 坑道を出て、日の光を浴びた私とナツメを異様な獣臭さが出迎えてくれた。それは獰猛な大型獣が放つような臭いで、私は直ぐさまにそれがとても危険な物であると本能が察知した!


「ダンカン! 今すぐ逃げるのじゃ! はよせぃ!」


 私はナツメに言われるがまま山道を降りようと駆けた瞬間―――


 それは巨大な猪の頭に、筋肉質な人の上半身が生えており、胸元は開け胸毛が凄まじく、下半身には馬の胴体と足が着いている生き物に遭遇した! 激しい吐息は酷く獣臭く、手にしている大きな槍からは血の臭いもしていた……。


「半人半馬に猪の頭…………伝承にある乳獣母神コヌビその物じゃ……」


「……如何にも。拙者が乳英雄が一人、乳獣母神コヌビだ。しもべ達を退いたのはお前達だな?」


「…………」


 私は声が出なかった。頭部に見える鋭い牙と手にした太い槍。そのどちらも私を死に至らしめるには充分で、初めて見る死の危険は私の脳には荷が重すぎた。


「母の腕に抱かれながら死ぬが良い!!」


 コヌビは槍を大きく振り回し、私を貫かんとばかりに槍先を此方へと向けた!!

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